「ゆるしてあげる」という高いレベルの心

昨日、私は「東京都教職員研修センター」で1日研修を受けていました。特別支援教育や教職員の服務について、くわしく学んできました。2007年問題以来、東京都研修センターが本気で「これからの時代を担う教員」を育てようとしていることは、水道橋にある研修施設に行くたびに感じることです。こうした「人材育成」の活動に、私も微力ながら参加させていただきたいと思い、教室で頑張っている子どもたちには申し訳ないのですが、勉強に行かせていただいています。


さて、学級の保護者の皆様からは、「良いことばかりではなく、悪いことも伝えて下さいね。」という言葉もいただいています。そこで、ちょっとだけお伝えしたいと思います。

昨日の子どもたちは、私がいない分、本当に一生懸命自分たちのことをしていたようです。この子たちが昨年、授業中に教室からフラフラ出てしまっていたことや、大人の言うことを聞かずにわがまま放題だった。そのことを一番知っている学校の先生たち。その先生たちが、
「子どもだけの力で何でも進めて、一生懸命に勉強している姿を見て、心の底から笑顔になれた。」
と言うほど、とっても頑張っていたようです。

その理由は、前日に私から与えられた課題によるところが大きいのです。

(1)全員が1日中、笑顔ですごすこと。
(2)一人も怒らないこと。
(3)来て下さった先生全員にほめられること。

この3点を目標にしていたのです。きっと子どもたちは「井上先生にほめられたい!」という強い気持ちで、頑張っちゃったのでしょう。

午後、昼休み明けの5時間目、授業開始3分前の予鈴。そして3分後には、27人中25人が席について授業の準備完了。しかし、事情により2人が遅れてしまいました。子どもたちは、その2人を「どうして遅れたのか?!」と責めてしまった(怒ってしまった)ようです。その言い方が強すぎたようで、遅れた2人は「そんな言い方ないだろう!」と“怒ってしまった”ようです。

(2)に目標とした「一人も怒らないこと」というのは、こうしたトラブルを未然に防ぐために示したものだったのですが、ストッパーとしての機能が弱かったのですね。トラブルになってしまいました。


今朝、私が教室に行くと、何といえない子どもたちの神妙な空気が教室に漂っていました。何人もの目が私の行動をじ~っと観察していました。補教に入ってくださった先生たちからの報告ですべてを知っていた私は、そんなふうに神妙にしている子どもたちの姿が愛おしくてなりませんでした。私の不在というプレッシャーの中、みんなそこまで頑張っていたんだなとビシビシ伝わってきました。何としても励ましてあげなくてはならないと思いました。

「昨日のことは先生たちから全部聞いているよ。2人が5時間目に遅れてしまったことを、みんなで責めちゃったんだね。そして○○さん、何もそこまでしなくてもいいんじゃないかと、君も怒ったんだよね。」

(○○さん、うなずく)

「問題が起こったら解決しればいいんだよ。問題というのは解決して、それまで以上に良くなるためにあるんだから。今回のことで覚えておいてほしいのはね、この言葉です。」

と言い、黒板に書く。

『ゆるしてあげる』

「怒ってしまうことは、大人でもあります。ケンカしてしまうこと、これも大人でもあります。でも、そんな時に、『ゆるしてあげる』という気持ちを持つことが、すごく大事なんだよ。誰でも失敗するんだ。100点ばっかりを取り続けてはいけないんだよ。ほら、東京大学に進むためのマンガで『ドラゴン桜』ってあるじゃん。東京大学に入るために100点を取ろうとしてはダメなんだよ。70点でいいんだって。みんながやっていることも同じで、行動を100点にしなくてもいいんだ。30点くらい失敗してもいいんだよ。その失敗をゆるしてあげられる心を持つことが大事なんだよ。自分の失敗もゆるしてあげるし、友だちの失敗もゆるしてあげられるような人になっていいんだ。」

「『ゆるしてあげる』という心がないと、人間は戦争になるんだよ。『あの国が攻めてきた、ゆるせない!』って反撃する。するとまた『ゆるせない!』と反撃する。そのくり返しが戦争でしょ。そんなことを人類は2010年間のうち、1900年くらい続けているんだよ。」

「このクラスではね、失敗したり間違えたりすることを『ゆるしてあげる』、そんな優しさを身につけていこうね。○○さん、どうかな? みんなのことをゆるしてあげられるかな?」

○○さん、笑顔でうなずく。

「みんなも○○さんのことを許せるよね。」

みんなも笑顔を返してくれる。




巻き起こった問題に対して、教師がプラス方向に解釈して、子どもたちを腑に落としてあげる。こうした指導を日々くり返していくことで、すこ~しずつ、すこ~しずつ、子どもたちは大人になっていくものなのです。
コメント ( 2 ) | Trackback (  )
« 今年の24時間... これからの教... »
 
コメント
 
 
 
許してあげる (OOYAMA)
2010-06-05 17:24:27
 イノッチ先生のブログを今朝拝見して、子供たちとの練習に出かけました。
 いつもやっている事なのですが、今日も意地悪なサーブ練習を行わせました。チームで連続36本成功させる。簡単なルールでも、一人が失敗したら、全員コートを5周走らせる事にしています。
 一度失敗すると、精神的苦痛から、2度3度と失敗を繰り返して、チームのみんなに迷惑をかけてしまい、益々精神的に追いつめられます。全く意地悪な練習です。
 今日もコート100周走っても成功しませんでした。
 一人で10本連続20本連続サーブを成功させられる力を持っている子供達なんですけどね~、先発メンバーで36本連続、単純計算で一人5本の連続サーブ…それが出来ない。

 でも、今日の、その精神的意地悪練習の時、嬉しい光景を見ることが出来ました。 
 イノッチ先生の「ゆるしてあげる心」偶然それを私のチームの子供達に見ることが出来て、恥ずかしながら、練習中目頭が熱くなりました。
 サーブを失敗した子が、コートを走りながら、メンバー一人一人に近寄っては、「ごめんね」と私に気付かれないように伝えていました。何気なく見ていたのですが、また一人のミスで走る、また一人のミスで走る。
 走りながらメンバーに近づいて「ごめんね」と言われた6年生が笑顔でコクリと頭を動かした時私の涙が溢れました。100周近く走っている子供達なんですよ。
 許してあげる心、大事だと思います。その心が、私の心にもちゃんと響きました。
 イノッチ先生の言われるとおり、この心は、レベルの高い心なんでしょうね。
 
 
 
メンタルトレーニング (イノッチ1000世)
2010-06-06 06:41:36
私のチームでも連続サーブはよくやりますが、プレッシャーからミスが出ますね。そういうメンタル面から考えても、ただサーブを打っている練習よりベターな練習なのでしょうね。

「許す」という心は、ひとつの壁を超えないと到達できないと思います。精神面の幼い子は、友だちの失敗を許せないで、いつまでも怒っていることが多いです。
幼児が自分の思い通りにいかなくて、いつまでも泣いている姿と、「許せない」でいる状態は似ているような気がします。
 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。