--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

ランチャー

2007-02-14 | 南極だより・観測
今日、予定通り48次隊の研究部門のメンバーを中心にした隊員がしらせに引き上げたようです。
しらせは、昨晩ラングホブデのあたりにいたようですが、朝にはピックアップのためオングル海峡のウェブカメラ2に映る位置まで来て、8時過ぎのピックアップを終えてから、また弁天島の南あたりまで帰っていったとのことでした。
明日は最終便が飛んだら離岸し、昭和基地を後にするしらせ。
どうして弁天島まで行ってしまったのでしょう?
オングル海峡に停泊して、ウェブカメラに映っておいてくれればいいのに・・・。
今日の48次夏隊が引き上げと聞くと、昨年を思い出します。
昨年は離岸当日の別れでしたが、今年は研究部門は今日、設営部門は明日と2日に分けられているとのこと。
どちらにしても、苦労も喜びもともにしてきた仲間との別れはたまらないものがあります。
昨年は、抱き合って涙している夏隊と越冬隊の姿に、見ているだけの私も涙したのでした。
と、書いていたら、またじわっとしてしまいました。
それでは、渡井さんからの南極だよりをお届けします。
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2007年2月13日(火)晴れ ランチャー

48次隊生物グループは、現在行っている海氷のコア採取と同時に海底までの鉛直海水採取も行っている。
このあたりでは水深がせいぜい数100mなので、CTD採水器を降ろすことはせず、CTD&蛍光光度計を降ろし、その後ニスキン採水器を単独で深度毎に降ろして採水している。

が、問題になるのは海氷の破片だ。
採水器等を降ろすのは船尾からなので海氷は割れているのだが、無数の氷片が漂っている。
これがあってはニスキンを降ろす際にも揚げる際にも、メッセンジャーという採水のトリガーを送るのにも支障がでる。

そこで考えられたのがランチャーだ。
傍から見ればただのごみバケツの底をくり貫いたものを、2つつなぎ合わせただけにしかみえないが、ちゃんとした観測装置の一部なのである。

#これがランチャー
なんと手作りの道具です!

この中にさえ氷片が入ってさえいなければ、中を通したワイヤを介してニスキンやCTDを支障なく上げ下げすることができる。
氷を寄せ付けない優れものなのである。

当初はざるを用いてランチャーの氷を除去することを考えられていたようだ。
だが思いのほか難しくこの案は頓挫する。
そこで浮上したのが、しらせのスクリューを利用する方法。
シャフト回転数を船が進まない程度に上げると、深いところの海水が巻き上げられて、船尾の氷片を押し出してしまうのだ。
この隙に機を見てランチャーを投入すればよい。

氷海での採水器投入は経験がなかったが、これは大変良いものを見させていただいた。


-----本日の作業など-----
・葉書
・海水採取見学
・NDIR分解清掃&再セッティング
 セルの中が塩田と化していた
・艦上体育(ランニング25分)

<日の出日の入>
日の出   03:47
日の入    21:21
<気象情報>
平均気温-5.0℃
最高気温-1.9℃ 最低気温-9.2℃
平均風速5.5m/s
最大平均風速10.4m/s風向ENE 最大瞬間風速14.2m/s風向ENE
日照時間 12.2時間

気象庁webより
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渡井さんの本サイト森と空と海のあいだにの「夏訓練~日本出発」までのページが削除されていて、見ることができなくなっていました。
さて、困った。
というのも、しらせの巡航の時に海洋観測の練習をしていて、CTD採水器やニスキン採水器などの写真がアップされていたのです。
それにリンクして説明できるかと思ったのですが、できなくなってしまいました。
しかも、すでに渡井さんは「しらせ」に乗り込んでおり、そう易々と画像を送ってもらうわけにもいきません。
(いつも送ってもらっている1MBの画像は、一枚送ると3300円くらいするのだそうです。南極だよりは公務ではないので、もちろん私費。さすがに頼めません)
ということで、簡単にですが描いてみることにしました。

#CTD&蛍光光度計
これは、CTD&蛍光光度計ですが、どの部分が何を観測しているかはよく分かりませんでした。
電気伝導度、温度、深度、蛍光光度などを計測できるのだそうです。
そして、この計器で測った深度にニスキン採水器を投入し、採水するようです。

#ニスキン採水器
ニスキン採水器は、筒型でその中に海水を取り込めるようになっています。
上にも下にも蓋があり、それを採取したい深度のところで開けて採水するのだと思います。
私が写真で見たものは、たいてい数本のニスキン採水器をセットにして使っているようでしたが、1本でも使うことがあるのかどうかはよく分かりません。
今回はどうだったのでしょうね?
今回は使わなかった、というのがCTD採水器です。

#CTD採水システム(CTD採水器)
今回使用したものではなかったので、色は省略してしまいました(怠け者です・・)。
これは、使った2つの機能が一体になったもののようです。
かなり大型で、24層や36層の違う深度での海水採取ができるようになっていると書かれていました。
100mほどの深度ではこのような大がかりな装置ではなく、別々の計器で観測したということなのですね。
さて、ようやくランチャーのことです。

#ランチャーは氷を寄せ付けない!!
この絵のように、海氷のかけらがたくさんある海面付近にランチャーを下ろしておくことで、上げ下ろしや操作の時に氷のかけらにぶつかって破損することがないのですね。
なんという優れものの道具なのでしょう!
かなり感動しました。
しかし、ランチャーを下ろすときにはどうするのか?
この疑問は私も南極だよりを読んでいるときに思いました。
だって、一昨日アップした航路啓開の写真を見ると分かるように、しらせの通った後は海氷は割れているけれど、ほぼ一面に氷が広がっていて、ランチャーを下ろすときには間違いなく氷が中に入ってしまいそうだからです。
でも、これにもいい案があったのですね。

スクリューが巻き上げる海水によって海氷のかけらが除けられて、海面が表れるということなのですね?
その海面めがけてランチャーを下ろせば、氷のかけらの入っていない海面が確保されるというわけです。
海氷のないところでは、こんな問題はないのですから、ここでの観測は特殊なのだな、とあらためて思います。
でも、その問題をどうクリアして観測をしていくか、工夫と試行錯誤があるところが面白いのかもしれませんね。
採取した海水はやはりDMSを調べるのでしょうか?
海氷コアと合わせて結果が楽しみです(と思ったのですが、一般に公開されるものではないですよね)。

絵を描きながら考えていたら、とても楽しかったです。
合っているかどうかは、渡井さんも見ることができないと思うので、間違いがあればどなたか指摘してくだされば幸いです。

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