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東京23区に横たわる「学歴格差」と「所得」の実態…大卒者が最も多く暮らすのは「文京区」、最も少ないのは「足立区」

2024年12月05日 15時03分33秒 | 教育のこと

東京23区に横たわる「学歴格差」と「所得」の実態…大卒者が最も多く暮らすのは「文京区」、最も少ないのは「足立区」 





東京23区の中でも大学進学率には大きな差があります。また、大卒者が暮らす割合が多い区・少ない区の間にも大きな差があり、その差が「所得の差」になって表れているといいます。本稿では、不動産ジャーナリストである榊淳司氏が監修を務めた、東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会による著書『東京23区 中古マンション 格差の地図帳』(宝島社)から一部抜粋し、23区の大学進学や大卒者にまつわる実態をご紹介します。


23区の大学進学率ランキング1位は「渋谷区」
大学進学率とは、いわゆる4年制大学のみならず、短期大学、大学・短期大学の通信教育部、放送大学なども含めたものだが、その数値は23区内でかなりの開きがある。


東京都人口統計課による『令和5年度学校基本統計(学校基本調査報告)』によれば、まず2023年度の23区全体の大学進学率は73.3%となっている。高校を卒業した者の約7割が大学に進学しているのだ。


そして、もっとも大学進学率の高い区は、渋谷区で82.1%となっている。23区の平均よりも、1割近く進学率が高い。


この統計は在住者の大学進学率ではなく、所在する高校の大学進学率を表しているため、名門校の割合が高ければ大学進学率も上がる。とはいえ、教育水準に関するひとつの指標にはなるだろう。



次いで2位は目黒区の81.8%、3位は文京区の81.1%となっている。この渋谷区、目黒区、文京区が、23区における大学進学率トップ3である。進学率が8割を超えている区としては、ほかにも千代田区と港区があり、上記2区を入れて5強といってもいいだろう。


ちなみに、23区外の都下も含めれば、断トツの1位は国分寺市である。その割合は、なんと9割超えの91.2%。東京で大学進学率が9割を超えているのは、国分寺市以外にない。


23区の大学進学率最下位は「荒川区」
一方、大学進学率が低い区は、最下位が49.7%の荒川区、微差で下から2番目が49.8%の葛飾区、下から3番目が52.3%の足立区となっている。6割以下なのは、この3区だけであり、ワースト4位の台東区も60.8%と足立区よりも10%近く高いため、荒川区、葛飾区、足立区の3区は、とくに大学進学率が低い区といえる。


大学に進学するだけが人生の選択ではないが、大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る大学全入時代において、進学率が5割前後というのは、かなり目立つ。


大学進学率が高い区というのは、それだけ教育熱が高いエリアということだ。さらに、進学率上位の区は、平均所得においても高い区ばかりである。反対に、進学率が低い区は、平均所得も低い。


1位の渋谷区には、渋谷教育学園渋谷高等学校、都立青山高等学校や都立広尾高等学校、青山学院高等部、國學院高等学校、実践女子学園高等学校などがあり、2位の目黒区には都立駒場高等学校や都立国際高等学校などがある。また、3位の文京区にも、駒込高等学校、郁文館高等学校、桜蔭高等学校、東洋女子高等学校など、高い大学進学率を誇る高校が多い。


ちなみに、全国的に公立高校よりも私立高校のほうが大学進学率は高い傾向にあるが、目黒区は公立高校のほうが進学率が高い。それだけ、目黒区は公立高校が充実しているということである。


23区の学歴格差…大卒者の割合が最も多いのは「文京区」
その区の住民のなかで大卒者(大学院卒含む、短大卒は含まず。『令和2年国勢調査』)が占める割合は、区によって、かなりの開きがある。


23区で大卒者がもっとも多く暮らしているのは文京区で、43.1%となっている。次いで2位が中央区の42.1%、3位が千代田区の40.0%、4位が杉並区の37.7%、5位が品川区の36.3%である。


