ヒルネボウ

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本ブログは、一部の人にとって、愉快な表現が含まれています。

モロシになりそう。~目黒祐樹

2023-07-26 22:21:09 | ジョーク

   モロシになりそう。

     ~目黒祐樹

ある音楽家の名前を思い出せなかった。〈海〉という字が頭に浮かんだ。ただし、その字が当たっているようには思えない。調べたら、すぐにわかった。〈海〉ではなく、〈洋〉という字が含まれている。

名前はわかったが、どうもしっくりと来ない。

同じ名字で嫌いな人がいたのを思い出した。ただし、嫌いな理由は特にない。口を利いたこともない。その人は私を嫌っていたらしい。嫌われても平気だった。

一時間ほどして、ある女優のことを思った。やはり名前が出てこない。名字の一字を思い出したが、もう一字が思い出せない。彼女のことは、好きでも嫌いでもない。しばらくして、下の一字は違うが同じ読みの元政治家の名前を思い出した。その人のことは大嫌いなのだが、名前を忘れたことはない。印象が強いからだろう。

その女優と同じ名字の少年の顔が浮んだ。ところが、すぐに別の少年の顔が思い出された。その少年の名前は覚えていない。先に思い浮かべた少年の顔が嘘っぽく思えて来て、そんな奴がいたという感じが薄れていった。そして、また別の少年の顔が浮んだ。彼の名前は覚えている。全然違う名前だ。

女優の名字は思い出せたが、下の名前が思い出せない。三字のカタカナが浮かんだ。平仮名だったか。音は合っているはずだ。漢字で二字だろう。そう思ったら、すぐに思い出せた。

パンデミックになってから、急に名前が思い出せなくなった。ウクライナのごたごたのせいで、さらに頭がおかしくなった。

温暖化のことなら、十数年前から諦めている。80年代に「月刊プレイボーイ」で温暖化の記事を読んだ。〈温暖化が肌で感じられるようになったら手遅れだ〉みたいなことが書いてあった。

温暖化のことは諦めても、猛暑には耐えられない。ぼうっとしてしまう。思考が鈍る。だが、物忘れとは関係がない。

物忘れの原因は老化だけではなさそうだ。嫌なことは気にしないようにしているからだろう。ところが、嫌なことを思い出さないのではなくて、嫌なことに関連した言葉を思い出せなくなっている。本末転倒だ。

素直になろう。そう思った途端、ある男優の名前を思い出した。数か月前から思い出そうと努力していた。彼の兄も俳優だ。その兄の名前を思い出せば、弟の名前も思い出せそうだ。なぜなら……。目黒祐樹。

最初のルバン三世役だ。映画は観ていない。観たくなかった。漫画の雰囲気と違っていそうだからだ。なぜ、違うと思ったのか。アニメが違っていたからだ。腹が立つほど、違う。なのに、何本も作られている。アニメ・ファンは原作を読んでいないのか。あるいは、原作のあの物憂い雰囲気を感じ取ることができないのか。

まあ、いいや。

どうせ、手遅れだ。

(終)


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PARODYSONG 噛んだ側 原案 さだまさし

2023-07-25 22:25:15 | ジョーク

   PARODYSONG

     噛んだ側

      原案 さだまさし

あなたはもう 横丁の風呂屋

赤い手拭い 横丁の風呂屋

二人で行った 横丁の風呂屋

一緒に出ようね 横丁の風呂屋

いつも私が 横丁の風呂屋

洗い髪が 横丁の風呂屋

小さな石鹸 横丁の風呂屋

あなたは私の 横丁の風呂屋

冷たいね 横丁の風呂屋

若かった 横丁の風呂屋

何も 横丁の風呂屋

ただあなたの 横丁の風呂屋

怖か 横丁の風呂屋

シュプレヒコール! 

横丁の風呂屋 横丁の風呂屋

横丁の風呂屋 横丁の風呂屋

(終)


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聞き違い ~真夏日

2023-07-25 00:00:09 | ジョーク

   聞き違い

    ~真夏日

熱中症 ねえチューしよう

真夏日 生唾

警報級 軽俸給

機雷 嫌い

(終)


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漫画の思い出 萩尾望都『トーマの心臓』(6)

2023-07-23 23:58:38 | 評論

   漫画の思い出

     萩尾望都『トーマの心臓』(6)

サイフリートはユーリに何をしたことになるのか。不明。作者は読者に謎を掛けているのではない。作者自身、自分がどんなことを表現したつもりでいるのか、反省できなくなっている。

