萌芽落花ノート
48 詩の死
釣れるのは 腐乱の深海魚
水色の瞳
折れた牙
いつからか
街路は 点ではない
人間は 線ではない
卑猥は 面でも
詩心は 立体ではない
小火はあったさ
流し目もあったよ
ちょっとした酒盛りがあって
ちょっとした腹切りがあって
ちょっとした聖者の行進もあった
主婦たちが自転車を漕いで走る
必死の形相
急がねば
急がねば
死んでしまう
死んでしまう
魚屋に並ぶのは 死んだ深海魚ばかり
煮るのかね
焼くのかね
まさか生で
いらっしゃい
へえ
売りきれましたよ
生きた詩は
(48終)