--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

S17無人航空機観測支援(3)自律飛行成功!

2007-01-30 | 南極だより・観測
昨日は記事を書くので精一杯でアップするのを忘れていましたが、昨日、南極観測50年のハガキ南極地域観測事業開始50周年切手を貼って、1月29日の記念スタンプの押印をしてもらいました。
と言っても、私は仕事だったので父と母が行ってくれたのですが「1月23日に行ったときはすごく混んでいたけど、今日は誰もいなかったよ」とのこと。
私としては23日より29日なんだけどなぁ。

#このハガキは南極観測50年の記念講演のときに購入したもの
それでは、渡井さんからの南極だよりです。
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2007年1月29日(月)晴れカタバ風やや強し S17無人航空機観測支援(3)自律飛行成功!

カイトプレーンを組み立てて手動での飛行には成功したものの、これはUAV(無人航空機)としては道半ばだ。
地上からの支援なくして飛行できなければUAVとは言えない。

次のフライトでは自律飛行か?というところで、不具合が発見された。
カイトプレーンから送られる位置情報は、ベースのアンテナで受けPC上で確認できるようになっているのだが、その位置が北緯69度を示している。
嫌な気配を感じて地上で試験を行う。
ちゃんと設定したルートどおりにカイトプレーンが動いてくれるかどうか確かめるのだ。

主翼を取り除いた機体をナンセン橇にくくりつけて雪面の上を引き回し、仮想自律飛行を試みる。
橇を引っ張る自分はカイトプレーンのラダーをみて、カイトプレーンの行きたい方向に舵を切る。

#引き回しているところ。
(この後ろ姿は渡井さんではないですね)

ところがなんと北に行きたい時に南にラダーが向くではないか。
東西方向は問題ないので、東西を軸として丁度反転しているようなイメージだ。
ということはやっぱり南緯69度を北緯69度と錯覚しているのだ。
これはこちらでは対応が難しい。
国内に連絡してプログラムの修正をお願いする。

修正されてきたプログラムをインストールし再度飛行を試みた。
滑走路から飛び立ち北の方向に正方形を描くようにポイントを設定する。
設定したポイントの半径50m以内を通過すれば、次のポイントを目指す仕組みだ。
高度100mほど上がったところで、自律飛行モードに投入する。
地上高度は300m。
とりあえず、目標ポイント1番に向かう、がまだ油断はできない。
雪上車の上に立ちアンテナで位置を追っていると、どうやらきちんとポイントを押さえて飛んでいるようだ。
成功である。

#アンテナで位置を追う
(48次小川ドクター撮影:
小川ドクターのブログ第48次南極観測隊医療隊員日誌?もご覧ください


#航跡はクルクルと回っているだけのようだけれど、ちゃんと旗(ポイント)のそばを通っている。
2回目は地上高度500mまでのフライトを行った。
エアロゾルの粒径別個数を測定する装置を積む。
上空では風が強くほとんどとまっている状態もあって、地上に戻ってこられるか心配させられたが、境界層の内外の違いを示す興味深いプロファイルが得られた。


#エアロゾルの粒径別個数を計測するOPC

#得られたデータ
右側の青の線(湿度)が低いところではエアロゾルの個数も少なく、大気境界層を捉えていると考えられるのだそうだ(赤矢印部分)


-----1月29日本日の作業など-----
・S17無人航空機(UAV)観測支援
 自律飛行に成功!(2フライト)

<日の出日の入>
日の出   02:19
日の入    22:44
<気象情報>
平均気温1.2℃
最高気温3.7℃(1624) 最低気温-1.6℃(2259)
平均風速6.3m/s
最大平均風速13.8m/s風向ENE(0530) 最大瞬間風速18.6m/s風向ENE(0527)
日照時間 18.7時間

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(渡井さんから、まだ写真が届いていないので、届いてから加筆するかもしれません)

プロポでの操縦はまるでラジコン飛行機。
でもUAVの場合は「カイトプレーンにはGPSの信号を受け取って、あらかじめ組み込んだルートをたどることができるように、自律航法システムが組み込まれている」(昨日の記事より)のでしたよね。
1.5~2時間も飛び続けている航空機をずっとプロポで操縦しているなんて、大変ですものね。
その組み込まれているプログラムが北半球用だったということですが、北半球用だと、北と南を勘違いしてしまうものなのですね?
北に行きたいときは南と書いてありますが、分かりやすくいえば右に行くはずなのに左に行ったり、左に行きたいのに、右に行ったりするということだと思います。
私の職場にも、そういう人がいます。
車に乗って隣でナビをするのですが、左とか右とかいうと、必ず反対の方向へ曲がってしまうのです。
カイトプレーンも、そういう天の邪鬼な状態になっていたのですね。
地上での引き回し試験が面白そうだったので、絵を書こうと思ったのですが、写真がまだ届いていないので、断念しました。
水平尾翼と垂直尾翼を見ながら引き回しているなんて、カイトプレーンの散歩?みたいです。

準備段階から始まり4日目にして無事にカイトプレーンの自律飛行が成功!!
おめでとうございます。
目標ポイント1番から逆方向へ行ってしまったらかなりショックですよね。
そっちじゃないよー、と言って高度が高ければ手で修正してあげることもできないし。

それから、「境界層の内外の違いを示す興味深いプロファイルが得られた」とのこと。
大気境界層は地上から数十mくらいまでが「接地層」と呼ばれ、そこから2000mほどの部分は対流混合層」と呼ばれています。
その上が「自由大気」で、地上の摩擦や風の影響を受けない大気みたいです。
今回の場合は、上空500mくらいまでだったようなので、接地層と対流混合層の違いが取れたということでしょうか。
私たちの住んでいるところと、南極では条件が違います。
南極では(特に大陸では)カタバ風というものが吹いていますよね。
カタバ風は地を這うように滑り降りてくるので接地層といっても、少し違うのではないかな、と思いました。

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