「これ、だいじょうぶですか?」
と指先で示したぼくの足首に巻かれているのは、濃茶と黃の糸を編み上げたミサンガ。
「かなり圧迫しますからねぇ・・・でも、切らない方がイイでしょう?」
「・・・ダメなら仕方ないけど・・・」
「でも、なんか願いごとがあって付けてるんでしょ?」
「願いごと、っていうわけでもないがやけどね」
「浜のミサンガ環」。東日本大震災により仕事を失った漁師の奥さんたちが、魚網を材料としてつくったものだ。ぼくのそれは、2012年の7月に初代を装着して以来、古いものが切れては代えを繰り返し、現在のものになったのは一昨年のこれまた7月。三代目だ。
とはいえたしかに、特別な願いごとがあって付けているわけではない。忘れないようにしたい。ただそれだけのことである。
そんなことをごく手短に説明したぼくに、
「それは切らない方がいいわね」
と担当の看護師さんは言い、手術前の慌ただしい時間にもかかわらず、ふたりがかりで四苦八苦しながらほどいてくれたおかげで、それから数時間が経った術後、そのミサンガは、めでたくぼくの足に復帰した。
濃茶と黄色の「浜のミサンガ環」。これからも、しばらく付き合ってもらえそうだ。
ちなみに、ぼくと「浜のミサンガ環」のこれまではこちら。
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浜のミサンガ「環(たまき)」(2012.08.06)
浜のミサンガ環(2017年春) (2017.03.11)
浜のミサンガ「環」(2017年春・続編) (2017.03.21)
2022年の浜のミサンガ「環」 (2022.07.18)
【浜のミサンガ環】(Wikipediaより)
浜のミサンガ 環(はまのミサンガ たまき)は、岩手県大船渡市の越喜来をはじめとする三陸地方(岩手県、宮城県)で製作されていたミサンガ。2011年(平成23年)の東日本大震災以来の三陸の雇用創出を目的とする「三陸に仕事を! プロジェクト」の企画によるもので、震災により仕事を失った女性たちの手で、三陸の魚網を材料として製作された。2011年6月の販売開始から2013年(平成25年)のプロジェクト終了まで驚異的な売上を記録したとともに、被災者たちの精神面にも大きな効果をもたらしており、全国的な評価を得た。