反対に、住民に占める大卒者の割合がもっとも少ない区は足立区で、17.8%だ。次いで葛飾区の21.4%、江戸川区の21.6%となっている。この3区はいずれも大学進学率が低い区であり、とくに足立区と葛飾区は、進学率でどちらもワースト3に入っている。



また、大卒者割合が上位の区と下位の区では、2倍以上の開きがあることがわかる。じつは、この大卒者割合と平均所得には大きな関連が見られる。大卒者割合上位3区の文京区、中央区、千代田区は、平均所得においても上位の区だ。


一方、大卒者割合が少ない足立区、葛飾区、江戸川区は、平均所得においても下位グループであり、とくに足立区と葛飾区はワースト1、2位である。


大卒者割合・平均所得・私立中学進学率の共通性
さらにもうひとつ興味深いデータがある。私立中学進学率だ。


東京都の『令和5年度公立学校統計調査報告書』によると、私立中学進学率トップ3は、文京区49%、中央区43%、港区42%で、ワースト3は、江戸川区11%、足立区13%、葛飾区14%である。


文京区、中央区は大卒者割合でもトップ3に入り(港区は9位)、江戸川区、足立区、葛飾区は同じく大卒者割合でワースト3の区である。


そもそも、日本の社会構造上、大卒者とそれ以外では生涯賃金に大きな開きが出る。学校卒業後にフルタイムの正社員を続けた場合の60歳までの生涯賃金(退職金を含めない)を比べたとき、男性の場合は大学卒で2億5,000万円、高校卒で2億円、女性の場合は大学卒で2億円、高校卒で1億5,000万円となっており、男女とも5,000万円もの差が出るのだ(『ユースフル労働統計2023』)。


以上のことからわかるのは、大学卒の親は高収入の職に就きやすいため所得が高く、その子どもの私立中学進学率(イコール中高一貫校進学率と考えられる)も高くなる傾向が見られるということだ。


もちろん、公立の中学校に入学しても、将来的に大学・大学院を卒業し、高所得を得るケースはいくらでもある。


ただ、東京23区においては、大卒者割合・平均所得・私立中学進学率には共通性があり、区によって大きな格差があることも事実である。


榊 淳司(監修)


不動産ジャーナリスト


東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会(著)












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貧困東大生が感じた絶望。9割が「金持ち家庭出身」なのに自覚がない東大生

2024年11月09日 21時03分51秒 | 教育のこと
はじめまして、現役東大生の布施川天馬と申します。学生生活の傍ら、ライターとして受験に関する情報発信などをしています。  

突然ですが、東大生になるためには何が必要だと思いますか? 東大に合格するためには、いったいどんなものが恵まれていればいいんでしょうか? おそらく多くの人は「頭の良さ」と答えると思います。勉強ができて、天才的な頭脳がある人が東大に受かる、と。しかし、それは違います。答えは「金」です。 

8/4/2020
 実は東大生の9割は、金持ちの家庭出身。金がないと頭が良くても東大に合格できないのです。 

東大生の実家の約60%が「世帯年収950万円」

 東大が実施している「学生生活実態調査」という資料があります。このアンケートは「学生の男女比率」や「大学に改善してほしいこと」はもちろんのこと、「東大生の実家の世帯年収」までも項目に掲げている、かなり赤裸々な内容です。 

 その「実家の世帯年収」を見ると、面白い事実がわかります。なんと東大生の実家の世帯年収は、その約60%が「年収950万円」を超えているのです。(2018年度東京大学実施「学生生活実態調査」)  全国の世帯年収の平均額が550万円前後なのに対して、年収900万円以上の世帯はわずか16.1%しかいません。(2018年度厚生労働省実施「国民生活基礎調査」) 


裕福な家庭出身の比率が圧倒的に高い東大生

 また、全国にわずか3%ほどしか存在しない年収1500万円以上の世帯出身者が東大には3倍以上も存在しています。  この異常さがわかっていただけるでしょうか。東大という非常に狭いフィールドには、全国まわってかき集めたとしても2割にも満たないような上流階級の子供たちが集中しているのです。


