2代目ポチの姿がみえなくなって、S少年は、不安にかられていても立ってもいられません
「ポチがどこかにさらわれて行ったのだとしたら、一体どうなるんだろう・・」
と考えると、この日ばかりは食事ものどをとおりません
3人の姉たちも同じように、なかなかご飯がすすみません
「もしも、ポチが犬さらいに連れて行かれたのだったら、どうしたらいいんだろう」
S少年がぼそりとつぶやくと、3人の姉たちは、せきを切ったように泣き始めました
「いやだ~、いやだ~、そんなのいやだ~!」
「迎えにいかなきゃ殺される~、早く行かなきゃ~、早く早く~!」
「どこに行けばいいの~、どこに行けばポチにあえるの~?」
子どもたちの泣き声は、はげしくなるばかりです
こうなっては、もはや、食事どころではありません
子どもたちが泣き叫ぶのを、両親はなんとかなだめて寝かしつけました
S少年もしぶしぶ布団にはいり、夢見心地でまどろみ始めました
すると、姉のひとりが突然おおきな声で、「ポチ~、ポチ~」と泣きさけび始めました
どうやら、悪夢にうなされたようです
姉たちはまた起きだしてしまい、泣きながらポチの名をよんでいます
そして、知らず知らずのうちに、みんな泣きながら寝入っていったのでした
翌朝、S少年が目をさますと、庭から話し声がきこえます
姉たちと、となりのお兄ちゃんの話し声です
「なあ、ゆうべは、なにかあったのか」
「あのね、ポチが犬さらいにつかまっちゃったらしいの・・・」
「えっ、あのポチが?犬さらいに?」
「・・・・」
「ほんとうか?」
「・・・・」
「証拠はあるのか?」
「・・・・」
「どうするんだ?」
「・・・・」
「ポチは殺されちゃうのか~?」
「・・・・」
昨夜のように、姉たちの泣き声がどんどん大きくなります
「よし、わかった。お兄ちゃんがポチを引き取りに行ってやろう!」
「えっ、ほんとう~?」
「ああ、ほんとうだとも。まかせておけ。今からすぐに行ってやるぞ!」
「ああ、そうしてやって、行ってやって、お願いします!お願いします!!」
「大丈夫だよ。だから、みんな安心して、ちゃんと学校に行けよ~」
S少年と姉たちは、不安ながらも学校に行きました
となりのお兄ちゃんに、なんとかポチを助けだしてほしい・・・
授業なんかはうわの空で、一日中ポチの身の上を案じていました