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60歳以上の独身者に部屋を貸さない」という日本社会の怖い現実

2022年04月28日 03時00分50秒 | 不動産と住環境のこと

「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母親が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。


日本の高齢化は進み、高齢者と後期高齢者という家族構成が珍しくなくなってきた。老いと死、そして生きることを考えていきます。

本連載は松原惇子著は『母の老い方観察記録』(海竜社)を抜粋し、再編集したものです。

■目黒のマンションを漏水トラブルで売却して…
お母さんの介護で? いえ、母はピンピンです


2/23/2022

人生の先はわからないもので、わたしが65歳のとき、ひとり暮らしの母の家に間借りすることになった。

することになったというと理由が母にあるように聞こえるが、わたしが自分で決め、母の承諾もなく転がり込んだというのが正しい言い方だ。

(中略)

なぜ、実家に間借りをすることに決めたかというと、以下のとおりだ。売却が突然決まり、2か月で空け渡すことになった。

とりあえずの住まいとして、賃貸マンションに移り、落ち着いてから次のマンションを購入することにしたからだ。

ところが、目白に1LDKのかわいい賃貸マンションを見つけて喜んでいたところ、契約日の前日に不動産屋から電話があり、大家さんから契約の白紙撤回を申し渡されたというではないか。

■「60歳以上の人に部屋を貸さない」という現実

一瞬、頭が真っ白になった。なぜ? 20万も30万もする部屋を借りるならわかるが、9万円の部屋を借りるのになぜ、貸してもらえないのか。
マンションを売却するので現金はある。それに多少の収入もある。本も70冊以上書いてきた実績もある。身元保証人もたてた。それなのになぜ? なぜ?

断られた理由は意外にもわたしの年齢だった。大家さんとしては、若い会社員のお嬢さんに貸したかったようだ。

そこで、わたしは、生まれてはじめて「60歳以上の人に部屋を貸さない」という日本社会の現実に直面したのだ。

高齢者に部屋を貸さない慣習に対して問題意識を持つわたしは、
そのことに関して『老後ひとりぼっち』(SB新書)という本にまでしたというのに。自分がその当事者になるとは、夢にも思わなかったことだ。

年齢で断られたことが、わたしを完全に打ちのめした。本人の了解なく「高齢者」の枠に入れられ、社会からはじかれた気がした。
日本は、こうして高齢者を弱者にしていくのか。これは基本的人権の問題ではないか。

わたしが頭にきていると、売却してくれた不動産屋の人から、「次を探すのは落ち着いてからにすればどうですか。

実家も近いし、一時的に住まわせてもらえばいいじゃないですか」と提案された。

「きっとお母さんも、喜ぶと思いますよ。いくら元気がよくても、年だからね。心細いはずですよ」

「…う~ん、そうかな」と疑問も感じたが、行き場がなかったので間借りをすることにしたというわけである。

母と一緒に暮らすのは、子供のころを除いてほとんどないので、正直不安だった。

外で会っているときは、とてもいい母なのだが、家ではどうなのか。それに、母もひとり暮らしに慣れてきている。
しかし、あれこれ悩んでいる時間はなかった。とにかく、引っ越してからゆっくり考えよう。

目黒から埼玉の母の家に引っ越したことを知ると、誰もがびっくりしてこう聞いてきた。

「お母さんの介護で?」

「いいえ、母はピンピンです。ハエたたきで落としたいくらいピンピンです」

そう正直に答えると、誰もが目を白黒させながらも大笑いした。


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