リチャードコシミズは一体誰にむけて言葉を投げているのだろう、と時々思うことがある。
普段の喋りでは、8割5分ぐらいは、彼は、カメラ目線からやや視線を下に外した感じで、どちらかというとボソボソと喋っている。
下ネタっぽいギャグをいうとき、彼は思い出したように目線をあげる――これが、残りの1割5分中の 5分。
喋りのインターバルを取りたいときなどに、彼は、聴衆の特定の人間に、合わせたがらない視線をたまに合わせることがあるーーこれも5分だ。残りは 5分。
そして、話が佳境に差しかかろうとするとき、彼は、カメラ位置のその先あたりを狙って、「視線をより遠くに」投げてみせる。
それから、あの決めのシャウトを見せるーー鋭利で高密度の、あのとびきりのリチャードシャウトだ。
あれをやられると、瞬間、講演会場の時間はとまるのである。
居眠りしていた母〇〇〇も飛びあがる。
会場の誰もが気押されて、完全にフリーズしてしまうのだ。
自分のシャウトの効果を見定めるために、彼は、あえて長めの間をとってみせる。
会場がフリーズしきって、それが解けかけたかと思える頃、彼は通常の声色にもどり、またボソボソと下目がちに話の続きをはじめる。
すると、ごく自然に、会場のあちらこちらから拍手とため息が巻きおこってくるのである…。
リチャードコシミズが全盛だった 2011~2014年にかけて、多くの講演会場で、僕は上記のような光景を何度も目撃した――。
✖ ✖ ✖ ✖
――いや~、マイケルさん、しかし、リチャードコシミズの全盛期って何だったんだろうね? 切符を売るって大変なことでしょう? 頭下げて、頼みごとあちこちにして、それから面倒くさい営業もかけて……。でも、あの当時、宇都宮だろうが伊東だろうが豊島公会堂だろうが、どこいってもあいつの講演会いくと、客が百人以上集まってきてた…。あれは、凄いことだよ。本当に何だったんだろう、あれは……?
というのは今月の 6日に上野で会った新藤さんのセリフ。僕はいくらか考えてからこう、
――うーん、だからねえ…、そこらへんが整理しにくいんだよ、リチャードさんの場合…。独立党時代、俺は、リチャードさんに8割くらい心酔していたけど、正直いうなら理論面ではリチャードは副島さんに全然負けてるって思ってた…。だって、整合性ないもん、なんも…。ちょっとネットだけ調べても、彼の理論が継ぎはぎだらけの即席麺だってことは誰でも分かるし、なにより彼の場合、話の展開も漫画チックで幼稚だしね……。たださ、生講演聴くと、そういった副島さんへのコンプレックスとかも飛ぶんだよ。なんちゅうか、全部飛んじゃうの…。要所要所でリチャードさんが、あの……
――リチャードシャウトをみせたなら、でしょ、マイケルさん?
というのは同席していたあかねさん。
――うん、そう…。俺が思うに、リチャードさんっていうのは、まず何より舞台人であり、役者であり、さらに突きつめていうなら、シンガーなんだよ…。歌詞の内容、喋りの中身なんてどうでもいいの……たとえ台本が911裏話でも、311人工地震説であっても、あるいは台本(ホン)が工作員合戦とかシャブチュー論争とか荒唐無稽で無根拠な保険金殺人みたいな与太話であっても…。話のクライマックスで1フレーズか2フレーズ、本気になって叫びさえすればいいんだよ…。そうすれば、すべての聴衆は魔法にかかる…。
――たしかに…あのシャウトは、凄かった…。
――でしょう? 実際に歌うたうと音程わるいから、厳密な意味でシンガーとは呼べないかもしれないけど、無意識の最深部からの発声が可能だって意味で、俺は彼のこと、声のひとだってずっと思ってるんだよね…。理論はパクリ…、しかも継ぎはぎ…、根拠も証拠も怖いくらいゼロゼロ…、彼は勉強嫌いだし、学識だって大してない…、喋りは陰謀論界じゃピカイチかもしんないけど、あのくらいじゃ、せいぜい二流の上どまりでしょ…? ただね、彼がときどき見せてたあのシャウトだけはね……
――シャウトだけは……?
