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前代未聞の法相経験者逮捕。河井夫妻逮捕で早まった衆院解散のXデー

2020年07月03日 19時15分50秒 | 事件と事故

前代未聞の法相経験者逮捕。有罪判決は濃厚

写真/時事通信社

 通常国会が閉会した翌日の6月18日、ついに河井克行前法相と妻の案里参院議員が揃って東京地検特捜部に逮捕された。容疑は公職選挙法違反の「買収罪」。昨年7月の参院選前に集票を依頼する目的で広島の県議ら94人に計2500万円以上をバラ撒いた、という疑いだ。 

 この問題に火をつけたのは『週刊文春』だった。案里陣営がウグイス嬢に対して、公職選挙法で定められた日当上限の倍額を支給していたことを昨年10月にスクープ。広島地検が公職選挙法違反の疑いで河井夫妻の事務所などを家宅捜索した今年1月には、またも文春砲がさく裂した。克行氏と案里氏がそれぞれ支部長を務める政党支部に、計1億5000万円もの資金が党本部から参院選前に振り込まれていたことを報じたのだ。同じく、参院選広島選挙区で自民党公認候補として出馬して落選した溝手顕正氏に振り込まれた資金は1500万円。その10倍もの資金は何に費やされたのか? 

捜査の過程で浮かび上がったのが、地元広島県議らに対する買収工作疑惑だった。だが、現職議員が選挙時の買収で立件されるのは異例だ。元特捜検事の郷原信郎弁護士が解説する。 


「従来の公選法違反による買収罪の適用は、選挙期間中やその直近に選挙協力の対価などとして金銭などを供与する行為が中心でした。しかし、今回の事件では、参院選の3か月前の現金供与に対して適用している。河井夫妻は陣中見舞いや昨年4月の広島県議・市議選の当選祝いという名目なら言い逃れできると考えているのでしょうが、その主張を覆せるだけの材料が揃って逮捕に至ったのは間違いありません。なぜなら、公選法では、受け取る側に『特定候補を当選させる目的のお金だった』という認識があり、かつ使途の定めのない『自由に使えるお金だった』という2点だけで買収罪が成立する。金銭を供与された県議らの証言だけでも有罪に持ち込める可能性が高い」


事件はさらなる広がりを見せる可能性も
 すでに有罪判決は濃厚というのが郷原氏の見立てだが、事件はさらに広がりを見せる可能性がある。 

「公選法には『交付罪』が規定されています。これは、選挙協力を目的とした買収資金に充てられることを認識したうえで、その原資を提供していた場合に適用されるもの。つまり、自民党本部から振り込まれた1億5000万円が買収工作の原資となり、かつ本部がその使途を認識していた場合には、交付罪が成立する。過去に政権与党の本部が交付罪で立件された例はありませんが、今後の捜査で1億5000万円の流れが解明されると、本部への家宅捜索が実施される可能性は十分にあります」  

安倍政権はこのお金の流れを追及されることに危機感を表していた節がある。全国紙政治部記者が話す。 

「年明けすぐの段階で、自民党幹部は『桜問題よりも、河井夫妻の公選法違反のほうが深刻』と話していた。


その直後に、広島地検が河井夫妻の事務所などを家宅捜索して1億5000万円もの資金が党本部から流れていたことが発覚。それで2月7日に政府が黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年延長を閣議決定すると、『検察に対するプレッシャーだな』と、その幹部は漏らしたのです。つまり、異例の人事権を振りかざすことで捜査を抑え込もうとしたのでは?と。1億5000万円ともなれば、二階俊博幹事長一人で決裁できるはずがない。今回の問題が直接、安倍政権を脅かす可能性があることを、その幹部は認識していたのです」


政権に与える影響は?


 では、前代未聞の現職議員夫婦の逮捕は今後、政権にどんな影響をもたらすのか? 政治ジャーナリストの藤本順一氏は「岸田禅譲の目はほぼ潰えた」と分析する。 「案里氏が、安倍首相に批判的な岸田派の重鎮・溝手元国家公安委員長を追い落とすべく、昨年の参院選で広島選挙区に送り込まれたのは周知の事実。ウグイス嬢への倍額支給問題で元秘書が一審で懲役1年6月執行猶予5年の有罪判決を受けており、自身の裁判を待たずに連座制の適用を受けて当選無効が言い渡される可能性が濃厚ですが、岸田文雄政調会長からするバツが悪すぎる。自分の派閥の重鎮を追い落とした首相にすり寄って禅譲を画策してきたからです。検察庁法改正案などで支持率が急落している安倍首相に、もはや自身の主張を押し通す力はない。二階幹事長が反安倍の石破茂氏と接近しているように、岸田氏に代わるポスト安倍レースが本格化している状況です」  さらに、今回の事件を受けて解散時期が前倒しになる可能性も。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が話す。


 「年をまたぐと公明党は夏の都議選に向けて動きだすため、今年の秋口ないし12月の解散が濃厚と言われてきましたが、9~10月解散が現実味を帯びてきた。一つには10月中にIOC(国際オリンピック委員会)が東京五輪開催の可否を決定することが挙げられます。仮に開催中止となれば失望感が広がる。また、11月には米大統領選があり、トランプ氏が敗北すれば蜜月関係を築いてきた安倍首相の外交手腕が問われかねない。実は、同時期に、河井夫妻の一審判決が出る可能性があるのです。起訴する時期にもよりますが、百日裁判となれば、早ければ10月末頃の判決。裁判の過程では1億5000万円問題がクローズアップされるのは必至ですから、その前に解散を打ってしまおうという見立てです」 

 コロナ禍の最中、延長国会を拒否した安倍政権は一足早く選挙モードへ? 秋口の動向を注視したい。
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 従来の公職選挙法違反(買収)は、選挙期間中や直近の現金供与などに適用されていた。これが選挙とは離れた時期にも適用されたことで、「今後はあらゆる政治資金の使途を透明化する流れが加速せざるをえなくなった」(郷原氏)という。少なくとも、1億5000万円もの大金が選挙前に党本部から支部に流れるようなことはなくなりそうだ。 

6/24/2020


<取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社 産経新聞社>

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