Book revue
グレッグ・ブライト『グレッグ・ブライトの迷路の本』(TBS出版会)
〈迷ったら自分を上から見るといい〉というようなことを香山リカが言った。〈どうやって?〉と尋ねられると、両手を軽く上げ、うっとりした顔をして顎を上げた。自分の窮状を高みの見物か。幽体離脱? とにかく、かなり危ない人だった。
人生という迷路は『CUBE』のようなものだ。立体だから鳥瞰図は描けない。通った所が後から変化する。蜘蛛の糸は切れる。時間も関係がある。のろのろしているとドアが閉まる。先は到底読めない。〔1420 作家ファーストで何四天王〕参照。夏目漱石を読むという虚栄 1420 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
〈地球儀を俯瞰する〉と言った人は殺された。地球儀の上に暗殺者は住んでいなかったのだろう。
5. デッサンを追いかけていくと、自分の肉体が迷路のなかにいるかのような感情がわいてきたりする。そんなとき、わたしは、子どものときに遊んだ迷路の手ざわりや形を思いだす。
(本書p20)
5番を解いていて、私は次第にこの迷路に似た遊園地に行ったことがあるような気になった。そして、涙ぐんだ。ここ、というか、そこから出たくないとさえ思った。コンピューター・ゲームがなかった頃だ。
香山は『原発危機と「東大話法」 傍観者の論理 欺瞞の言語』(安冨歩)で徹底的に批判された。最近、彼女は見た目も口調も大人しくなった。この本を読んで反省したか。
〔1322 「立場」〕夏目漱石を読むという虚栄 1320 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)参照。
(終)