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最近よく聞くNMN、若返りに効くって本当?

2025年07月15日 15時05分31秒 | 医療のこと
 
最近よく聞くNMN、若返りに効くって本当?:日経バイオテクONLINE (nikkeibp.co.jp) 
 
 
 
 
機能性食品素材として注目を集めるNMNは、Nicotinamide MonoNucleotide(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の略称。NMNは、多種の脱水素酵素の補酵素として機能するニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の生合成中間代謝産物である。NMNは母乳に含まれているほか、枝豆やブロッコリーなどの野菜にも多く含まれる。体内ではビタミンB3(ニコチンアミド)から生成されるが、加齢に伴い量が減る。


 NMNを摂取すると体内でNAD+に変換され、長寿遺伝子ともいわれる酵素サーチュインを活性化することが知られている。マウスの実験では、高脂肪食負荷に伴う耐糖性異常の改善や老化に伴うミトコンドリアの機能低下の改善、虚血再かん流における梗塞巣の減少などが報告され、長期摂取では老化に伴う神経幹細胞の減少抑制などが認められている。


日清ファルマや帝人グループ会社が高額サプリを次々と発売

 日清製粉のグループ企業である日清ファルマは2021年1月、NMNを配合した「パワーサプライNMN」を、健康食品ブランド「リブロン」の新商品として発売した。NMNを125mg含むカプセルや、独自素材の水溶化CoQ10、レスベラトロール、13種類のビタミン類を配合した計7粒が1パック(1日分)で、販売価格は10パックで2万7000円(税抜き)と高価だ。2019年5月には、帝人グループのNOMON(東京・千代田)がNMNを含有したサプリメント「NADaltus(ナダルタス)」を発売した。当初の価格は1カ月分(30カプセル)が15万円(税込)と高額で話題となった。2022年7月現在は、6万2640円(税込)で販売している。


 2021年4月のScience誌にて、ヒトにおけるNMN投与の代謝効果を調べる世界初の臨床試験の成果を、米Washington University School of Medicineのグループが発表した。この臨床試験では、閉経後女性への投与で、骨格筋におけるインスリン感受性が改善するなどの作用が認められた。この研究には、日清製粉のグループ企業でNMNを商業生産しているオリエンタル酵母工業がNMNを供給した。

<中略>

東大、NMN摂取で高齢男性の筋力改善効果を確認

 2022年5月には、東京大学の研究グループがNMN摂取によるサルコペニア(加齢に伴う筋肉量の減少および筋力の低下)の予防効果を発表した。研究は、同大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科の五十嵐正樹助教や山内敏正教授らが実施した。健常な高齢男性を被験者として、NMNを経口摂取した場合に、筋力低下をはじめとした老化現象に与える影響について、無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を実施した。


 健常な高齢男性が1日当たり250mgのNMNを12週間経口摂取すると、NAD+および関連代謝物の血中濃度が上昇し、歩行速度、握力などの運動機能が改善することが明らかとなった。さらに、NMNの経口摂取により、聴力の改善傾向が見られることも分かった。超高齢化社会ではサルコペニアの予防が大きな課題とされている。今回の研究結果から、NMNの経口摂取は加齢に伴う筋力低下の予防に有効であり、予防医学につながると研究グループは考えている。研究成果は、2022年5月1日付の英国科学誌「NPJ Aging」オンライン版に掲載されている(DOI番号:10.1038/s41514-022-00084-z)。

 
 
 
Wiki
 
 
ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、略称:NMN、β-NMN)は、リボースとニコチンアミドに由来するヌクレオチドである。NMNはヒトの体内に入ると、補酵素NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変換され、サーチュインを活性化することがマウスによる研究で判明。サーチュインは「長寿遺伝子」であり、老化を遅らせ健康寿命を延ばす可能性のある物質として研究されている[1]。


概要
すべての生物種に存在する補酵素であり、牛乳など様々な栄養源に含まれている[2]。ヒトにはNMNを利用してニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADHおよびNAD+)を生成する酵素が存在する[3]。NMNはNAD+の生化学的前駆体として、ペラグラの予防に有用な可能性がある[3]。


本来は生体内でも生成されているが、加齢に伴うNMN生成能力の低下によりNAD+も減少し、細胞核の損傷やミトコンドリアの活性低下が進むと考えられている[4]。


NADHはミトコンドリア内の諸過程や、サーチュイン、PARP(英語版)の補因子であるため、NMNは神経保護薬や抗加齢薬としての動物モデルでの研究が行われている[5][6]。サプリメント企業はこうした点を主張して積極的なマーケティングを行っている[7]。近年、ヒトでの研究によって健康な男性で最大500 mgの単回経口投与が安全であること、投与した量に応じて体内で代謝されることが示されており[8][9]、長期の安全性に関する複数の研究が行われている[10][11]。


