ブルービーが出没しているという看板を見かけ、ふだんはめったに行くことがない「花の庭」へと足を向ける。
女郎花(おみなえし)が咲くスポットへ着くと、2つ3つが飛び回っていた。撮られるハチよりも撮る人の数が多いのに苦笑いしつつ参戦する。
ハチはむずかしい。
トンボも同様だ。
多分にそれは、わたしのせっかちな撮影スタイルによるところが大きいのだろう。
ひとところにじっくり構えてシャッターチャンスを待つぐらいのゆとりがなければ、動き回る虫は撮れない(たぶん)。
それはそれとして、たまにはバチッと撮りたいものだという思いが、めずらしく湧いていたのは、シャッタースピード優先モードで撮影してみたらどうだろうか、という案がアタマに浮かんでいたからだ。
さっそく実行。



これまでよりはずいぶんマシだが、やはりハズレが多い。
と、まわりでバシャバシャ撮っている御婦人方に神経が向いた。
なるほどケータイか。そうスマホである。
とり急ぎポケットから取りだしたiPhoneで試してみた。

ふむふむ、ハマったときの仕上がりはともかく、シャッターチャンスへの対応力は断然スマホの方がすぐれているようだ。
などと、おのれのウデのなさは棚に上げ、道具のうんぬんに考えを至らせていると、また、くだんの御婦人方が目に入る。
ん?
それはハチだぞ?
そんなに接近して怖くないのか?
そういえば・・・
我とわが身をふりかえってみる。
不思議だ。
ごくごく小さいとはいえ、そして色が青いとはいえ、相手はハチである。
なのに、わたしもまた、なんの恐怖心も警戒心も抱かず、この「幸せを呼ぶ青い蜂」に接近している。
ふと、思いだしたことひとつ。
擬態である。
たしか、ハチに擬態して自分を「強く」見せかけている昆虫がいたはずだ。
さっそく調べてみた。
擬態。一般的には、周囲の環境や他の生物に似せることをいう。代表的な種類としては、標識的擬態、隠蔽的擬態、化学的擬態。そのうち、捕食者を警戒させるのが目的で周囲から目立つようにするのが「標識的擬態」である。そのなかでもいくつかあり、「ベーツ型」というのが、防御を持たないものが毒などの武器を持つものに似せる擬態、いわば「虎の威を借る狐」スタイルだという。ハチに見せかけている昆虫がこれだ。
人間もまた、あの「黄色と黒」に対して恐怖を刷り込まれているのだろう。だからおなじハチでも「青と黒」のそれには恐怖心も警戒心も抱かない。
では、ブルービーにとってこの様態は、どのような利点があるのだろうか。
と、そこまで至ったところで思索をシャットダウン。
くだんのご婦人方は、まだ撮りつづけている。
「まったく飽きないのかね」
ココロのなかでつぶやいてみるが、わたしもまた同類である。
炎天下、たかが青い蜂の数匹に夢中になるおじさんとおばさん。
それもまたよし夏日和。