室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

フルイケヤ・・

2006-07-06 11:58:31 | Weblog
先週、カナダ人の作家、作曲家、パフォーマーのゲイリー・バーウィン氏の「朗読とお話の夕べ」がカナダ大使館で行われ、見に行った。
 大使館内などには普通、簡単に入れるものではないから、物見遊山で行った。この作家は、芭蕉の有名な「古池や かわず飛び込む 水の音」の句からインスパイアされて自分なりの表現をしたという本を出版しており、それにまつわる解説の夕べという事だった。「古池や~」は百種類ほども英語に翻訳されて、様々な解釈があるそうだが、15cm角のその本に載っていた最もポピュラーな訳は"The old pond; A frog jumps in -- The sound of water."で、ゲイリー氏もここから"frog""pond""plop"等の単語を抜き出し、言葉遊びを展開している。
 しか~し、結論から言えば、俳句の翻訳は無意味であ~る 私たちが芭蕉の句から鑑賞しているものは”水の音”ではな~い ポチャリッと聞こえる音から水面の波紋、水面下、また周りにありそうな草木など、様々な見えるモノ、聞こえるモノを想像し、古池の時空間を愛でているのだ。一緒に行った友人がゲイリー氏に質問をした。「古池や・・の”や”は、どう解釈されるのですか?」氏の答えは「それが外国語翻訳の困難な点ですが、まあ”スペース”ですね。」だった。私たち日本人は”や”で、親しみや愛情を込めているのだよ、ゲイリー君!
 初来日だったそうだが、日本語を全く学ばずに、よく弄んでくれました。いや、日本語がわかったら、あんな表現は出来なかったと思われるような”無邪気さ”だ。それに好感が持てなかったのは、ゲイリー氏の英語が早口で、私の英語力では良く聞き取れなかった恨みのせいかも・・。