外因的に投与されたNMNが細胞に入るためにはニコチンアミドリボシド(英語版)(NR)に変換され、再びリン酸化されてNMNに戻る必要があると考えられている[12]。マウスではSlc12a8(英語版)がNMNのトランスポーターであり、小腸を介して10分以内に細胞へ移動しNAD+に変換されるという主張も存在するが議論がある[13][14][15]。NRとNMNはどちらも細胞外でのCD38による分解に対して脆弱である[16]。

 
 
 
 
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肉の食べ過ぎ」はやはり寿命を縮める>米国の研究で分かった…

2025年07月12日 23時03分39秒 | 医療のこと
米国の研究で分かった…「肉の食べ過ぎ」はやはり寿命を縮める
 
 
7/7(火) 15:01配信
 米国・ハーバード大学のFrank Hu博士らがArchives of Internal Medicine に発表した研究で、米国人は肉類の摂取量が多くなるほど寿命が短くなることが明らかになりました。

 博士らは赤身の肉類消費が、慢性疾患・生活習慣病のリスクの増大に影響を与えていることは、これまでの研究から明らかになっていましたが、死亡リスクとの関係に関しては、明確な研究データが得られていなかったことから、大規模な前向き調査データにより、詳しく分析することを企画しました。

 博士らが使用したのは1986年から2008年まで継続して収集された37,698人の健康関連の職業に従事する男性のデータ(調査開始時点で45~75歳)と、1980年から2008年まで継続して収集された83,644人の女性看護師のデータ(開始時点で30~55歳)、調査開始時点で調査対象者は男女とも心血管疾患とがんに罹患したことはなく、また健康状態データ以外に摂取している食品の内容と頻度を含んだ食事に関しての調査も、期間中4年に1度の頻度で継続調査され収集されていました。

 調査期間中に男女合計23,926人が死亡し、死因は5,910人が心疾患、9,464人ががんによるものでした。

 肉類の消費と死亡リスクとの関係をデータに基づき分析した結果、1日あたり85g消費量が増加すると、心疾患による死亡リスクが赤身肉で18%、加工肉で21%、ほど増加し、がんの死亡リスクが赤身肉で10%、加工肉で16%増加していました。

 別の視点から分析すると、1日あたり42.5g肉(ホットドッグ1本分相当)の消費量を減らしていれば、男性の9.3%、女性の7.6%の死が予防できた計算になりました。

 この結果から博士らは、今回の研究データから、赤身の肉類を魚や鳥、豆や全粒粉、低脂肪乳製品に置き換えるだけで、7%から19%も死亡リスクが低下すると予測できるので、米国人は赤身の肉類の消費をできるだけ上記のような健康な食品に変えていくことが望ましいといえるとしています。
 
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日本は高血圧の基準値が「厳しすぎる」と医師が指摘 「75歳で140未満という降圧目標値では下げすぎ。160程度が必要な人も多い」

2025年07月03日 10時03分50秒 | 医療のこと
 
日本は高血圧の基準値が「厳しすぎる」と医師が指摘 「75歳で140未満という降圧目標値では下げすぎ。160程度が必要な人も多い」 (msn.com) 
 
5/15/2024
 
日本における「高血圧」の基準が厳しいとの指摘も(イメージ)

 服用する人が日本国民の2割に上る「降圧剤」は、日本人に多い「高血圧」の治療のために処方されている。


 一方で、そもそも薬による治療を始めるかどうかの「基準値」に目を向けると、日本高血圧学会の治療ガイドラインでは成人で診察室血圧の上(収縮期)が140以上だと高血圧と診断される。130~139は「高値血圧」で“高血圧予備群”とされ、生活指導や降圧剤治療が視野に入る。一般的には治療による降圧目標は75歳未満が130/80未満、75歳以上は140/90未満となる。

 こうした基準値については「厳しすぎる」という指摘が出ている。日本高血圧学会認定専門医で高血圧治療ガイドライン作成委員会のメンバーだった上原誉志夫医師(循環器内科)が語る。


「若いうちは130未満を目指すことが健康寿命を延ばすために有効ですが、75歳以上なら140以上はないとかえって健康によくない。加齢により血管や臓器の働きが衰えてきている人が血圧を下げすぎると、ふらつきやめまい、腎機能障害や脳血流の低下による認知症のような症状が出ると懸念されます。反対に140以上あるとそういった症状が治まる人も多い。75歳で140未満という降圧目標値では下げすぎで、160程度が必要な人も多いのです」


