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なぜ今ヒトラーなのか?意外と知らない…文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生した「本当の理由」

2024年05月13日 00時05分53秒 | 歴史的なできごと
>第一次大戦後のヴァイマル体制の混乱から生まれ出てきたアドルフ・ヒトラー。旧ソ連崩壊の後のペレストロイカの停滞から現れたウラジーミル・プーチン。世界はいま再び、恐ろしい独裁者がもたらす未曽有の危機に直面している。いまこそヒトラーとナチスの時代を振り返ることが求められているのだ。



意外と知らない…文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生した「本当の理由」

なぜ現代人は「ナチ・ドイツ」に注目するのか


写真提供: 現代ビジネス

 プーチンが支配するロシアのウクライナ侵攻は、独裁者を戴く権威主義国家の恐ろしさをあらためて世界に知らしめることとなった。

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 しかし曲がりなりにも民主主義下にあって、国民たちはなぜ独裁者を自分たちの代表として選び、支持し、そして従うのだろうか。

 20世紀初頭、世界でもっとも先進的といわれたヴァイマル憲法下のドイツ国民は、なぜアドルフ・ヒトラーに魅せられていったのか? 

 ナチ党(国民社会主義ドイツ労働者党)の党首、アドルフ・ヒトラーが政権の座にあった1933年から1945年までの12年間は、ドイツでは「ナチ時代」(Nazi-Zeit)と呼ばれる。この時代は第二次世界大戦の敗北とともに終わり、それからすでに70年以上が経過した。それでも、この時代の出来事はいまなおドイツの、そして世界の人びとの強い関心を集めている。

 21世紀に生きる私たちの視線が「ナチ・ドイツ」、すなわちナチ時代のドイツに注がれるのはなぜか。ひとつには、人権と民主主義という近代世界の普遍的な価値と制度がそこで徹底的に蹂躙され破壊されたからである。

 20世紀初頭、ドイツはすでに欧州随一の文化大国・経済大国として、日本をはじめ世界各国から数多くの留学生を受け入れ、西欧文明をリードする立場にあった。そのドイツで、民主主義を公然と否定し、ユダヤ人憎悪を激しく煽るヒトラーとナチ党が大衆の支持を得て台頭し、ついに政権の座に就くなど、誰が予想しえたであろうか。

 ナチ時代のドイツで国家的原理となったレイシズムと反ユダヤ主義は、やがて第二次世界大戦のもとでユダヤ人大虐殺(ホロコースト)など未曾有の大規模ジェノサイドを引き起こし、「文明の断絶」ともいわれる「アウシュヴィッツ」へと帰着した。

ヒトラーとナチ体制の「魅力」

写真提供: 現代ビジネス

 なぜこのような事態が生じたのか。どうしてドイツの人びとは、あるいは国際社会は、この動きを未然に防ぐことができなかったのだろうか。

 21世紀の今日、人権と民主主義が人類にとって最も尊重・擁護されるべき普遍的な価値・制度であるとすれば、それらが容赦なく粉砕された近過去の事例に目を向けることは大きな意義があるだろう。

 ナチ時代のドイツを考えるうえで見落としてはならないもうひとつの論点は、ヒトラーとナチ体制が人びとを惹きつけた「魅力」についてである。ヒトラーのカリスマ的支配の拠り所がその国民的な高い人気にあったことは、よく知られている。だがそれは、どのように生み出されたのだろうか。

 ナチ体制は、「民族共同体」という情緒的な概念を用いて「絆」を創り出そうとしただけでなく、国民の歓心を買うべく経済的・社会的な実利を提供した。その意味で、ナチ体制は単なる暴力的な専制統治ではなく、多くの人びとを体制の受益者、積極的な担い手とする一種の「合意独裁」をめざした。このもとで大規模な人権侵害が惹起され、戦争とホロコーストへ向かう条件がつくられていったのである。

 ヒトラーとナチズム、そしてホロコーストに関する歴史研究は、冷戦が終結した1990年代になって一気に進展した。

 それは、旧ソ連・東欧圏の文書館史料が閲覧可能となり、長らく不明とされた歴史の細部に光があてられるようになったこと、またそれまで自国の負の歴史の解明に必ずしも熱心でなかったドイツの歴史学が、研究者の世代交代もあいまって、若手を中心に積極的に取り組むようになったことに負っている。

 ナチ時代、ドイツは第一次世界大戦に敗れた屈辱感と長引く経済危機からようやく抜け出し、再び大国への道を歩み出した。若き指導者ヒトラーのもとで「民族共同体」の理念が揚され、国民統合も加速した。その陰で民主主義の価値と制度は破壊され、特定の少数派集団の人権が徹底的に踏みにじられたのだ。

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 第一次大戦後のヴァイマル体制の混乱から生まれ出てきたアドルフ・ヒトラー。旧ソ連崩壊の後のペレストロイカの停滞から現れたウラジーミル・プーチン。世界はいま再び、恐ろしい独裁者がもたらす未曽有の危機に直面している。いまこそヒトラーとナチスの時代を振り返ることが求められているのだ。
現代新書編集部


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