さいえんす徒然草

つれづれなるまゝに、日ぐらしキーボードに向かひて

環境の為に虫を食べよう

2011-01-08 23:18:48 | 食料
 農耕という食料生産手段の“発明”は、それまで狩猟採集生活だった人間に定住生活を営むことを可能にした。それは人口の増大をもたらし、後に「国」といった大な共同体が発達するために重要な役割を果たしたに違いない。いまでこそ環境保全型農業などというものが叫ばれているが、農耕あるいは農業は始まったその瞬間から本質的に自然破壊であったと思われる。石器時代の我々の祖先は、それまで人の手の入っていなかった原生林や草原などを見つけては切り開き、その場所を畑や水田あるいは牧場として利用した。そのような場所にもとと生息していた生物たちは住処を追われ、急速に数を減らすことになっただろう。そしてそのうちのいくつかは、分類学者という職業が成立するはるか以前に人知れず絶滅したのかも知れない。トンボやタガメやメダカが水田にいると私も「自然が豊かだ」とついつい感じてしまうが、それは本来そこにいた生物たちではないということに注意すべきだ。

 畜産業もそれ自体広大な土地を必要とし、餌とする作物も同時にどこかで生産しなければならないので、環境に対する負荷は小さくない。また家畜が出す排泄物やメタンガスなども膨大な量に及ぶ。国連の試算によると、畜産業が直接および間接的に排出する温室効果ガスの総量は二酸化炭素換算で全人類の活動全体のおよそ5分の1にもあたるいという。また、アンモニアなどの形で出される窒素も水環境の富栄養化に貢献している。

 オランダの研究者の最近の報告によると、「環境にやさしい」という点で言えば、昆虫は牛や豚よりもはるかに優秀なタンパク源になるらしい。この研究者らは人類の新たな食料源として有望な昆虫としてまず以下の5種を選び出した。

1.Tenebrio molitor チャイロコメノゴミムシダマシ、いわゆるミールワームの幼虫


2..Acheta domestica コオロギの幼虫(写真は成虫)


3.Locusta migratoria トノサマバッタの幼虫(写真は成虫)


4.Pachnoda marginata コガネムシ科の甲虫の一種の幼虫(写真はイメージ:The image is not for a larva of Pachnoda marginata


5.Blaptica dubiaゴキブリの一種の幼虫


 今年のイグノーベル賞でも狙っているのだろうか。論文では、これらの昆虫を三日間飼育し、排出された温室効果ガス(メタンおよび一酸化窒素)およびアンモニアを測定している。


 
 重量増加分あたりで比べたところ、どの種もだいたい牛と豚よりも各環境汚染物質の排出量が少ないことが分かる。温室効果ガスに関して甲虫の値だけはあまりよろしく無いが、これはメタンの排出量が大きいからだ。ちなみに昆虫類においてメタンを体内から排出するのは、腸内にメタンを生成する古細菌を共生させているコガネムシ、ゴキブリ、シロアリの仲間だけらしい。


 私も今までにいくつか昆虫料理を食べたことがあるが、イナゴの佃煮に関しては普通に食品として食べられた。蜂の子はまだ食べたことが無いが、これも普通に美味しいらしい。一番最悪だったのはアリ…。まぁ虫を人類の食料にという手の話は昔から良く言われるているような気がするが、嫌いな人は心底嫌いだろうから実現することはないだろうとは思う。
 
Oonincx DGAB, van Itterbeeck J, Heetkamp MJW, van den Brand H, van Loon JJA, et al. (2010) An Exploration on Greenhouse Gas and Ammonia Production by Insect Species Suitable for Animal or Human Consumption. PLoS ONE 5(12): e14445. doi:10.1371/journal.pone.0014445

最新の画像もっと見る