JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「野獣死すべし(1959)」

2008-02-27 | 映画(DVD)
「原作 大藪春彦 ハードボイルドワールド -砂塵と硝煙の果てに」より

「野獣死すべし」1959年 東宝 監督:須川栄ニ

伊達邦彦(仲代達也)は大学院の学生。ハードボイルド文学の杉村教授のアルバイトをする傍ら、論文をアメリカのある財団の主催するコンクールに出して留学の機会をねらっていた。秀才、勤勉、誠実というのがもっぱらの評判だ。サッカーで鍛えた強靭な体、巧みな射撃術、冷徹無比な頭脳。その彼に完全犯罪の夢がくすぶり始めていた・・・

村川透の松田優作版「野獣死すべし」は結構好きな映画で公開時の劇場、テレビ、ビデオ等で何度となく観ている。
公開されるかなり前に原作は読んでいた。原作とは大きく離れた作品のように思ったし、イメージしている伊達邦彦と違っていたけれど、その松田優作の役作りに一遍で参ってしまったものだ。それまで松田優作ってあまり好きじゃなかった。
その松田版公開当時から、すーっと観たかったのが、この仲代達也の「野獣死すべし」

大藪作品の中でも「野獣死すべし」は他の作品と一線を画すデビュー作だ。日本に於いてハードボイルドをブンガクにまで昇華した傑作。当時大藪春彦24歳の早大生。
この映画も20代の若き才能が結集して作られた物という。

時代が新しい犯罪を生み出す。強いものが生き残る野獣でなければ生きて行けない。雰囲気とか情緒が大嫌いな非情の男、伊達邦彦。
彼の論説と皮膚感覚で同じ考えを持つ新米刑事、真杉(小泉博)の関係。
高度成長を担う若者たちの時代到来を感じさせながも若者たちの閉塞感。
非情なる凶悪殺人の温床となる社会、将来の不安・・・

やはり原作同様、他のハードボイルド映画とは一線を画す傑作ですね。
また、若者の中に入ってベテラン刑事の東野栄次郎が貴重な役割。

伊達邦彦役の仲代達也は独特の演技(クサイとも言える)で非情なキャラを上手く表現している。

シーンとして、まずオープニングの岡田刑事殺害シーン。
死体がトランクに詰め込まれる際、子供にねだられたお土産、ロビー・ロボット人形が手から落ちる。全速力で走り去った車のあと、何かの拍子で自然と歩き始めるロビー・ロボットをバックにタイトル・イン。小道具使いがカッコ良い。

関東大学会計課での課員の会話。
杉村ゼミでのアメリカ文学と現代社会論。

バー・ロリータでの伊達と真杉刑事の出会い。
花売りお婆ちゃんの歌と踊り・・・「星は何でも知っている・・・」

このバーのシーンで一瞬の輝きを放ってくれるのは、嗚呼、若林映子様。

ラスト、パン・アメリカンのプロペラ機で海外留学と逃げ切った伊達。空港で落胆する新旧の刑事は伊達が殺害しなかった情婦(団令子)を発見、尾行を開始するところで終わるのも良かった。

原作一つなので当たり前だが、この延長線上に村川透の松田優作版はある。

また松田優作版「野獣死すべし」が観たくなる。
そして、原作「野獣死すべし」も読みなおす一冊に加えたくなるのでした。

シネマアートン下北沢

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