 医学データ解析に詳しい東海大学名誉教授の大櫛陽一氏も語る。


「降圧剤で血圧を下げすぎて脳梗塞や転倒、入浴中の溺死、交通事故が多く起きています。にもかかわらず、日本では血圧の基準値を厳しくし続けてきました。たとえば英国に目を転じると、医療機関の受診が勧められるのは上が160、下が100以上。英国は医療費が無料で財政が逼迫しているため、少しでも薬の処方を減らそうとする世界でも特殊な事情を抱えている国ですが、降圧剤のリスクを考えれば、むしろ世界で最も妥当な水準の基準値が設定されていると思います」


 日本の基準値の変遷を振り返ると、1987年の厚生省基準では180以上で「要治療」。その後、「2000年頃から日本高血圧学会が基準値を大きく下げてきた」と大櫛氏が言う。


「日本高血圧学会が米国やWHO(世界保健機関)の基準に倣い、徐々に厳格化しました。2017年に米国心臓病学会と米国心臓協会が高血圧の基準値を140/90から130/80に引き下げると、日本もそれに追随して2019年に高値血圧の基準を設定しています」


 その経緯を前出の上原医師が語る。


「日本は高血圧治療の臨床試験データが少なく、海外のデータに流されがちです。食生活や体格、遺伝子などが異なるにもかかわらず、海外の臨床試験データをもとに“血圧はとにかく下げろ”という考えに学会もとらわれすぎているのです」


一律の基準はおかしい
 米国心臓病学会などが示した厳しい基準値については、「医師と製薬会社の経済的癒着が原因と批判された」(大櫛氏)という指摘もあるし、そもそも日本と米国では医療をめぐる事情が大きく異なる点も見逃せない。


 日本と違って民間医療保険制度が主となる米国では、治療費の負担が大きくなるため、薬を服用するかは患者自身と保険会社もシビアに検討していく。


「そうしたなか、米国政府の合同委員会が2014年に改定した公式の高血圧基準値(JNC8)は『65歳以上で150以上』に緩められました」(大櫛氏)


 基準値が複数存在する米国では患者自身が基準値の背景まで調べたうえで、数値がどこまで上がったら薬による治療を開始するか、選択できる素地があるとも言える。


 一方、皆保険で自己負担が抑えられる日本では、患者が医師に言われるままに漫然と処方を受け、服用を続ける事態に陥りがちだ。前出の上原医師も言う。


「本来は、『140以上は高血圧』といった一律の基準ですぐに投薬とはせず、個人の年齢や病歴などを鑑みて降圧目標値などを設けるべきだと考えます」


 日本人にも服薬をめぐる“世界基準”の考え方が必要だろう。


※週刊ポスト2024年5月17・24日号

https://www.msn.com/ja-jp/health/other/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E9%AB%98%E8%A1%80%E5%9C%A7%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%BA%96%E5%80%A4%E3%81%8C-%E5%8E%B3%E3%81%97%E3%81%99%E3%81%8E%E3%82%8B-%E3%81%A8%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%8C%E6%8C%87%E6%91%98-75%E6%AD%B3%E3%81%A7140%E6%9C%AA%E6%BA%80%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E9%99%8D%E5%9C%A7%E7%9B%AE%E6%A8%99%E5%80%A4%E3%81%A7%E3%81%AF%E4%B8%8B%E3%81%92%E3%81%99%E3%81%8E-160%E7%A8%8B%E5%BA%A6%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E4%BA%BA%E3%82%82%E5%A4%9A%E3%81%84/ar-BB1mlAM8?ocid=msedgdhp&pc=NMTS&cvid=d2e2315e91fa4caaa2948bb48ae9bf3c&ei=11
 
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「梅毒」郡山市では調査開始以来、感染者が最多に 医療機関対象の研修会を開催<福島県>

2025年06月27日 03時05分02秒 | 医療のこと
「梅毒」郡山市では調査開始以来、感染者が最多に 医療機関対象の研修会を開催<福島県> (msn.com) 
 
 
 
 

梅毒」郡山市では調査開始以来、感染者が最多に 医療機関対象の研修会を開催<福島県>

福島テレビ の意見 • 54 分前
 
「梅毒」郡山市では調査開始以来、感染者が最多に 医療機関対象の研修会を開催<福島県> © 福島テレビ

5月25日、医師や看護師に梅毒の症状や治療法などに理解を深めてもらい感染拡大を抑えようと、郡山市と医師会が研修会を開いた。

「梅毒」は性的な接触で感染し、口の中や性器などにしこりが出来たり、手のひらや腹などに赤い発疹が出る感染症で、最悪の場合死に至る。

全国で感染者が急増するなか、郡山市でも2022年の感染者が調査開始以来最も多い61人に上り、2019年の2倍に増加している。

※2021年38件・2020年43件・2019年30件   6/15/2024

石橋医院の石橋啓理事長は「先天梅毒では、妊娠した女性の子どもに生まれながらに梅毒に感染する例が増えてきてしまう。若い女性の梅毒の症例は抑制していきたいと思う」と話す。

