萌芽落花ノート
53 あなたが欲しい
見世物小屋の看板娘が
眠れぬ夜を痛みのように思いだす
そのままに
世界と
あなたが欲しい
(53終)
萌芽落花ノート
53 あなたが欲しい
見世物小屋の看板娘が
眠れぬ夜を痛みのように思いだす
そのままに
世界と
あなたが欲しい
(53終)
萌芽落花ノート
52 生臭い
転落
目立ちたくない
放水
御冗談を
淫欲
あるいは
傷害保険
爽やかに生きて
瞑目
そぞろ
羨ませながら
そぞろ
羨みながら
生臭い
食中毒とか
その他いろいろ
(52終)
萌芽落花ノート
51 訛りの洪水
綿飴が溶けかかる路上
だらだら
訛りの洪水
笑うと歯茎が見える
そろそろ
金のありがたみがわかってきて
ぞろぞろ
寄せては返す
羨みながら
羨ませながら
準備中の
匂いだけ漏らして
(終)
萌芽落花ノート
50 自嘲
銀の栞の他に
君を見出す術があろうか
夕暮れに盲いて蹲る家禽を抱く他に
私を許す術があろうか
(終)
萌芽落花ノート
49 無限包容
かつて暗闇に迷う者がいたとでも言うのだろうか
一杯の白湯を冷ますようにして君の息吹は証した
証明不能を
足のない少女を片方の肩に載せて君は笑ったではないか
素戔嗚よ
君は知っているね あの伝説を
二度と振り返ってはならぬとか
同じ道を往還して三度目に竦めとか
影のような汚泥を渡れとか
ただひたすらにぐるぐると舞い廻れとか
君は子孫だから
愛に呪われている
愛が一つの果実ならば
それは奇妙な果実だ
笑みを張り付けた愚者の
顔に掛かる髪一筋に
ぶら下がる果実だ
漆黒の
(終)