幼少期から「重課金」されてきた東大生
 では、そこに通う学生たちの意識はどうでしょうか。彼らは意外にも自分たちが恵まれた環境で育てられたとはまったく思っていないようなのです。より正確には「自分たちの家庭は”普通”の環境だった」と、全員が口をそろえて答えます。しかし、実際のところはそうではありません。彼らの経験、暮らしについて聞いていくと、見栄えのいいエピソードばかりが溢れ出てきます。  

たとえば、先日Twitter上で、東大から海外の有名大学に進学したということでバズっている方がいらっしゃいました。その方がいうには、「自分は中流家庭の出身」だそうなのですが、話をよくよく聞いてみると「幼少期の頃に外国へ留学させてもらった」というのです。  

当然ですが、海外留学には非常にお金がかかります。渡航費、生活費、学費に緊急時の医療費なども考えれば、数百万円は優にかかることでしょう。そんなお金を捻出できるような家庭が「中流階級」といえるのでしょうか。 

 この例はかなり特殊なものでしたが、「小学生から高校までずっと大手学習塾に通っていた」という人は当たり前のように存在します。  

一般的な大手学習塾は、年間で100万円近い費用がかかります。たとえば、河合塾や駿台予備校などの大学受験コースは、年間で70万〜80万円ほどの授業料がかかります。もちろん夏期講習費用などを加算すれば、当然もっと増えていきます。100万円を超えることも珍しくはありません。 

 加入するコースによって費用は変わってきますが、これを小学校高学年から高校3年まで続けると全体で1000万円近い出費となります。念のため断りますが、これは中学校や高校の学費とは別です。学費とは別の教育費としてこれだけのお金がかかります。


あくまで自分の家庭は「普通」だと認識
 また、東大へ実家から通う学生の話を聞くと、実家は広尾や武蔵小杉、白金台などのいわゆる東京や神奈川の一等地エリアの地名ばかり。タワーマンションの高層階に住んでいるという人も多くいました。 

 一人暮らしの学生はどうかと言われれば、相場にして家賃10万円以上だろうという家に住んでいる場合が多かったように感じます。赤坂某所にある守衛付きマンションの一室を借り切って過ごしているという学生さえいました。  


一度、同級生に向かって「君はこんないいところに一人で住んでいるのか」と聞いたことがあるのですが、彼から返ってきた答えは「親が金はいくらでも出すから、住みやすいところに住めと言ってくれた」というものでした。 

『キテレツ大百科』の「逆さにすると無限に金が出てくるサイフ」を連想した自分がいました。誰もがみな金持ちであるというわけではないでしょうが、私の周りにはそういった人が多かったように思いました。しかし、そんな彼らに「へぇ、すごいね!」と声をかけると、決まって返ってきた文句があります。 「いやいや、うちなんて全然。普通だよ!」 「普通」とはなんでしょう? 

全国的な世帯年収の「普通」をいうのなら、彼らの実家の年収は、むしろ「異常」に当たる数字です。


実家の資産次第で教育に格差が生まれる「階級制度」
 私が東大に入学して、一番初めに心を折られたことは、英語の先生に心ないダメ出しをされたことでも、難解な文献を漁ることでもなく、東大生の多くが「自分の実家は普通である」と心の底から信じ込んでいることでした。  

おそらく彼らは本心でそう思っているのです。彼らはその水準の暮らしを幼少期から続けてきており、また、ある程度上流階級にいるような人々との交流を通して育ってきたからこそ、「自分たち以下の暮らし」がまったく想像できないのではないかと思います。  昭和、平成、令和と時代は変わりますが、未だに日本の受験界は生家の財産が物をいう実質的な階級制度が残っています。  

この現状を一刻も早く断ち切らなければ、「金持ちはいい教育を受けさせられるのでエリートになり、また金持ちになる。貧乏人はいい教育を受けさせることができず、落ちこぼれ、また貧乏になる」という状況が固定化されかねません。  