郡山市は、感染に不安を感じた人は医療機関に相談するよう呼びかけている。

 
 
 
 
 
 
 
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これが「大学病院」の闇…「第一外科vs.第二外科」18人もの患者が死亡した医療事故の裏で起きた医師たちの「権威闘争」

2025年06月19日 03時03分07秒 | 医療のこと



これが「大学病院」の闇…「第一外科vs.第二外科」18人もの患者が死亡した医療事故の裏で起きた医師たちの「権威闘争」(高梨 ゆき子) | +αオンライン | 講談社(1/4) (gendai.media) 

2024




2023.04.21



群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していた。

2014年、読売新聞のスクープ記事から、医学界を揺るがす大スキャンダルが明らかになる。亡くなった患者・8人の手術は、いずれも早瀬(仮名)という40代の男性医師が執刀していた。院内調査によって、開腹手術でも10人が死亡していたことが発覚。技量の未熟な早瀬が、超一流外科医でも尻込みすると言われた高難度の最先端手術に挑んだのはなぜなのか。


「白い巨塔」の病理と、再生への道のりを、話題書『大学病院の奈落』(高梨ゆき子)より取り上げる。

『大学病院の奈落』(高梨ゆき子)文庫版が4月14日より発売

【記事前編】内部情報を漏らしたのは誰だ…群馬大医学部附属病院で腹腔鏡手術後に「8人」死亡、病院側の呆れた「最大の関心事」
第一外科vs.第二外科

群馬大学病院の外科は、多くの大学病院が伝統的にそうであるように、大学教授の率いる講座ごとのナンバー制をとり、第一外科と第二外科に分かれていた。第一外科は1944年、医学部の外科学講座教授をトップに診療を始めた。第二外科はそれに遅れること10年、1954年に別の教授が新しく開設した講座を母体としている。

その後、第一外科は消化器外科、第二外科は乳腺外科の分野を中心に発展してきたといわれるが、それぞれに外科の各種診療分野を抱えつつ併存してきた。群馬大学病院の臓器別再編が行われた2002年4月、第一外科、第二外科の消化器外科は名目上、一本化され、第一外科教授が診療科長に就任した。


この頃、国立大学法人化の影響で、各地の大学は、学部より大学院に重点を置いた体制に組織改編を進めていた。群馬大学もその波に押され、外科系の講座を、大学院医学系研究科の病態総合外科学講座(第一外科)、臓器病態外科学講座(第二外科)という編成にリニューアルした。

同じ時期、一部の大学では、講座と病院の診療科を臓器別に整理して役割分担できるよう組織編成がなされたところもあった。しかし、多くの大学ではそれが進まないままだった。群馬大学でも診療科の一本化は看板の掛け替えで終わり、実質的には、講座ごとに二つに分かれた第一外科、第二外科の各診療科が、それまで通り別々に同種の診療を行う体制が続いた。
Photo by iStock




第一外科、第二外科は、それぞれに医局員やOBのいる「関連病院」と呼ばれる縄張りを持っており、医局からアルバイトや常勤の医師を派遣するネットワークとして結びついている。関連病院にとって、医局が再編されることは医師の供給が途絶える不安と背中合わせで、簡単には受け入れられないという事情があった。医局側にとっては、患者を自分たちのところにスムーズに紹介してもらうための仕組みとして、また、医局員のアルバイト収入の確保先として、関連病院が重要な役割を果たしていた。「医師を派遣した病院からは、医局に派遣料が入る」と、裏金の存在を指摘する関係者もいた。


2015年4月、前年11月の報道で第二外科の手術死続発が表面化したのを契機に、二つの外科が非効率に分立している体制に批判が高まり、病院の診療科は統合された。それまでは、第一外科には消化器外科、呼吸器外科、乳腺・内分泌外科、移植外科、小児外科の各診療科があり、第二外科には循環器外科、消化器外科、呼吸器外科、乳腺・内分泌外科、移植外科と、同種の診療科をそれぞれ独立して二重に運営し、連携もほとんどない効率の悪い診療を長年にわたり続けていたのである。




