みちのくレースのおたのしみ

岩手競馬にまつわるあれこれ。とか。

ディープインパクト・・・

2006年10月20日 | 岩手競馬
 何か書かねば、と思っていたらこんな大騒ぎが。ネット上に限らず一般紙・普通のテレビの番組でもこの話題がトップに入るくらいで、いちいちリンクを張るまでもないほどですね・・・。



 あくまで私の考えですが、現地で禁止されている薬物が検出されたということであれば、現地の規定に従ったペナルティが課せられるのは当然といえます。
 日本において、例えば海外の馬が日本で禁止されている薬物を使って出走した場合、同様に日本で定める規定にのっとったペナルティが課せられるでしょう。当たり前の事です。
 今後はそのペナルティに対するオブジェクションなどにより、現地で課せられるはずのペナルティの多少を争うか、そもそもその正当性を争うか、という事になると思います。日本の競馬界の常識だと制裁に反訴する事はほとんどないですが、海外では普通に行われる事なので、これはきちんとやった方がいいと思います。
 ディープ陣営は禁止薬物の使用を認めているそうですけども、もしこれから池江泰郎調教師ないしは金子オーナーが抗議・反訴の類を行ったとしても、私は決して“悪あがき”と受け取りません。ある意味裁判なのですから、例え敗れるにしてもしっかりと自分の意見を主張しておく事の方が正解だと思います。



 で、薬物の件なのですが、まずステロイド系の薬物を使ったドーピングと、今回のような件は違うと思います。
 ステロイド系を使った筋肉ドーピングをやっていれば、これまでの競走生活の中のどこかで必ず検出されているはずです。なにせディープは国内11戦10勝2着1回。常に尿検査の対象になっていたわけで、それでも見逃すほど日本の検査体勢は甘くありませんよ。「今までの競走成績も全て薬物で作られたもの」系の批判はどうか。



 そして、例えば競馬法で規定されている禁止薬物というものがあるわけですけれど、馬も生き物である以上、病気にもなれば怪我もするわけで、そんな治療の際には禁止されている成分の含まれた薬を使う事もあります。

 病気や怪我をした馬がしばらくレースに出てこないのは、その完治を待っているだけでなく、使った薬の影響から抜け出て、レースに出ても支障がないようになるのを待っている事もあるのです。
 だから、「禁止薬物使用すなわち悪」と短絡的に考えるのは、どうでしょう?
 日刊ゲンダイでしたか、「薬物汚染」というショッキングな見出しを付けていましたが、これでそうなら日本に限らず世界中の競走馬が「汚染」されていますよ。

 よく報道を読めば分かるとおり、問題の薬品を処方したのはフランス人獣医。そして「早めに与えるのを止めて、レース直前まで使用するのはいけない」とアドバイスした、と言われています。これは逆に言えば「レース直前まででなければ使ってOKだよ」という事です。そういうものなのです。

 薬品・薬物を使う事もあるだろうが、その影響が完全になくなってからレースに出てきなさい。フランスの厳しい規定はそういう事であって、その辺を読み間違えるとややこしい事になると思います。



 もちろん、フランスが「自然界にないどんな物質」も禁止という規定を持っている以上、レース直前(後の検査に出るくらいのタイミング)に、どんなものでも投薬してしまうのは凡ミスとしかいいようがないです。
 フランスに日本の競走馬が遠征する事はディープインパクトが初めてではないのですから、そういう規定の存在は分かっていたはず。池江泰郎調教師だって海外遠征経験豊富な方でしょう。例え治療目的であっても薬物の使用、それも海外で“初めて見る・使う”たぐいのものに無警戒であったとは、その方が信じ難い気もします。

 ま、JRAの「日本で競走馬に使われる薬物ではない、流通もしていない、だから禁止していない」みたいな言い方も、これもどうかと思いますけども。
 人間の競技者のドーピングがもはやいたちごっこで、あるものが禁止されたら同じような効果のある別のもの、それが禁止されたらまた別のもの、とどんどん進化しているのを見れば分かるとおり、“その気”になれば日本で一般的でない薬物を海外から手に入れて使うなんて事、簡単にできると思うんですよ。
 尿検からの検出技術に自信があるんでしょうし、禁止されていない薬物の効果に疑問があるから指定していないという見方もできるでしょうけど、ドーピングに対する認識が世界に比べて甘いのか、という印象を受けます。



 皆さんに分かって頂きたいのは、日頃薬物・薬剤の類を常用している馬なんて、いくらでもいるという事です。「いかさま・インチキ・ドーピングが横行している」という意味ではないですよ。競走馬だってアスリートですから、痛み止め・炎症止めを打ちながら走っている馬は珍しくない。「全く薬と無縁な競走馬」なんて存在しないと言っていい、という意味です。
 禁止薬物には該当しない薬剤を選びながら使って何とか保たせている、そんな馬は決して珍しくない。
 また、栄養剤・回復剤の類も当然使っています。レースの後ただほったらかしにしておくより、こういう薬剤を使った方が、当たり前ですが回復が早いし、体力減退から来る体調不良などを防ぐ効果もある。一番効果のあるタイミングで投与してビシッと決める事が、腕の良い獣医さんの要件でもあります(人間だって薬を飲むタイミングが当たればすぐ効くし、間違えると全然効かなかったりするでしょう?)。
 あくまでも治療なり体調管理なりの範疇の話です。繰り返しますが、レース直前に興奮剤を与えたりする事とは違います。



 そして最後に、これは分かって貰えるかどうか分かりませんが、書きます。
 今回の争点である「イプラトロピウム」という薬物は、日本では禁止薬物になっていない。であれば、例え日本で池江泰郎厩舎が常用していても「クロ」ではない。
 いや、もし使っていたとしたら気持ちというか考え方としてはクロなんでしょうけど、規定にないのだから仕方ないという事です。それも「ルール」の中の出来事なのだと。
 それは周辺としても、清濁併せ飲む必要があると思うのです。