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「こころ批判」と『夏目漱石を読むという虚栄』予告」を纏めました。
goto ミットソン〈夏目漱石批判予告2種〉Microsoft Word - 1óy$‹J2..docx (wakwak.com)
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腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
28 受話器
久しぶりに夢を見た。
……飛ぶ夢。
でも、前のとは違う。前は飛ぶのが怖かった。夜更けの、あるいは夜明け前の、あの夢は怖くなかった。浮かぶようで、滑るようで、流れるようで、ほどけるようで、漂い、揺らめき、捧げ、溶けるようで、届けるようで……
嘘。
譬えは嘘。いつだって、そう。
飛ぶ夢なんか見なかった。飛ぼうとしたら電話のベルが鳴った。電話は夢じゃなくて受話器の感触は本物。
話を聞きながら眠り込んだ。何の話だったか、思い出せない。相手が誰だったか、思い出せない。
じゃあ、あれは夢?
じゃあ、何、今、握っている、これは? 肘掛け? 靴? 幼い頃、斜面を下りるときに縋った、あの撓う横枝? 杖? もしかして、ピストル?
軽くなりたい。薄くなりたい。消えてしまいたい。
眠りたい、夢など見ずに、光に花が運ばれるように。
(終)