この日がやって来てしまった~ ロドリゴさま~
いすみ鉄道の久我原駅で下車して、それ以来「久我原」をハンドルネームにしている(された)市川市在住の久我原さんの、いすみ鉄道ファンへの書き下ろし小説(フィクションです)
今までのお話は こちら
ドン・ロドリゴ漂着~日墨交流400周年記念ドラマ 第二十一話
数日後、ロドリゴが江戸に帰る日、城内の馬場で忠朝とロドリゴは馬に乗っていた。
「ロドリゴ殿、今日でお別れじゃな。我らの友情の証しにその馬を差し上げよう。」
ケンがロドリゴに通訳すると、ロドリゴは馬から降りて、片膝をついた。
「トノサマ、アリガトウゴザイマス。」
「そのような真似をされるな。」
忠朝も馬から降りて、ロドリゴの手を取った。
「Mi amigo de corazon.(我が友よ)」
「もう、お会いすることもあるまいが、ロドリゴ殿のお国での活躍をお祈りしております。」
ケンがそれを通訳するとロドリゴは忠朝と抱擁をした。その後、今度は忠古に握手を求め、やはり抱擁をした。
「タダフルサマ、アリガトウゴザイマス。」
ロドリゴが言うと忠古も言葉を返した。
「お元気で、お元気で。」
いつもは青白い忠古の顔が幾分、桃色に輝いて見えた。輝いてみえたのはなんと、一筋の涙だった。ロドリゴはホリベエに聞いた。
「ホルヘ、本当にここに残るのか?今なら、まだお前を連れて行ってやれるが、ここで別れたらもう二度と会えないぞ。」
「はい。もう決心したことですから。」
ロドリゴは後ろ髪ひかれる思いで大多喜を去り、江戸に帰っていった。
ロドリゴ一行が三浦按針が建造した「サンタ・ブエナ・ベントウーラ号」で江戸から故郷に向けて出航したのは八月一日のことだった。江戸湾を抜け、左手に見えた房総半島はやがて水平線の向こうに消えていった。
(ハポン(日本)よ。私は幸運だった。嵐にあったのは不運であったが、その嵐のお陰で忠朝殿と忠古殿という友人を得ることができた。
まずしいながらも、おだやかですがすがしい人々に会うことができた。国王(家康の事)にも親しく会うことができた。できることなら、イスパニアの正式な使者としてまた訪れたいものだ。しかし、それはかなうまい。
サキよ、ホルヘの事はよろしく頼むぞ。ホルヘはイスパニア人では無いが、いつかイスパニアと日本の交流の役に立つことを願っている。
Adios, amigos. Adios, Japon. Ahora yo salgo de Japon y deje Jorge como mi corazon.
(さらば友よ、さらば日本。私は日本を去るが、ホルヘを私の魂として残してきた。))
ロドリゴが大多喜を去った日、ホリベエは国吉に帰ってきた。
「お帰り、ホリベエさん。」
ホリベエを待っていたのはサキの笑顔であった。その笑顔を見た時、やはり自分はここに残ることにして良かったとホリベエは思った。
続く
ムーミン列車と大多喜城(撮影:tassさん)
(情報提供:於久さん)
大多喜城のホームページ http://www.chiba-muse.or.jp/SONAN/
常設展「房総の城と城下町」を開催中です。
3月27日~4月4日(29日を除く)に「中房総 大多喜城 さくらまつり」が開催されます。
「さくらまつり」の期間中、お城のライトアップを行います。(時間 18:00~21:00)
大多喜町観光協会サポーター http://blog.goo.ne.jp/otakikankou