 あの残酷な、退屈な劇の最中、「彼の妹が熱を出して入院したので、家にはだれもいない」という状況だった。「熱」は産褥熱だ。「妹」は母親だ。彼女は自分自身を出産した。「家」は無名で無性の自分だ。また、「熱」は女学生言葉の〈お熱〉の暗示でもある。つまり、〈誰かに恋をすることによって女が誕生する〉という物語の暗示だ。

 「家にはだれもいなかった」というのは〈恋する少女は理性を失っていた〉という物語の暗示だ。このときのサイフリートは〈君は理性と母親を捨てろ〉と口説く色男だ。処女が彼を恐れるのは、凌辱を空想するからでなく、母親による束縛の反復を予想するからだ。サイフリートは、独占欲の強い母親が性転換した姿だ。

 エーリクが、去勢されたような養父と同居するのは、母親の死を確認するためだ。オスカーも同様だろう。彼らは母親を美化する儀式によって葬る。

 結論。『トーマの心臓』は、普通の意味で傑作ではない。しかし、冷笑的な意味では傑作かもしれない。夢のように出鱈目なのだ。出鱈目とわかって楽しむのは結構。しかし、出鱈目に深遠な意味を付与するのは誤読だ。

(終)


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漫画の思い出 萩尾望都『トーマの心臓』(5)

2023-07-23 00:05:35 | 評論

   漫画の思い出  

     萩尾望都『トーマの心臓』(5)

断乳後のユーリは、悪魔的なサイフリートに再会する。イヤイヤ期の再開。

ユーリの実家に向かうエーリクの脳裏にサイフリートの姿が浮かぶ。

「へんなやつだったな 髪の長い …なに者だったんだろう」

この台詞のあるコマには、鋳込まれたように眼鏡の顔が描かれている。それは、次のコマでユーリの祖母の顔になる。サイフリートと祖母の共通点は何か。強烈な被愛願望らしい。愛してくれる人を苦しめても愛されたいのだ。その願望はトーマのものでもあったろう。

ここで、ヒッチコックみたいに作者が登場する。もう限界ってことね。

作者はユーリの妹を演じる。彼女は病弱だ。〈男装の少女が女になりかけているが、未熟〉という隠喩だろう。

妹は洗礼を受けるキリストの絵を見ながら、エーリクとユーリの本質を暴露する。

「これがマ…」と言いかけて咳き込む。ママ? マリア? マリエ? 

作者は三人の女を区別できない。区別したら、少女読者の不評を買いそうだからだ。祖母の原型は萩尾の母親だろう。そのことを身勝手に表出して、作者に余裕が生まれる。そして、物語は徐々に通俗的になる。エーリクとマリエの婚約指輪が外れる。外したのではない。外れてしまったのだ。

男装の少女は主体的に母親と決別したのではない。少年が母親を嫌うように、まるで指輪が外れるように、ヒロインは母親の支配から逃れた。この狡い展開を見て、少女読者は〈私は無罪だ〉と錯覚して喜ぶ。誰も悪くないんだよね。

この後、オスカーは、ユーリを「おやじ」と重ねていたことを告白する。二人の関係は、同性愛ではなかったのだ。父子関係の反復でしかない。これは思い出したくない母子関係の暗示だ。

トーマの謎めいた意味不明の遺書にあるように、この作品が描いているのは「性もなく正体もわからない」誰かとの愛なのだ。その誰かは母子分離以前の母親だ。自分を客体とする無条件の愛の主体は、自分自身と区別しがたい理想の母親だ。

エーリクがトーマの母親に迎えられる。エーリクは、母親の一方的で暑苦しい愛情に耐える義務はない。だから、主体的に母性愛を穏やかに受け入れることができる。

こうして母と娘の和解の物語が終わる、少女読者の頭の中で。

『トーマの心臓』の隠蔽された主題は〈母親探し〉だろう。ただし、ヒロインが誰なのか、判然としない。だから、彼女は母親と出会っても気づかない。『傾城阿波の鳴門』のお鶴のようなものだ。

不定のヒロインと作者を区別することは難しい。彼女はマザコンだ。母親を探すのは、母親から自立の許可を得るためだ。離脱するための再会。作者は、この矛盾めいた企みを反省できず、さまよう。

目隠し鬼のようだ。あちこちから声が掛かる。鬼さん、こちら、手の鳴る方へ。処女は、仲間たちに翻弄されて遊ぶ。作者は読者に翻弄されて仕事をする。

(続)


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