耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

“原発”はこのままでいいのか…

2007-07-24 14:09:06 | Weblog
 7月20日の記事でふれたが、柏崎刈羽原発には一般に知られていないきわめて重大な問題が隠されているようだ。まず、『JANJANインターネット新聞』のご了解を得たので次のリンクを見てほしい。(とくに武本和幸さんのインタビュー映像をご覧下さい)

 http://www.news.janjan.jp/world/0707/0707200426/1.php

 「原発反対刈羽村を守る会」の武本さんたちは、1974年から直下型地震の懸念を指摘し原子力発電所立地に不適と主張、原発の建設に反対してきた。この間、運転差し止めを求めて訴訟を起こし、地裁、高裁は東電・国の主張を認め訴えを却下、現在最高裁で争っているという。

 私は、この「JANJANニュース}ではじめて知ったが、マス・メディアが報じないから多分、多くの皆さんはご存じないのではないかと思われる。この訴訟にかかわっている伊東良徳弁護士が22日、社民党調査団の一員として現場を視察、その模様を自分のサイトで紹介している。

 http://www.shomin-law.com/katudoukashiwazakichuetsuoki.html

 これらの記事を読んで、1978年、私が在職した造船所で起きた重大事故を想い起こす。このことにふれて『長崎新聞・読者欄』に投書したメモが残っている。

 <【監督行政はこれでいいのか】
 
 去る11日佐世保重工で船火事があり、2人死亡、1人重体の惨事が起きた。痛ましいことだ。
 造船不況のなかで経営危機に見舞われた佐世保重工は、昨年(1978)6月坪内新社長を迎え再建に踏み出し、例の「坪内イズム」で徹底した合理化を進めてきた。…
 従業員である私は、昨年10月、労働時間などに関し労働基準法違反の疑いがあるとして、佐世保労働基準監督署に是正を申告したが、その折、監督署に対し労働時間の延長ならびに労働密度の高まりは必然的に災害多発を招き、このままではそのうち重大災害が発生しかねない旨、指摘していた。しかし、監督署はなんら具体的な動きはとらなかった。そして今回の災害である。…>(新聞記事切り抜きが所在不明で事故日が確認できない)

 私が監督署に「是正申告」をしたのは、労働組合に申し入れても相手にされなかったためである。職場の問題は「労働者の働く権利」を守る労働組合が解決するのが当然の責務だが、「労使協調」一辺倒の当時の民社党・同盟系の組合は、労働組合としての任務を果すのではなく、事実上会社の「第二労務部」だったため、会社にとって不都合なことはとり上げようとしなかった。やむをえず監督署へ「告発」したのだが、監督署も耳を傾けず、結局、尊い人命が失われる結果を生んだ。

 本ブログでは何度か取り上げたが、刈羽原発が直面する危機的状況も、一義的には「社会正義」を担うべき労働組合の問題で、武本さんたちの懸念にはいっさい耳を傾けず、会社の言いなりになってきた労働組合の責任がまずは問われなければならないだろう。東電の組合も旧民社党・同盟系で、現在は「民主党・連合」右派と見られているが、いま話題の“ワーキングプアー”に代表される「労働弱者」を大量派生させたのは、「労使運命共同体」路線を堅持する彼らにほかならない。労働組合の指導者が「労使対等」原則にのっとり、「社会正義」に反する企業行動をつねにチェックしていたら、今日の事態はもっと変わっていたはずである。

 現在、参議院選挙終盤で迂闊なことは言えないが、少なくとも東電労組は、災害による現場検証に会社が進んで協力するよう労使協議会を開催し申し入れるべきだろう。それも出来ないようなら、上部組織の「連合」がしかるべき措置を講じるのが筋である。それも不可能なら民主党が表に立って「社会正義」を貫かねばならない。ことは東電労組組合員の生命だけでなく、周辺住民はおろか国民全体の生命・財産にかかわることなのだ。

 監督官庁の責任も重大だが、武本和幸さんらの訴えを却下した企業・国にべったりの地裁・高裁の裁判官は今回の震災被災をどう受け止めているだろうか。最高裁はこの事実から目を逸らせるわけにはいくまい。

 震災に遭いながら、真実を追究し続ける武本和幸さんに心から敬意を表したい。