40~50代の失業率は2%前後とほぼ横ばいで推移し続けているが、数値には反映されない“新型”の無職中年が今、増加の一途を辿っている。
現役世代を突如として奈落の底に突き落とす“社会の落とし穴”はいかにして生まれたのか!?
統計に表れない、突如として社会から脱落する現役世代とは
働き盛りの40~50代。
だが今、統計にも浮き上がってこない新型無職中年が増えている。下記は2980万人とも言われる40~50代労働人口の階層を示したものだ。
<40~50代の労働市場>
・正規労働者(正社員) 1818万人
・非正規労働者(契約社員・派遣) 796万人
・失業者(求職活動中) 63万人
・無職かつ求職活動をしていない“超失業者” 推定100万人超 (労働力調査2020年2月分結果より)
===== 正社員など正規労働者は1818万人、契約社員・派遣社員などの非正規労働者が796万人、そして求職活動を行っている、いわゆる失業者は63万人に上る。
新型無職中年はこれらの統計データからもこぼれ落ちた、求職していない超失業者を指し、推定100万人超が存在すると言われている。いったい彼らはどのような存在なのか。 「近年ひきこもり中高年者の存在が社会で認知されるようになり、内閣府の調査でも40~64歳で推計61万人に上りました。しかし、こうした中高年層は不登校の延長から続く若年ひきこもり者とも違います。
彼らの多くは正社員としてキャリアを積むなどの社会経験がありながら、ふとしたきっかけでレールから外れて労働市場に戻れなくなってしまった人たちです」
そう話すのは中高年の労働問題に詳しいジャーナリストの池上正樹氏。新型無職中年は求職活動を行えないため、失業者にカウントされることもなく「社会から消えてしまった人たち。統計に現れない深刻な実態の放置は社会的損失にも繋がり、経済の好循環を阻害しかねない」(池上氏)が、そうした人たちが、増加を続けている。
無職中年の40.9%は求職活動をしていない
少子高齢化が進み、労働人口が減る一方の日本において現役世代100万人超の労働力が失われている事実は衝撃だ。
実際、取材班が就労歴10年以上の40~50代の無職者1000人にアンケートしたところ、40.9%が「求職していない」と回答。
▼「就労歴10年以上、現在無職の40~50代男性」1000人にアンケート (調査期間:’20年3月23日~3月31日)
Q1.現在、求職活動をしていますか?
・はい 59.1%
・いいえ 40.9%
※10年以上の就労歴がある40~50代でも、求職活動を行っていない人が40.9%もいた
===== 中高年の就労支援、ひきこもり訪問支援を行う一般社団法人トカネット代表の藤原宏美氏は「国のデータからも取り残されているため、支援の手が届きにくい」と話す。 「’00年代からひきこもりが社会問題として語られるようになったことで公的支援制度も整備されてきましたが、つい最近まで支援対象は15~39歳と、無職の中高年は国の支援からも蚊帳の外に置かれている状況でした。
昨年ようやく上限は撤廃されましたが、ただでさえ年齢的な問題で再就職が難しい中高年の支援に対し、『実績を残しづらい』と及び腰の自治体が多い。彼らを社会から忘れられた存在とするのは簡単ですが、介護のために離職し求職活動ができない人、長年の激務で心を病んだ人、ケガが理由で長年携わってきた仕事ができなくなった人など、やむにやまれぬ理由で新型無職中年となった人が私の相談者にも少なくありません」
新型コロナウイルス禍の影響は?
さらに、新型コロナウイルス禍の影響で、こうした状態に陥る無職中年は増えるとの見方もある。
リーマン・ショック後の失業率は5.6%に上昇し、1年以上の長期失業者は118万人に達した。今回は「それ以上」との声も多く、その影響は計り知れない。 「失業期間が長ければ長いほど労働市場から消える新型無職中年が増えることはわかっています。今回の終わりの見えないコロナショックは、まさに未来の無職中年を生むでしょう」(池上氏)
もはや誰にとっても他人事ではない新型無職中年への転落の危機。 「70歳まで働く」必要に迫られる社会において、働き盛り世代に何が起きているのか。社会からの脱落者を生んでいる、今の日本の労働市場が抱える問題は、想像以上に根深い。
4/27/2020