――……ジャニス級……。
――ジャニスって、60年代のロッククイーンの、あのジャニス・ジョップリンですか……?
――うん、あのジャニスだよ…。もっと古代に遡って卑弥呼級っていい替えてもいいけどね……。
――すると…、マイケルさんはコシミズのこと、どう位置づけてるわけ……?
――うーん…、呪術者……。
――えっ、呪術……?
――うん、あのひとは、意味のひとじゃない…。喋ってることの真偽なんてどうでもいいの。意味の国にぽつんとあいた暗い風穴みたいな存在なんだよ、たぶん……。異界と今生とを結ぶ巫女みたいな存在だっていい替えてもいい…。とにかく彼が体調のいいとき、よく鳴るあの声を最大限に緊密にしてシャウトすれば、それが蝶番になって、蜃気楼みたいな空間がそこに一刹那だけ誕生するんだよ……。ひところ、〇田さんや〇〇さんみたいなインテリまでが彼の信者になった理由はそれだった、と俺は思ってる……。
――その空間は…、なんの空間なの……?
――復讐、だと思うな…。
――復讐…?
――うん、復讐空間…。リチャードコシミズ独立党現象のいちばん核にあるエネルギーは、たぶんそれだよ。俺はまえにそれを「いぢめられっこの心理」として提言したけど、存在係数の低い、社会的底辺……それが本当に社会的な区分けなのか心理的なものなのかは分からないけど……に属していると自覚してる多くのひとに、いちばん強く訴えかけたのはやっぱりそれだよ…。独立党員はね、何より先にまず攻撃したいんだ、自分よりカーストが上だと感じているあらゆる他者を…。だから、リチャードさんが提示する敵キャラに嬉々として、なんの疑いもなしに呪いの言葉を投げていく…。いまはディープステイツが敵ってことになってるよね…。むかしはそれがユダ金だった。朝鮮悪、保険金殺人団なんて風に総称していた時期もある。統一教会、創価学会なんかも敵キャラの重要な構成員だ。彼等は、自分じゃその敵キャラについてなんにも調べない。真相なんてどうでもいいんだ、正義チックな立場で呪詛の言葉を投げれるってことのほうが彼等にとって大事だからだ…。
――うわ。なんか末期の赤軍派のセクト争いみたいだな…。
――まさにそれだよ。カルトにいちばん必要なのは外圧なんだ…。外圧に対して一致団結して、自分たちの結束をさらに固めていく…。この足並を乱すのは異端者だ。リチャード異端審問所の認定した敵キャラに対して異議を挟むものがあれば……
ーーあ。工作員…!
――そう、異端者はなにより断罪しなくちゃいけないからね、自分たち教団の安寧と平和のために…。あかねさんもマイケルブログに記事書きはじめたころ、よくやられたろ…?
――やられた…。エキサイトブログの末期に「あかねの情報はクリアだから(注:これは個人情報を握っているからいつでも暴露してやれるという意味です)」と〇〇〇〇〇さんに脅された…。
――あっかねえ、なんて微妙な匂わせ記事も、たしかリチャードさん、挙げてたよね…? 笑うわ…。あんなんで脅してるつもりでいるんだから…。
――でも、マイケルさん、911,311、不正選挙行政訴訟、保険金殺人、朝鮮悪ヘイトと 10年つづけても枯れないコシミズの悪意って、よく考えると凄いよね…。彼の悪意、あの異常な自己顕示欲と承認欲求は、どこからきてるんだろう…?
――……それ、母親だと思うよ……。
――えっ…?