「一外と二外は、いわば『犬猿の仲』。いがみあっていたと言ってもいい」
内部の関係者はそう語る。

伝統的に対立関係にあった両者は、古くは服装や雰囲気まで、がらりとカラーが違う時代もあったほどだったという。一外は「紳士たれ」がモットーで、ネクタイ着用に革靴

「現場主義」の二外は、ノーネクタイでスニーカーやサンダル履き……といったふうに。近年は、さすがにそこまで極端ではなかったが、それぞれに特徴が異なっていた。

「一外と二外は術式も違いました。一外はオーソドックスな手術しかやらないんですが、二外は変わった手術をやるのが好き。スタンダードじゃない手術をやりたがる傾向がありました」
Photo by iStock




そんな病院関係者の話もある。

これとは別に、群馬大学病院には、大きく分けて二つの勢力があると言う人もいる。一つは、東大出身者を中心とした旧帝大系、もう一つは、群馬大学を卒業し、大学病院に残った生え抜き組中心のグループだ。しかし、それは、東大をはじめ旧帝大出身者によるポストの侵食を快く思わない生え抜き組からの見方であって、旧帝大出身者は決して結束が固いわけではなかった。「仲がいいとは言えない。いや、むしろ仲は悪いと言ったほうがいいかもしれない」という認識を持つ人もいる。冷徹な利害打算によって離合集散していただけ、とでも言おうか。その一方で、生え抜き組には、旧帝大出身のエリートたちに負けまいと共闘する意識があった。



直近の体制下における第一外科と第二外科は、旧帝大出身者が教授を務める第一外科に対し、群馬大学を卒業した生え抜きがトップの第二外科と、教授の経歴にはっきり違いがあった。第一外科と第二外科の対立には、伝統的なカラーの違いに加え、教授の出自の違いも影響していた。

手術死で問題になった執刀医の早瀬稔(仮名)が所属していたのは第二外科で、そのトップであった教授の松岡好(仮名)は、一九八二年に群馬大学医学部を卒業し、前任教授の後継指名を大きな足がかりとして、二〇〇六年一一月に教授に就任した。それに対し、第一外科の教授は、旧七帝大の一角を占める九州大学卒で、一九九八年五月に群馬大学教授に就任していた。第二外科の前任教授は、群馬大学の生え抜き組ではないものの、九州の地方大学出身だった。第一外科教授とは同じ九州の出でありながら出身大学の格が違うだけに、「複雑な感情を抱いていたのではないか」と周囲からは見られていた。


常日頃から、「一外には負けるわけにいかない」と、医局員に檄を飛ばしていたといい、「一外との対立を煽あおっていた」と見る者も少なくない。

奇妙なことに、松岡と第一外科教授は、いずれも消化器外科医だ。同じ大学の外科に同種の分野の教授が二人いるようなもので、それだけで不自然に見える。医療が高度に専門分化してきたなかで、診療や研究の効率を考えれば、分野別に組織を整理・再編するのが時代の要請だったはずだが、それに逆行するようなありさまだったと言えるだろう。こうした不可解な事態の始まりは、松岡が第二外科教授に就任した二〇〇六年以前にさかのぼる。
Photo by iStock




それまでの第二外科は、教授の専門が循環器外科で、消化器外科が専門の教授をトップとする第一外科とも、一定程度の住み分けはしている形になっていた。しかし、前任教授の時代に、第一外科との対立関係は、むしろ激化していたという。

前任教授は一九九一年二月、「実績ある優秀な心臓外科医」と期待され鳴り物入りで群馬大学教授に就任した。

関連記事内部情報を漏らしたのは誰だ…群馬大医学部附属病院で腹腔鏡手…





「あの頃の第二外科は、乳腺外科はなかなか頑張っていたのですが、心臓外科の手術は振るわなかった。だから、手術のできる人、と期待されて来たのが彼だった。しかし、期待が大き過ぎたのかもしれない……」と、当時の教授の一人は言葉を濁す。

前評判の盛り上がりとは裏腹に、周囲の熱が冷めていくのに時間はかからなかったようだ。循環器内科の医師たちは、自分たちの患者に手術が必要になった場合、同じ群馬大学病院の外科ではなく、県外の大学病院を含めた他の病院を紹介するようになっていった。



『大学病院の奈落』(高梨ゆき子)文庫版が4月14日より発売

『大学病院の奈落』亡くなった患者・8人の手術は、いずれも早瀬(仮名)という40代の男性医師が執刀していた。院内調査によって、開腹手術でも10人が死亡していたことが発覚。技量の未熟な早瀬が、超一流外科医でも尻込みすると言われた高難度の最先端手術に挑んだのはなぜなのかーー。

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