室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

新宿トラッド・ジャズフェス~2~

2009-11-17 10:44:20 | Weblog
新宿三丁目界隈を昼間っからドンジャカ騒がす《新宿トラッド・ジャズ・フェスティバル》2日目は、素晴らしい秋晴れの一日となりました。 日向は眩しく、汗ばむほどで、空は抜けるような青さで、狭い路地で鍋をつつきながら一杯やってる方達のお顔も、光り輝いていました。

本部で登録をして、受け取ったお弁当を持って、T‘s BAR へ行き、少しだけ清水万紀夫、阿部寛、小林真人トリオを聴きました。(2日前のミントンハウスのメンバー)+若手トランペットの宮田さんがかしこまって入り、その前でベテランの雰囲気の女性ボーカルの方が堂々と歌っていらっしゃいました。あんな風に歌えたら、私も歌ってみたい・・、なんて一瞬思ったけど、自分の出番に備えて、三丁目へとんぼ返り。


この日は、いつも応援して下さるアマチュア・バンドネオンの宮崎さんが来て下さり、荷物を持って下さりました。


1時から“家路”で田部フレンズ。トランペット、テナーサックス、ギター、ベース、ドラムにピアノの6人ですから、かなり苦しいスペース。1曲終えてから、田部さんは座り位置を変えて、ピアノから遠くへ。

この日は、私の尊敬する友人でジェリー・ロール・モートン研究家のBob Greene のオハコ(つまりジェリー・ロール・モートンのオハコ)風《タイガー・ラグ”》をやらせて頂きました。この曲は、チューバなどで虎の咆哮をブホ~ッとやるのですが、それを、ピアノでは左の肘でエルボー・スマッシュ!・・というほどではないけれど、グシャーッとクラッシュ音を出します。長袖じゃないと、痛いです。 なんとか、温かいお客様の声援に支えられて田部フレンズは終わりました。

続けて、2時からG‘s BAR でタンゴのアストロノーツです。
行くと譜面台が1本しかないので、本部へ借りに走りました。 が、本部ではなかなか出てくる気配がなく、その場にいた加藤亜依さんにお借りして、 また走って、途中ちょっと銅鑼に寄って、 トイレを借りて、また走ってG‘s BAR に戻りました。 もうバタバタです。

戻ってみると、すでにお客さんがあふれていました。
「ドラムセットのハイハット・シンバルがお尻に刺さる」とベースの大熊くんが言うので、ネジをまわしてシンバルを外し、タムの上に置かせてもらって、ピアノ椅子にすわってみると、左肘のところに冷蔵庫(?)が置いてあり、それを隠すヨシズがかぶせてあるんだけど、それが肘に触るのです。なんとか1センチくらい左にずらしてみましたが、冷蔵庫らしき物体が邪魔で、最低音域の方へ手をのばすのが、かなり苦しい状況でした。

超バタバタしたけど、なんとかスタート。皆さん、とても熱心に聴いて下さいました。
バンドネオンの池田くんも、いつもやらないピアソラの立ち弾きをやってみせたり、ノッていました。大熊くんも、あいかわらず苦しい状況下でしたが、熱演していました。

こういう特殊条件の、こういう距離感ゆえのバカ受け。得難い経験です。いつものように曲の説明を長くするより、「1曲でも多く聴きたい」という雰囲気にお応えして、どんどん演奏しました、ヨシズに擦られながら・・。


何だかよく分からない興奮を抱いて、また前日と同じHUBへ行き、宮崎さんとクールダウン。
じきに最後のワクの時間が近づいて、再びG‘s BARへ。

写真は最後のプログラム、清水万紀夫、小林淑郎の2大巨匠によるクラリネット・バトル・・ってことはないんですが、さっきと同じ、狭い場所でぎゅうぎゅうのお客さんに囲まれた状況の“闘う男達”です。(客席の方も密かなバトルと連帯感と入り交じったものがあったんですけどね)

ベースの小林真人さんは、楽器カバーの置き場所がなかったとみえてピアノに押しつけ、落ちないようにお尻で押さえながらの演奏。ギターの阿部寛さんは、2大巨匠に何をやらせたら面白いか、次のことを考えながらの演奏。ドラムの志賀裕さんは、あまり馴染みのないメンバーに入れられた状況と闘いながらの演奏。それぞれの“闘い”を観戦して楽しみました。

演奏の内容も、この2大巨匠は、持ち味が全く違うので、一瞬にして別世界を往復させられるのが大変おもしろかったです。
竹やぶの中に独自のサウンド世界を確立している小林淑郎さん。シナトラのバックも務めた百戦錬磨、プロ中のプロ、清水万紀夫さん。しょう油とソースのように、ハッキリとした別の世界をお持ちでいて、お互いを聴き合い、今までに存在しなかった音空間が創られていました。

こんな組み合わせを思いついたのは永谷大将のお手柄だなー、と思ったほどのセッションでした。

終わると、それぞれ一日の、いや二日間の余韻を抱いて、あーでもない、こーでもない、あーだった、こーだった、こんな事があった・・と喋りたいもので、自然と“打ち上げ”になります。

主役のお一人、清水万紀夫を囲んで、「オモシロかったー」とワイワイやって、祭りのあとの夜は更けました。

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