ーーリチャードコシミズのすべての言説は、自分を決して認めなかった彼の母親、叙勲にまで預かった Hさんにむけ投げられてるって俺は思う。徳丸の実家でまだ存命中の彼女と話したとき、俺はそれ確信した….。優秀な一族のなかで被差別民みたいな扱いでずっと育ったコンプレックスまみれの彼にとって、いちばん認められたいのは、やっぱり母親である Hさんと、育ての親といっていいくらい自分に近かった、お姉さんの Tさんなんだよ…。これはホント、最近になってやっと気づいたんだけどね……、リチャードさんの作った独立党は、彼女等に自分を承認させるためだけの、超・個人的な拡声装置なんだよ…。
――なんだかリチャードさん…、かわいそう……。
――RK独立党がまだ全盛だった 2012~13 年ごろ、彼、盛況の東京講演会に何度か息子さん連れてきてるんだよね…。あれはさ、おまえらは俺のことずっと馬鹿にしつづけてきたけど、これ見ろよ、いまの俺はむかしとちがう、俺の話を聴くためだけにこれだけの人間が金を払って集まってきてるんだぞ…。そういった血を吐くような悲痛なメッセージを彼女等に届けるための証人としてあえて呼んだんだ、と俺は思ってる……。
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盛時を知っている人間からすると、現在のリチャードコシミズ独立党の衰退は恐るべきものがある。
規模の大きな団体なら傾ぐときも急なものだが、この程度の規模の団体で、わずかの間にこれほどの暴騰と急落とを同時に経験するというのも稀なのではないか。
2017-04-02 の花見会合のときに、対独立党戦争のために僕が立てた戦略は主に5つあった。
① 当時アンチRKの筆頭であったバレバレさんの「紙幣の不思議」の路線を引き継ぎ、ネット内戦争からまず始めること――。
② ただ、僕等のこの闘争は、レイズナーさんの「ネット探偵」ブログで顕著に見られたような、安全なネットのみのバーチャル戦争であってはならない。
この闘争には時期ごとに「現実」を介入させていくことが必要だ。「現実」というのは当時リチャードコシミズが放言していた、
「保険金殺人」についての是非であり、あるいは「政党立上金」「独立党山荘資金」についての具体的な追及である。
「工作員騒動」に関しても同様に必ず裏を取ること――。
リチャード本「日本の魔界」「リチャードコシミズの未来の歴史教科書」等を出版していた、成甲書房のT社長と接見したのもそのためだ。
リチャードコシミズの実家である徳丸にいって、彼の家族に接触したのもそのためだし、
彼の「皇室テロリスト」ネタに関しての資料を皇宮警察に送付したのもそのため、
彼が絶対に反撃してこないだろうと自分の「保険金殺人」のいい舞台にしていた旧・大口病院にいって、そこの事務長と接見したのもそのためだ。
③ この路線が定着してきたら、時期を見て、彼の活動の重要な一翼を担っている、全国のリチャード講演を叩くこと――。
④ と ⑤ に関しては、現段階での公示は不可。
――① に関しては、今更説明はいらないことと思う。
911に関しても311に関しても、また、これに比べて大分落ちるにしても、リチャードコシミズの「売り」が社会的なタブーにあることは明白だった。
より正確にいうなら、彼・リチャードコシミズは、自分は社会的なタブーに挑戦しているんだ、というポーズを売っていたのだ。
2017年に犬丸勝子の死去に関して彼がいいはじめた案件に特に顕著だったが、
具体的な保険金会社の社名も、その掛けられているといるという保険の種類も、一切合切が不明である「保険金殺人暴露」など、ない。
これで警察が動くはずがない、ということは中学生でも分かる。
つまり、彼はフィションと現実との狭間の曖昧空間で遊んでいたのだ――それが遊びか、悪ふざけか、関係妄想かの区分はいまだ不明だけれども。
そして、この遊戯を展開する場として機能したのが、当時のネット環境である。
ヘイト規制が進んだ現在では考えられないことだが、当時のネットではこのような発言も許されていたのだ。
この曖昧な甘えに乗じて彼が多用したのが「朝鮮悪」「シャブチュー」「保険金殺人」などの一連のライトなヘイト発言であった。
これらはむろん計算づくの自己演出だ――過激さを標榜して、彼は自分の商標「リチャードコシミズ」の叩き売りを敢行していたのだ。
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2019年の夏、シロクマさんと会うために大阪・難波を訪れたあかねさんと僕は、あかねさん推薦のフレンチの店で舌づつみを打ったあと、気まぐれにタロットカードの占いの店に入った。
シルクの敷物の上に絢爛な図柄のタロットカードを何十枚も配置した〇葉さんは、迷いの欠片も見せない声で瞬時にこういった。
――ああ…、これは勝ちますね……。なんの心配もいらない…。いまはちょっと苦しい時期が巡ってきてるけど、大丈夫…、勝ちます……。それにこのひと、何よりお金がないですよ…。ああ、ここにもそれ…出てる……。ご本人はこれからも続けたいんでしょうが、近いうち、どうにもならないことが起こって、続けたくても続けられないことになる……。
――えっ…。どうにもならないこと? なんですか、それは…?
