みちのくレースのおたのしみ

岩手競馬にまつわるあれこれ。とか。

2つの遠征

2006年12月22日 | 岩手競馬
 6日のクイーン賞、13日の全日本2歳優駿と2つの遠征に行ってまいりました。
どちらもそれなりに期待をして行ったものの、結果は前者が10着、後者が9着という結果。遠征の難しさというものをつくづく感じさせられました。



 クイーン賞のサイレントエクセルなんですが、彼女の前に立ちはだかったのは他の馬ではなく「輸送」でした。
 水沢での追い切りまでは完璧。陣営も“これ以上ない”と言うほどの調整。中間TCKディスタフやJBCクラシックを回避して不調説が流れたほどだったんですけども、これは目標をクイーン賞一本に絞って調整を進めていただけのことであって、馬の状態には全く不安なしだったのです。

 それが、前日輸送で船橋に着いたところサイレントエクセルは“すぐレースだ”と思ったのか飼い葉を食べなくなり(俗に言う「飼い食いがあがる」という状態ですね)、おまけに交流馬房の中で全く落ち着かずイライラしっぱなしだったのだとか。
 結局レースの際には馬体重-8kg。それはただの馬体減ではなくて、陣営としては前走比プラス体重を見越して仕上げたつもりが、飼い食いがあがったのと一時もリラックスできなかったせいで大幅に体重が減ってしまった結果の-8kg。厩務員さんいわく「水沢を出る時からなら20kgくらい減ったはず。それじゃあ走れんわ……」と・・・。



 サイレントエクセルは2歳時に門別に遠征していたのですが、フェリーまで使う長距離輸送にも特に気にする様子でもなく、だから輸送は大丈夫、と思っていたところがこの結果。岩手最強牝馬の前にどーんと大きく立ちはだかったのは、「輸送」という二文字・・・。

 これでTCK女王盃やエンプレス杯への遠征計画が、一気に難易度を上げてしまいました。川崎は早め入厩ができるのでなんとかなるとしても、大井のTCK女王杯で同じようなレースをしてしまえばエンプレス杯に選定してもらえなくなる。
 TCK女王盃に向かうとして、次はエクセルが輸送慣れしてくれている事に期待するか、それともリスクを犯してでも当日輸送に挑んでみるか。いっそ川崎一本に絞るか。しかし、そうすると中間の調教が難しくなるし・・・。“次の一手”が非常に難しい。

 「こんな馬じゃない。これで終わって“この程度か”と思われるのは悔しいから、何とかしていいレースをさせたい」と言う千葉厩務員の気持ち、痛いほど分かります。
 しかし、そうして馬房の前で話をしている間も、馬房の中のエクセルはレースの後とは思えないくらいの勢いで怒りまくっている。その姿を見ていると、馬の能力を十分に発揮させる事、それはもう本当に難しい事なんだなと痛感させられました。



 そして翌週の全日本2歳優駿。こちらもいつものパラダイスフラワーらしくない行き脚のまま敗れたわけですが、レースの後、飼い葉桶に頭を突っ込んでモリモリと飼い葉を食べている彼女を見て、何というか、合点がいったような気がしました。
 つまるところ、全力で走ってないのでは。担当の高橋厩務員は「レースの前に妙にイレ込んでいた」と言っていましたが、もしかしたらパラダイスフラワーの中では、レースの前に気持ちが盛り上がってしまって、レースの時には気持ちが切れてしまった状態だったのかなと、今にして思います。

 クイーン賞では厩務員さんの口から出た「こんな馬じゃない」というセリフ、今度は騎乗した小林騎手の口から聞く事になりました。
 「こんな馬じゃないんだ。さっぱりこの馬のレースをしていないんだよ」

 もともとパラダイスフラワーという馬は、状態なり・相手なりに走るタイプではなく、気合いが乗れば120%の力を出す時があるし、そうでないならそれなり、という所があります。旭川の時はそれが非常にいい方に働いて、川崎ではそれがちっとも働かなかった、という事なのでしょう。パラダイスフラワーらしさを見せられなかった点は残念でしたが、悲観する事もないかと。

 「せっかく来てもらったのにね・・・」と高橋高男厩務員。いや、そんな事無いですよ。一番苦労してやって来たのは高男さんだし、一番ガッカリしているのも高男さんなんですから。またどこかに行って、そうしたら今度こそいい思いをしてきましょうよ・・・。



 この2つのレース、勝った馬も強かったです。特に全日本2歳を勝ったフリオーソ。平和賞で2着になった時から「勝った馬よりも2着の方が強いぞ」と聞かされていましたが、南関の2歳馬のレベルがそんなに高くないという話もあって自分としては半信半疑でした(実際、平和賞を勝ったキンノライチョウは11着、デビュー5連勝で重賞も勝ったロイヤルボスも7着。3着アンパサンドは道営から転入初戦なので、フリオーソ以外の南関デビュー馬はみな着外ということに)。
 しかしレース内容は強いの一言でしたねえ。大事に大事に並ばせにいって、並んだ途端にスイッチが入って。並んで交わす時のフリオーソはそこまでの道中とは別の馬のような迫力でした。
 内田博幸騎手が「シーチャリオットを超える馬」と言ったそうですが(んー、レース後に聞いた時には「シーチャリオットに並ぶか、それを超える素質があると思っていた」くらいには言ったと思うけれど。ちなみにアジュディミツオーと比べては、という質問には「あちらはカネヒキリと戦ってG1を勝ったような馬、G1をいくつも勝った実績のある馬。まだ比べちゃいけません」との答え)、私のカンではフリオーソの方がずっと奥がありそうな気がします。

 クイーン賞のレマーズガールは・・・マーキュリーCでこういうレースをしてくれてたらなあ。



 あっと。明日12月23日の中山競馬、クリスマスローズSのボスアミーゴ。1200mという条件でどこまでやれるか楽しみです。この馬も輸送が難しい馬、馬体重が大きく減っていなければチャンスは・・・。