あまりにも馬鹿げた話です。ですから、今を生きる私たちが行うべきは「エリートを伸ばすための高価な英才教育」とは異なる教育を求めることです。大切なのは「いかにお金をかけずに効率よく学ぶか」といってもいいでしょう。そのためには無駄をそぎ落とし、「いかに節約するのか」ということが大変重要になります。  

世帯年収300万円台の家庭で育った私は東大ではかなり異色な存在です。そんな私が試行錯誤のなかで見出した「お金を使わず効率よく学ぶ方法」を発信することで、硬直した高等教育の現状を少しでも変えていければと考えています。 布施川天馬

1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』が発売中
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【北海道】弾道ミサイルが来たら 中学校ではどうすれば? 北海道で避難訓練 教室の窓から離れ頭抱える

2024年10月16日 00時03分22秒 | 教育のこと
【北海道】弾道ミサイルが来たら 中学校ではどうすれば? 北海道で避難訓練 教室の窓から離れ頭抱える 


2022/10/19(水) 07:53:22



2022年10月18日19:15



北朝鮮によるミサイル発射が相次ぎ緊張感が高まる中、北海道で弾道ミサイルを想定した住民避難訓練が行われました。

北海道京極町役場で行なわれた訓練は国、北海道との合同で実施されたもので、どこかの国から弾道ミサイルが発射されたという想定で行なわれました。

訓練では午前9時58分に北海道・青森方面にミサイルが発射され、10時1分に「Jアラート」が鳴ったという想定で、飛散物や被害状況の確認など国や道と情報交換したほか、問い合わせ対応など、住民の安全が確保されるまでの初動対応などを確認しました。

午後からは京極中学校の生徒が、Jアラートが鳴った想定で避難訓練を行ないました。

ミサイルに備えて教室の窓から離れ、建物の頑丈な場所で頭を抱えながら身を守ります。

 京極町 梅田 禎氏 町長:「色々な情報がどのように伝わってくるか、不測の事態の対応、手順を確認できたのではないか」 


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今やひっぱりだこ!? 武器になるのは「数学」です

2024年10月14日 15時05分57秒 | 教育のこと

ビジネス特集 今やひっぱりだこ!? 武器になるのは「数学」です

スマホに話しかけると答えてくれるアレや、コンビニでの天候や客足などに応じた商品発注の最適化など、すでに暮らしの至るところにAI=人工知能が活用されています。そうしたAI時代に、求められる人材とは?ーーーシステムエンジニアやデータサイエンティストがそうかもしれませんが、実はいま求められているのは「数学ができる人」なのです。(経済部記者 木村隆介)

4/12/2020



数学専攻が大人気! アメリカ
日本では「就職先がない」「何の役に立つか分からない」と敬遠されがちな数学。私自身、高校時代に深入りすることをやめてしまった文系人間ですが、数学に苦手意識を持つ人は多いのではと思います。

一方、AIの分野でリードするアメリカでは今、日本とは事情が全く異なっています。アメリカでは、よい待遇や仕事環境が得られる職種のランキングに「数学者」が常に上位に入ります。

カリフォルニアのある有力大学では、この10年で数学を主な専攻とする学生の数が5倍に増えたといいます。




グーグルやアップル、フェイスブックなどの巨大IT企業が今、数学専攻の学生を積極的に採用していることが背景にあります。

AIの基礎は数学にあり
なぜ数学なのか?AIには、課題を解くための計算や処理の手順を示した“アルゴリズム”が必要ですが、そのアルゴリズムを効率的に組み立てるために必要になるのが、高度な数学なのです。

足し算やかけ算などの四則演算をもとにした単純なプログラミングでは膨大な時間がかかってしまう作業が、アルゴリズムに最適な数式を組み込むことで、劇的に時間を短縮できます。