――ちょっとこれだけの印じゃ…、そこまでの詳細は見えませんね……。
遊びで入った占いだったし、あかねさんも僕も占いを信じてるわけではないから、そのときは〇葉さんのこの言葉を聴き流してしまったのだが、
いまになってみると、これは現在日本中を席巻している「コロナパニック」のことではなかったのか、と思えてもくる。
コロナウイルスは、岩田教授もいっていたが、伝染率こそ図抜けているが、至死率は 5%未満の伝染病である。
この騒動で僕がいちばん驚いたのが、マスコミの異常な狂奔ぶりだ。
なんと、マスコミ全体がRKのお株を奪って、リチャードコシミズ・パニックを堂々と煽り立てているではないか。
リチャードコシミズは救世役としての「アビガン」をしきりに推奨しているが、
党運を賭けた彼の言説も、マスコミ全体が煽り立てる「コロナパニック」の勢いに呑まれて、ほとんどなにも聴こえてこない。
いままでの両者の役割がすっかり逆転してしまった印象だ。
いまや本家のリチャードコシミズより、一般マスコミのほうが遥かに過激にリチャードコシミズしているのである――!!
巨大なマスコミに自己の政策を奪われてしまったら、リチャードコシミズに存在意義はない。
どんなヘイトを叫ぼうが、安倍が悪役の陰謀論をいくらかまそうが、もはや誰にも彼のそのような声は届かない。
陰謀論は結局、平和時のツールなのだ。戦時にそのようなことをいっても、誰にとっても重要なのは、いまこの窮状をどうするか、でしかない。
裏権力の構成員や指令ルートを想像するのは、一種の娯楽であるともいえる。このような非常時にそんな贅沢な無駄話を聴きたがる人間などいない。
実際、彼はこれまでに 39回も「アビガン宣伝」の動画を連続UPしているが、そのような言説によって独立党入党希望者が激増した兆候はまったくない。
いま実際に展開している過酷な「現実」のほうが、リチャードコシミズのどのような極論より遥かに過激であり、よりリアルだからだ。
アビガンには実際、治療効果があるのかもしれない。
しかし、いまの世の本流は、そのような地点での言説を不必要だと断じるくらいの濁流となって、轟轟と流れているのである。
岩田教授はそれについてこういっている、
――「こういった薬を投与したら効いたようだ」というニュースが毎日のように出てきます。そういうニュースをいちいち大げさに捉える必要はない。何もしないで治っている人が8割いるのだから。その中の誰かに、偶然何かを投与したら、その後しばらくして症状が軽くなったというだけの話かもしれない…。(岩田健太郎)
彼は、救世薬としての「アビガン」に乗っかろうとして、たぶん、それに失敗した。
当然だ、それが本当に救世の心がいわせた言葉なのか、私欲のために発せられた言葉なのか、聴き分ける耳を持っているのが「世間」という化け物なのだから。
アビガン記事に寄せて、独立党入会案内をいちいち執拗に貼りつけているのも、経済的窮乏の告白以外の何物でもない。
リチャードコシミズとリチャードコシミズ独立党の破綻は近い。
彼の次なる動向をじっくりと見定めていきたい、と、いま僕は考えている――。