囲碁の第28期竜星戦本戦トーナメント準決勝、許家元八段(21)上野愛咲美女流棋聖(17)戦が14日、CS番組で生中継された。

上野は256手までで白番中押し勝ち女流棋士として、棋士全員に参加資格がある棋戦で初の決勝進出を果たした。序盤から強気に踏み込んでいった。中盤、粘る許を振り切り、積極的な打ち回しで圧倒した。「運が良かった。序盤が苦手で、互角の進行になったのが良かった」と振り返る。

黒番(先手)の許は昨年、碁聖を井山裕太から奪い、井山の7冠全制覇を崩しているトップ棋士。練習碁でも勝たせてもらってないが、肝心の対局で白星をもぎ取った。

決勝進出に師匠の藤澤一就(かずなり)八段は「まさか勝つとは」と驚いた様子。「上野はボクシングでいえばパンチを出しながら前へ前へと出て行くファイター型。上野のパンチが空振ったところでリードを広げていく許さんは苦手なタイプ。上野がうまく打てたのでしょう」と分析した。

囲碁界では、年齢や段位などで参加資格が限られる「若手限定戦」では、97年には新人王戦決勝3番勝負で青木喜久代七段が山田規三生七段に連敗し、準優勝06年の広島アルミ杯若鯉戦(一発勝負)では、謝依旻三段が李沂修二段(段位はいずれも当時)を下し、女流棋士として初めて、男性棋士との合同棋戦で優勝しているだけだ。

決勝戦(23日生放送)の相手は、16日に行われる一力遼竜星対鈴木伸二七段の勝者。「夢のようです。早く終わらないよう頑張りたい」と無欲で戦う。【赤塚辰浩】

17歳の上野愛咲美、囲碁一般棋戦で女性初の決勝進出
朝日新聞 2019年9月14日22時28分

 囲碁の上野愛咲美(あさみ)女流棋聖(17)が14日、早碁棋戦「第28期竜星戦」(囲碁・将棋チャンネル主催)の準決勝で前碁聖の許家元(きょかげん)八段(21)に白番中押し勝ちし、決勝進出を決めた。年齢や性別を問わない一般棋戦で女性棋士が決勝を戦うのは初めて。

 上野は本戦を勝ち抜き、16人による決勝トーナメントに進出。1回戦から準決勝まで、元名人の高尾紳路九段、現役の七大タイトル保持者の村川大介十段、許八段と、トップ棋士を続けて倒しての快挙となった。

 終局後、報道陣に囲まれた上野は「夢のようです」と語った。一般棋戦で女性初の決勝進出に、「こんなに上にいけることはないと思うので、このチャンスを大事にして頑張りたい」と話した。

 敗れた許八段は女性の決勝進出について、「AIが出てきてから棋力の差がつきにくくなった。不思議ではない」と話した。

 女性棋士は国内棋士481人のうち96人。一般棋戦で苦戦を強いられてきた。過去の最高位は8強で、NHK杯で2011年に謝依旻(しぇいいみん)六段、12年に向井千瑛(むかいちあき)五段、竜星戦で18年に藤沢里菜女流四冠が達成した。

 竜星戦は1手30秒未満で打つ早碁。上野は早碁を得意とし、女流タイトルで保持する女流棋聖も早碁だ。決勝を制して優勝すれば、現在の二段から七段に飛びつき昇段する。決勝は23日。一力遼八段―鈴木伸二七段戦の勝者と打つ。

 上野は16年にプロ入り。鋭い読みで相手の石を捕殺する「力碁(ちからご)」を身上とし、18年から女流棋聖を連覇し、10月開幕の女流本因坊戦への挑戦も決めている。(大出公二)

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一力八段でも、鈴木七段でも、いま伸び盛りの若手強豪。上野二段にとって、不足はありません。がんがん戦ってくれればと望みます。そのうえで、勝ってくれたら、囲碁の歴史が変わるというもの。女性棋士の活躍を応援するへっぽこ囲碁ファンとしては、上野二段の優勝を強く望みます。