囲碁ソフトや画像認識などで使われる“ディープラーニング”のアルゴリズムは、微分積分や行列、ベクトルといった私たちが高校時代に学ぶ数学が土台にあります。

巨大IT企業がビジネスの糧にしている大量のデータを瞬時に分析し正確な結果を導き出す画期的なアルゴリズムを開発できるのは、高度な数式を理解し活用できる人材だとされているのです。

急成長 東大発の数学ベンチャーが

日本にも数学系人材を集めて注目されているベンチャー企業があります。2016年に東京大学大学院の特任教授が立ち上げた「Arithmer」です。110人の社員のうち、半数以上が数学や物理の博士号や修士号を持っていて、現代数学をAIに応用することを主な事業としています。
以下ソース



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「子供の成功には、親も学校もあまり関係ありません」 | 「何冊本を読み聞かせても読解力に影響は出ない

2024年10月08日 03時03分25秒 | 教育のこと



行動遺伝学者ロバート・プロミン「子供の成功には、親も学校もあまり関係ありません」 | 「何冊本を読み聞かせても読解力に影響は出ない」

>私たちは自分で自分の遺伝的資質に合わせている

 | クーリエ・ジャポン (courrier.jp) 

行動遺伝学者ロバート・プロミン「子供の成功には、親も学校もあまり関係ありません」



2023/04/02(日) 21:38:


「何冊本を読み聞かせても読解力に影響は出ない」
行動遺伝学者ロバート・プロミン「子供の成功には、親も学校もあまり関係ありません」

ロバート・プロミン 行動遺伝学者。英国キングス・カレッジ・ロンドン教授。著書に『ブループリント』(未邦訳)、共著に『遺伝子を生かす教育:行動遺伝学がもたらす教育の革新』(新曜社)など 

「親の皆さん、罪悪感を持つのはやめ、子供が自分の道を見つけるのを応援しましょう。学校での教育が学業成績に及ぼす影響は微弱なので、法外な値段を払わなければならないような学校に子供を通わせる必要はありません」

 行動遺伝学の権威、ロバート・プロミンは迷える親たちにそう呼びかける。
 フランスの週刊誌「レクスプレス」に掲載された彼のロングインタビューは、私たちの「教育」や「家庭環境」に対する先入観を覆すものだった。



ロバート・プロミンが語る「遺伝」「環境」「教育」
この記事は1回目/全2回
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75歳の米国人、ロバート・プロミンは世界でもっとも著名な心理学者の一人だ。英国のキングス・カレッジ・ロンドンの教授であり、専門は行動遺伝学。この40年、遺伝が私たちの行動に及ぼす影響を研究し続けてきた。2018年には一般読者向けの著作『ブループリント』(未邦訳)を上梓し、行動遺伝学の驚くべき研究成果を紹介した。

プロミンは双生児や養子の研究で特に知られる。その研究により、遺伝率というものが定量化できるようになったからだ。遺伝率とは、ある集団内の個人の形質の差を、遺伝がどれくらいの割合で説明できるかという物差しだ。

「目の色」(95%)や「身長」(80%)の遺伝率が高いと言われても意外に思う人はいないだろう。だが、行動遺伝学の発展により、自閉症(70%)や統合失調症(50%)といった複雑な障がいの遺伝率がかなり高いだけでなく、学業成績(60%)や一般知性(50%)の遺伝率も高いことがわかっているのだ。

「氏か育ちか」、「生得論か、それとも経験論か」──議論が延々と繰り広げられてきたこの難問にプロミンが示したのは、「生得的なもの、つまり遺伝“資本”が個人の資質の半分以上を決めることが多い」という事実だ。

私たちは自分で自分の遺伝的資質に合わせている

──DNAによって私たちの性格が形作られていることに関心を持ったのはなぜですか。

人生を振り返ってみたとき、分岐点のような瞬間があったと考える人は多いですよね。私はシカゴの中心街で育ちました。大学がどんなところなのか知る人は、家族にはいませんでした。大学に進学すれば奨学金がもらえると進路指導の担当者に教えてもらい、これは良い話だと考えてテキサス大学に出願したんです。

