回文
~嫁様
弾薬庫 作戦急くさ 子悔やんだ
(だんやくこ さくせんせくさ こくやんだ)
今年もか 農家で買うの 醸しとこ
(ことしもか のうかでかうの かもしとこ)
見ず知らず 嫁様覚めよ ずらし済み
(みずしらず よめさまさめよ ずらしずみ)
海パンか 溺死屋敷で 乾杯か
(かいばんか できしやしきで かんぱいか)
(終)
回文
~嫁様
弾薬庫 作戦急くさ 子悔やんだ
(だんやくこ さくせんせくさ こくやんだ)
今年もか 農家で買うの 醸しとこ
(ことしもか のうかでかうの かもしとこ)
見ず知らず 嫁様覚めよ ずらし済み
(みずしらず よめさまさめよ ずらしずみ)
海パンか 溺死屋敷で 乾杯か
(かいばんか できしやしきで かんぱいか)
(終)
Book revue
吉田司『宮澤賢治殺人事件』(文藝春秋)
「賢治の『雨ニモマケズ』が満州建国大学のセリヨデキンによって昭和一六年に朗読されていることは、賢治研究では無視されているんですから。この詩は満州建国の理想にされているんですよ」(関井光男)
(文庫版あとがき)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔1223 『やまなし』〕夏目漱石を読むという虚栄 1220 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔1251 二重思考〕夏目漱石を読むという虚栄 1250 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔1421 何四天王を紹介しよう〕夏目漱石を読むという虚栄 1420 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔1424 宮沢賢治〕夏目漱石を読むという虚栄 1420 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔2441 不合理な二者択一〕夏目漱石を読むという虚栄 2440 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔3432 利己主義と利他主義〕夏目漱石を読むという虚栄 3430 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔7532 『チ。』〕予定。
(終)
ウロシだった。
~ダサいおっさん
中2の頃、「芥川に幻滅した」と言うと、だったらと『人間失格』を勧められた。
読んで驚いた。嘘八百。作中人物のことではない。語り手が嘘つきなのだ。そんなことぐらい、誰だってわかろう。
「そうして自分は、この道化の一線でわずかに人間につながる事が出来たのでした」
見え見えの嘘とわかっていながら褒めるとしたら、なぜだろう。おっさんファンに「どこが面白いのか、わからない」と告白すると、返事はもらえず、蔑むような目をされた。
笑え、小人物どもよ。君らが私を笑うとき、私は君らへの憎悪を正当化できるのだ。やがて百倍返しだぞ。首を洗って待て。
と、こんなふうに解釈してみせることができなかった。だから、ウロシだった。
おっさんファンには何人か、遭遇した。『走れメロス』がいいね。おっさん愛を語る相手には、そう応じることにしていた。引き分け。しつこい奴には『ヴィヨンの妻』を挙げる。すると、なぜか大人しくなる。なぜだろう。考えたくない。
黒岩重吾だったと思うが、彼がまだ新進作家だったとき、何かの会合でおっさんに会ったそうだ。おっさんは後輩を家来にしたいからか、一方的にべらべらと利いた風なことをまくしたてた。黒岩は不愉快だったが、わざと反論せず、無表情でいた。すると、いくらKYでも空気を読んだらしく、息が切れた。待ってましたとばかり、青年はアキレス腱を突く。
で、太宰さん、あなた、いつ、死ぬんですか?
その数か月後、おっさんは死んだ。
という話を、黒岩は仏頂面で語った。どうも勝った気がしないらしい。むしろ負けたような気がするのだろう。私だったら単純に喜ぶけどね。寸鉄人を刺す。
ただし、私は太宰が自殺したとは思っていない。あれは失敗した狂言心中だ。女だけを死なせ、そのネタで稼ごうという魂胆だった。ところが、しくじった。だから、事故死だ。あるいは、真意を悟られて女に殺されたか。
おっさんファンに遭遇したら、こう言おう。
で、君、いつ死ぬの?
この挨拶が日本の習慣になるといいな。
(終)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔1243 「解釈は頭のある貴方に任せる」〕
夏目漱石を読むという虚栄 1240 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔1420 作家ファーストで何四天王〕
夏目漱石を読むという虚栄 1420 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔3251 パシリ・メロス〕
夏目漱石を読むという虚栄 3240 3250 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔4133 「家族的生活」と父権〕
夏目漱石を読むという虚栄 4130 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔7340 『トカトントン』〕予定。
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔7350 「瘤取り」〕予定。
漫画の思い出・続
杉浦日向子『風流江戸雀/吞々まんが』(筑摩書房)
川柳の絵解きだが、解かれても釈然としない人はいそうだ。
二日の夜 浪のり船に 楫の音
仲人を こよみでたたく お茶っぴい
花の雨 ねりまのあとに 干大根
母の手を 握ってこたつ 仕舞われる
笑って見 ぷんとして見る 鏡の間
れていても れぬふりをして られたがり
帰ったを 見ればほうきも 恐ろしい
(終)
モロシになりそう。
~背景画
『根の深い木』で世宗を演じた俳優が昭和の俳優に似ている。その名前を思い出せない。検索しようにも、出演作を知らない。一つだけ、テレビで水戸黄門を演じたのを覚えているが、これは今やっている『水戸黄門』のシリーズとは関係がない。
検索し過ぎると頭が悪くなると聞いたので、検索は止めて、思い出すことにした。
山城新伍のことを思い出し、連想で出てくるかと思って、ときどき、昭和の時代劇のことをだらだらと思っていた。子供の頃、時代劇はあまり観なかった。なぜなら……
……幻想の灰色の夜空に月が出た。モノクロ。最近、『生きていた信長』を観たせいか。ぼやけている。背景画のようだ。水墨画の白抜きみたいだ。三日月か。『旗本退屈男』の額の傷は違う。『眉月の誓い』も違う。月型? 月形だ!
龍之介と続くのに五秒ほど掛かった。抵抗があった。芥川のことを思い出したくないからだろう。なぜなら……
(終)
ウロシだった。
~パクッたが亜流
芥川の作品は、小学生の私にとって、童話だった。
童話を読むことを、父親が禁じていた。だから、童話の代りに『蜘蛛の糸』なんかを読んだ。やがて、作品集をもらって、『羅生門』から順に読んでいて、小説よりもエッセーが気に入るようになった。「わたしは良心を持っていない。わたしの持っているのは神経ばかりである」(『侏儒の言葉』「わたし」)なんて、アフォリズムならぬ、阿呆リズムに痺れた。
ところが、作品集が『ある旧友へ送る手記』で終わっていたので驚いた。本当に自殺したのか? 信じられない。『侏儒の言葉』などのあの強がりは無効だったのか……
この世では文豪でさえ生きられないのか。だったら、自分なんか……
それから、日本の純文学なるものが嫌いになった。気障なばかりで頼りにならない。
自殺を夢見るようになった。青年の私にとって自殺の夢だけが生きる支えだった。
二十歳を過ぎてすぐ、読み返した。買い被ろうと頑張って、疲れた。
ある日、玄関脇に灰色の塊があるのに気づいた。何だろう?
ああ。ごみか……
そこには古雑誌などを置いている。だが、それは岩波書店の芥川全集だった。かさばるばかりで置き場に困って、そこに置いたのだ。そのことを忘れていた。忘れたかったのかもしれない。薄々わかっているから、ごみだと思ったのだろう。ちゃんと思い出してから、また、言葉にして思った。
やっぱり、ごみだ。
(終)
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔1421 何四天王を紹介しよう〕