トランプ大統領によって“壊された”アメリカは元には戻らない 世界が見放す米国との関係を日本も今こそ大転換させるべきだ 古賀茂明(AERA DIGITAL) - Yahoo!ニュース
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トランプ大統領によって“壊された”アメリカは元には戻らない 世界が見放す米国との関係を日本も今こそ大転換させるべきだ 古賀茂明
5/13(火) 6:32配信
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AERA DIGITAL
古賀茂明氏
5月7日に始まったコンクラーベ(次のローマ教皇を決める選挙)は、翌8日に新教皇の選出に至った。
【写真】石破氏とトランプ氏の「笑顔」の裏は…
新教皇はフランシスコ前教皇の改革路線を引き継ぐのか世界の関心が集まる中で、また、「あの人」が物議を醸し、大炎上した。
トランプ米大統領は5月2日、AIが生成した、ローマ教皇に扮(ふん)した画像を自身のSNSアカウントに投稿した。それをホワイトハウスがXの公式アカウントに再投稿したため、瞬く間に世界に拡散し、「大炎上」となった。公式の服喪期間(5月4日まで)中に、これほどの不謹慎な行動をアメリカの国家元首がとるとは驚き以外の何ものでもない。
トランプ氏は、5日に、この生成画像について、「どこから来たのか全くわからない。AIかもしれないが、私は全く知らない」と言い訳したが、その後に、「妻は『可愛いじゃない』と言った」とも述べた。反省の色はない。
トランプ氏は4月29日にも「私が教皇になりたい」と冗談めかして述べていた。今回の画像投稿も含め、次の教皇が保守派になれば、自分に有利に働くという思惑で、教皇選挙に介入したかったのかもしれない。
この投稿が行われたのと同じ2日に、トランプ氏はフロリダ州の自宅で、米NBCのインタビューを受け、それが4日に放送された。
そのインタビューの中で、トランプ氏は、
「すごくたくさんの人が、私にやって(続投して)ほしいと言っている」
「自分の知る限りでは、それ(3期目)は許されていないと思う。憲法上それが認められていないのか、それとも別の理由なのかは分からない」
「2028年の帽子を売っている人はたくさんいる(28年の大統領選挙でのトランプ氏の立候補を意味する『トランプ2028』と書かれた帽子を、トランプ氏が所有するトランプ・オーガナイゼーションが販売している)」
などと、思わせぶりな発言をした後で、
「だが、これ(3期目)は自分がやろうとしていることではない」
と述べた。
米国憲法で大統領の3選は認められていない。3選はないと言っても、何のニュースにもならないはずだ。
しかし、これまで、トランプ大統領は、3選を狙うかのような発言を繰り返し、トランプ支持者たちも、憲法の規定を回避する抜け穴があると主張している。
ただし、米国の憲法学者などの専門家は、その抜け道は有効ではないという説が圧倒的多数だ。トランプ大統領は任期が終わる2029年1月には退任するしかないのだ。
■トランプ氏はもはや「共和党の異端」ではない
民主党支持者をはじめ反トランプの立場の人々は、トランプ暴政に怒り心頭だが、民主党の反発力は弱く、トランプ暴政を止められないことを認識して、元気を失っている。
そうした反トランプの人たちのせめてもの救いが、あと3年半待てば、トランプ政治が終わるということだ。しかし、トランプ氏3選の話はどんなに否定してもなくならない。
そんな状況下で出て来た今回のトランプ氏の3選否定発言は、大きな朗報だと感じる人も多そうだ。
しかし、ことはそれほど単純ではない。
トランプ氏が、共和党の中では異端で、彼の退任により共和党が昔の共和党に戻るのであれば、確かに、3選否定は安心材料になる。
だが、トランプ氏が共和党の異端であるという大前提がもはや崩れている。
そもそも、これだけメチャクチャなことをやっても、まだ45%程度の支持率を維持していることは驚きだ。多くの米国民、とりわけ共和党支持者は変わってしまったのだ。
トランプ岩盤支持層の投票率は非常に高い。次の大統領選に名乗り出る共和党候補は、トランプ支持層を引き継がないと共和党候補のレースで負けるのは確実だ。これは、トランプ路線を引き継ぐ候補しか共和党の大統領候補にはなれないことを意味する。