そのときは、この大学が行動遺伝学を必修科目とする世界唯一の大学だとは知りもしませんでした。ですが、「生涯を通じて行動遺伝学に取り組みたい」と思うようになるまで時間はさほどかかりませんでした。

クラスには30名ほどの学生がいましたが、行動遺伝学を面白がっていたのは私だけでした。おそらくそれは私の性格によるものでしょう。私は主流に歯向かうのが好きです。心理学にとって、遺伝は重要だと私は考えていたのに、当時、心理学の分野では誰も遺伝について語っていませんでした。また、行動遺伝学を研究する人はタフでなければなりませんでした。行動遺伝学を研究していると白眼視されるような時代でしたからね。






私自身の経歴が、遺伝学の面白い部分の一つを示している気がします。環境要因というものに対して新しい見方ができるようになりますからね。私たちがくだす選択がそれぞれ異なるのは、遺伝子の違いという部分もありますが、いわゆる「非共有環境」の違いによるところもあります。

非共有環境とは、同じ家族に生まれた子供が共有していない環境のことです。つまり、仲間関係や病気、事故、人生における逆境といったことです。この非共有環境は、個人の特性が関係しているときもありますが、たまたまそうなったという場合もあります。

──遺伝学の研究者は白眼視されていたとのことですが、いまはどうでしょうか。

昔に比べたら、はるかに受け入れられています。いま遺伝学に対して否定的な見方をするのは、社会学者や教育の専門家など社会科学系がほとんどです。主要科学誌の掲載論文や研究費の振り分けなどを見れば、遺伝学がいまもっとも革新的な科学の分野の一つになっていることがわかるはずです。

一般の人に関して言えば、過去にはネガティブな反応をされることもあったのですが、いまではそれがなくなりました。研究者としては、データの蓄積が最終的にはイデオロギーに勝つことを願っています。





遺伝を徹底拒否する人は、たいてい子供がいないということにも気づきました。子供が一人のときは、まだ環境要因でその子のことを説明できる部分もありますが、子供が二人になると、家庭環境が同じでも、子供たちが非常に異なることが見えてきますからね。ノルウェーの作家カール・オーヴェ・クナウスゴールなどは、自分の三人の子供が、生後間もない頃から全然似ていないことを活写しています。

“知の巨人”タレブが猛烈批判「IQの高さと成功は、ほぼ無関係です」


──この数十年で多数の論文を発表されていますが、ご自身のキャリアで最大の発見と言えるものは何ですか。

「量的遺伝学」です。双生児や養子の研究を含むこの量的遺伝学研究で、遺伝の影響と環境の影響が見分けられるようになりました。

キャリアの最初の10年は、何かを観察すれば、そこに遺伝の影響を見出せました。その頃は、そんな研究でも衝撃的だとされていました。遺伝の影響を過小評価している時代だったからです。その後、環境と言われているものも、ある程度、遺伝の影響が関係していることを突き止めました。

たとえば親から受けた教育、人生で起きるさまざまな出来事、ストレスなどのことですが、私たちはこういったものに受動的に影響を受けているのではありません。私たちはこういった環境要因と相互作用しており、その相互作用の仕方の一部は私たちの遺伝的資質によるところがあるのです。






多くの人が意外だと感じる、面白い発見もしました。それは、遺伝の影響が年をとるにつれて大きくなるということです。世の多くの人は、年をとるにつれて遺伝の力は弱まり、環境要因の影響力が強まると考えているようですが、実際はその逆です。

たとえば学習能力の遺伝率は、幼児期が20%で児童期が40%、成人すると60%ほどと推定されていますが、老年期になると遺伝率が80%という研究も一部で出てきています。まるで最初は小さな違いだったのに、その差が一生を通じて雪だるまのように膨れ上がっていくかのようなのです。

残り: 3651文字 / 全文 : 6368文字

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(以下略、続きはソースでご確認ください)





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