さいえんす徒然草

つれづれなるまゝに、日ぐらしキーボードに向かひて

トンボのメガネ

2006-04-30 15:18:19 | 材料・技術
小さいころ、万華鏡のような、覗くと視界がいくつもの六角形に分裂して、くるくる回すと気持ち悪くなってくるおもちゃで遊んだ記憶があります。トンボの目を模倣したつもりのものだと思いますが、本当に昆虫がそのような視界で世界を眺めているかどうか、幼いながらも疑問でした。

昆虫は「複眼」という特殊な眼を持っています。この複眼は小さな個眼という単位が無数に(たとえばミツバチでは数千個、トンボでは約三万個)集合した構造になっていますが、それぞれの個眼が微妙に異なる方向を向いていることによって非常に広範囲の視野を確保することができます。

このような昆虫の複眼を模倣したレンズの開発は、医療分野や産業、そして軍事的な応用として以前から注目されていたようです。カルフォルニア大学のLuke Leeらは針の先程の面積に8,700個の溝の開いた微小なレンズの"鋳型"と、紫外線によって硬化するエポキシ樹脂を用いて人工複眼の作成に成功しました(4月28日付けScience誌に掲載)。

彼らはまず樹脂表面に無数の隆起(レンズ)を作り、それぞれのレンズを通して光を集光させることで中の樹脂を「焼き」、レンズからの光を受容装置に導く通路(チャンネル)を形成させました。するとレンズ、チャンネル、光受容体というまるで昆虫の個眼のような構造が無数に配列された人工複眼を自動的に作成することに成功したそうです。このような形成過程は、本家本元の昆虫複眼がどのように作られるか?という問いに対しても新しい知見を付与するだろうと著者は主張しています。

ちなみにこの出来上がった新しいタイプのレンズは、今後超薄のカメラなどに使われることが期待されますが、今のところどのような画像処理装置にも接続しないようです。どう見えるのか気になります。

参考;
BBC News (http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/4946452.stm)
Scientific American ( http://www.sciam.com/article.cfm?chanID=sa003&articleID=0002BFB3-30C8-1451-B0C883414B7F0000&ref=rss
)

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