「優先席で想う」

(1/11、撮影)







　大俳優、森繁久彌さんの
　回想談を読んで。

《 九州公演の
 「屋根の上のバイオリン弾き」
　の芝居のときです。

　芝居が始まったのに、
　客席の最前列の少女は
　頭を垂れ、
　居眠りをしている。

　森繁久彌さんをはじめ
　俳優たちは面白くない。
　起こせ、
　起こせ。
　そばで演技をするとき、
　一同は 音高く 床を
　踏み鳴らしたが、
　ついに 目を覚まさなかった。

　アンコールの幕があがり、
　少女は初めて顔を上げた。
　両目が閉じられていた。

　居眠りと見えたのは、　
　盲目の人が
　全神経を耳に集め、
　芝居を 心眼に
　映そうとする姿で
　あったと 知る。

　心ない仕打ちを 恥じ、
　森繁さんは
　舞台で泣いたという。 》


　私は、
　毎日、通勤電車の優先席に座り
　まわりを 気にせず、
　本を読んだり、
　スマホで音楽を聞いたり、
　楽しんでいる。

　前に立っている人は‥ !

　あァ〜胸が痛い。






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