もう一つ悪い要素がある。それは、トランプ氏は、退任後も自分の影響力を残すことに必死だということだ。なぜなら、大統領退任後、大統領の免責特権を失い、さまざまな罪で再び訴追されるのが必至だからだ。
後任の大統領が自分の支配下にあれば、刑事訴追を止めやすくなる。
今回のインタビューでも、次期大統領候補として、バンス副大統領やルビオ国務長官などの名前を挙げ、政治運動「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン」は、辞任後も継承されるとの見通しを示した。
特に、トランプ氏と最も考え方や政治スタイルが近いとも言われるバンス氏については、ルビオ国務長官など他にも優秀な次期大統領の候補がたくさんいると留保しながらも、バンス氏が「共和党大統領予備選で他の候補者より有利になる可能性が高い」と述べた。実際に彼は次期大統領の有力候補になるだろう。
いずれにしても、トランプ氏が推す候補は圧倒的に有利だ。もちろん、トランプ路線を100%引き継ぐと言わなければ、トランプ氏は支持しない。したがって、次の共和党の候補は、トランプもどきの候補になるのは確実だ。
もちろん、民主党が有力な候補を出して、共和党候補に勝てば良いが、それほど魅力的な候補が出るのかどうか。あまり楽観できない。
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従来の延長線上で、外務省、財務省、経済産業省などの官僚が主導し、何となく米国追随の政策を継続することになるのだ。
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日本を繋ぎ留めようとする米国の表向き柔らかな対日姿勢もあって、対米追従を続けた方が、国民ウケが良く政権延命に好都合だと判断しているのだろう。
一方、国民は政府よりも賢明だ。トランプ氏の支離滅裂な言動を見て、世論調査でも対米自立の意見が増えた。本来は、今こそ、対米自立へと舵を切る絶好の機会なのだが、政府にはその勇気がない。
もう一つ心配なのは、「対米自立」の一人歩きだ。
米国は信頼できない。米国なしでやっていく覚悟が必要だ。でも米国抜きだと中国が攻めてくる。中国と戦う準備が必要だ。中国は強大な軍事力を持つから、日本もそれに負けない軍備が必要だ。GDP比2%ではとても足りないから、3%、4%が必要だ。そのためには他の支出を削ることも必要だ。国家がなくなれば社会保障も教育もなくなってしまうから。
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米国が信用できないなら、欧州のように中国との関係を安定させてバランスを取るしかない。それにより、歯止めのない軍拡競争から抜け出せる。
そのためには、まず、日中首脳間で腹を割った話し合いをすることが必須だ。それとともに、両国民の間の交流を深め、相互理解を進めることも重要だ。しかし、岩屋毅外相と王毅外相が両国の間で修学旅行の機会を増やそうと話しただけで、国会で右翼議員から批判の質問が出た。これでは、何もできないではないか。
■立憲は内閣不信任案を出せるのか
そして、今、非常に気になるのは、野党が外交の基本路線について沈黙していることだ。野田佳彦立憲民主党代表は、外交・安全保障について、大きな路線転換が必要だという話を一切しない。本来は、大きな岐路に立つ日本の進路を決めるためには、国民の声を聞くことが必須のはずだ。
ところが、驚いたことに、野田氏は、米国と関税交渉を行っている間に衆議院の解散総選挙を行えば国政の空白が生じるから、内閣不信任案の提出は慎重にという立場を表明している。それは国民無視の政治の容認である。自公と立憲の間の談合で対米追従路線を継続したいのだろう。
立憲は、世界が大きく変わったことを前提にした新たな外交・安全保障政策を打ち出すべきだ。政府は、裏金問題に蓋をしたまま、選択的夫婦別姓にも答えを出さず逃げ続けている。それだけでも十分に不信任に値するのではないか。
それでも、野田立憲は、国民の声を聞かずに政治家だけの談合で対米隷属路線を続けるのか。
これから約40日後に訪れる通常国会の会期末までに、不信任案を出すのか、逃げるのか。
責任野党の矜持が問われている。