「勘竹庵」evnc_chckの音楽やそれ以外

音楽の話題が中心になるかもしれませんが日々の雑感など書いていけたらと思っています。

超絶だけど・・・なバンド「てつ100%」

2009-08-14 00:09:56 | 音楽(全般)
昔々のこと、1986年ですからもう20年以上も前の話です。

当時、ジャズ、フュージョン一辺倒であった私ですが、世は「洋楽」ブームの真っ只中。ロックやポップスなどの軽音楽の世界では、音楽をPRするためにその曲の演奏者(つまりバンドですな)のライブ映像などを、一緒にTVで放映することが一般的になりつつありました。今で言う「PV(プロモーション・ヴィデオ)」の黎明期です。
もちろんPV自体はもっと以前から存在はしていたのでしょうが、このメディアがTV番組のコンテンツとして成立し、1983年に制作された故マイケル・ジャクソンの「スリラー」のように、単独で商売となり得たのはまさにこの時代のことです。
深夜枠でありながら小林克也さんが司会をされていた「Best Hit in U.S.A」や、日本語版の「MTV」に私の友人たちは釘付けになって見入っていたものです。

そんな状況なので日本のバンドも新曲が出れば、シングルカットされた曲などには簡単なPVが作られ、ローカル局の深夜の天気予報のバックなんかで流されていました(笑。

ある夜のことでした。基本、放任主義で育った私は、深夜にも関わらず友人の家で、数人の仲間とだらだらとスナック菓子を食べながらTVを見ておりました。
突然、TVに「唄う天気予報」とテロップが入り、どこかのバンドのPVに地元の明日の天気が白抜きの文字で重なって放映され始めました。
PVはそのバンドの演奏を何のひねりも無くただ写しただけ。背景はどこかの倉庫みたいなガランとした場所で、全体をモノトーンぽく画質処理して、ダランとしたコートをはおったリーゼントにグラサンのボーカルを中心に、ギター、アコピ、ウッベ、ドラムスが周りを囲み、ときどき各プレイヤーを大写しにしたり、なんか勘違いした芸術映画のようにグルグル回ってみたりする。どうやらこのバンドのデビュー・シングルのPVらしいです。

バンドの名前は「てつ100%」。流れていた曲のタイトルは「TOKYO TACO BLUES」でした。

前述の編成で演奏されるアコースティックなブルースをバックに、このリーゼントのあんちゃん風のボーカルが歌う歌詞は、

ヘイ!彼女 一緒にお茶の水、イヤヨ!あんたきっと何か信濃町、ノーノー 俺は何も千駄ヶ谷・・・。

何事かと画面に視線と耳が固定された我々グダグダメンバー。次の瞬間、このおっさんか小学生の思考からわいて出たような駄洒落の連続に、思わず我々は爆笑してしまいました。

腹を抱え、ヒーヒーと笑う友人たちと一緒になって笑う私は、しかし、そのバックで演奏するメンバーのテクニックにすっかり耳を奪われていました。

しぶくまっすぐなラインを引き続けるベース(普段はどうかわかりませんでしたが、この曲ではウッドベースでした)。

エルヴィン・ジョーンズかトニー・ウィリアムスを思わせる、スピーディーでテクニカルなドラムス。

鋭い音色で絶妙なフィルを入れるピアノ(若いおねえちゃんでした)。

しかしカネの無いガキんちょの私には彼らのアルバムを買い揃える余裕が無く、ましてジャズのライブを聴きに行くのが精一杯な中、「てつ100%」のライブに行くこともできず、彼らの曲を聴く機会はありませんでした。

結局、彼らのアルバムを入手する機会はそれから5、6年後のこと。中古CDが山積みになったワゴン・セールの中に「てつ100%(1987年3月5日リリース)」、「あと3cm(1987年11月1日リリース)」、「Jack In the Box(1988年9月1日リリース)」の3枚が、雑然と置かれているのを発見した時でした。

「てつ100%」は1989年にすでに解散しておりました。

あの時TVでオンエアされた変なブルースは収録されていませんでしたが、他の曲も

・キング・コンブ(よくわからないけど、地中海に生存するらしい「でかい昆布」のことを爽やかなラテンのリズムで唄う・・・くだらない・・・)
・はじめての外泊(読んでのとおり女の子が初めてお泊りする歌だけど、何か気恥ずかしい上に何故か聞いていてむかつく・・・勝手にしろ!と毒づいてしまう)
・エレベーターにのって(タイトなシャッフルに乗せて、ずっと「エレベーターにのって」と唄うだけの歌・・・どう反応したらいいのか?)
・マンガ姫(今じゃ珍しくも無いマンガオタクの女の子の歌だけど、何故か現在の腐女子よりもっと共感できない・・・不思議だ)
・いとしの森鴎外(森鴎外に恋する「マンガ姫」とは対極の女の子の歌だけど、こんな女いねぇよ!と激しく突っ込みたくなる・・・不思議だ)

などなど。どれもタイトルを聞いただけで吹き出すかあきれる曲ばかり。
しかしアレンジはブルージーな物やソウルフルな物が多く、パフォーマンスも相変わらずバックメンバーのうまいこと、うまいこと・・・。

ただ、どこかウェットなノリやマイナー系の曲調が多く、歌詞も基本的に下ネタが多い(特に女性が引きそうな・・・)せいか、あまり人気も出ないまま解散したようです。
メンバーの服装とかも、その辺をぶらついてそのまま現れたようなカジュアルにもほどがあるもので、「こりゃ華が無いわ・・・」と思わずつぶやいてしまいます。

もう少しノリが良くて、例え下ネタであっても明るい曲が多ければ、女性ファンが付いて爆風スランプくらいにはいけたかもしれないのですが・・・。コンセプト似てるしね。

メンバーのその後ですが、実は私にはよくわかりません。ネットで調べるとリーダーでボーカルの杉原徹さんは、ラジオのDJとかCMのナレーションなどもこなしながら、今も歌手を続けられているそうです。

そしてキーボード担当の菅野よう子さんは、ご存知の方も多いでしょうがTV版の攻殻機動隊や、ゲームの信長の野望の音楽を担当されている売れっ子作・編曲家です。


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2 コメント

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知ってます (MiKiTa)
2009-08-14 10:02:50
おはようございます。
「てつ100%」知っていますよ^^。

その昔、YAMAHAの同じコンテストに出ていた記憶があります。
その時は、ロカビリーのようなスタイルだったと思います。
その後、うちのバンドのギター弾きがプロになって、事務所の関係で「てつ100%のてつさんと一緒に仕事してんだ・・・」なんて話を聴いた記憶があります。
あまり詳しい話は聴かなかったですけど・・・。

私も冗談音楽を結構真面目に聴く方なのですが、そのコンテストでも冗談やりながらメチャクチャ上手かったので、印象深く覚えています^^。

それにしても、教授は知識が広い!。
いつもながらビックりです^^。
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おお!食いついた方が (evnc_chck)
2009-08-14 12:14:23
MiKiTaさん、いらっしゃい。

さすがMiKiTaさん!よくご存知ですね。こんな古いバンドのことどなたもご存知無いと思ってました。
元々はロカビリーだったんですか?それは知りませんでした。しかし冗談音楽を演奏される方々は、基本テクはすごいですよね。
関西の冗談音楽バンド「かねてつおかげさまブラザース」でベース担当されてた方を存じてますが、普段はめちゃくちゃハードなフュージョンをしていましたよ。

しかしMiKiTaさんもコンテストに出られたり、私なんぞよりうんと深い音楽活動をされてこられていますよね。私なんか頭でっかちなだけですから・・・。
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