シェルティー ラン吉

拙者シェルティーラン吉でござる ラン吉のランは「団らん」のラン 一度しかない今日もろもろをラン吉ママがしたためまする

旅は同行2匹連れ その2 【しぶごえ御宿海岸と養老渓谷-2】

2013-04-25 13:00:22 | ラン♪

さて、お泊りは、ワンコ旅籠の「しぶごえ御宿海岸」でござる

眼下にみおろす太平洋から、部屋にきこえる波の音がここちよい

                         

お楽しみは夕げでござる

わが犬生はじめて!プロの料理人が作るワンコ用の「刺し盛り」をいただいた

ぎんのすけ殿 「うまいのう〜! かような馳走にありつけるのも、日ごろの精進のたまものじゃな!」

ラン吉 「わが母の作る”なんちゃって手作り食”とは雲泥の差じゃ・・・言葉もない・・・」

感動のなみだではなく、よだれダラダラのわれらでござった

さて、ニンゲン用も、かようなご馳走にて・・・ 

飼い主たち 「おいし〜〜いっ! ビールと日本酒、おかわりお願いしま〜〜す!」

そんなこんなで、夜もふけて・・・

                         

翌朝。まだ明けやらぬ、外房の海と空をそめる朝焼けでござる

日がのぼれば、さっそく、お目当ての砂丘へ

ラン吉 「んっ、これは何でござる・・・ くんくん・・・ 海藻か?」

ぎんのすけ殿 「ラン吉よ、より道すると置いていくぞよ」

ラン吉 「ぎんのすけ殿〜!お待ちくだされ〜!きょうもお供いたしまする〜!」

2013年4月13日(土曜)早朝、御宿海岸の砂浜は、われらのほかに人影もなし

”月のさばくを〜はる〜ばると〜”の歌詞で有名な童謡は、ここ御宿の砂丘がモチーフとか

ヒトもイヌも走る・・・遊ぶ・・・

ぎんのすけ殿 「さすが、わが母じゃ!軽やかな走りっぷり、みごとでござる!」

ラン吉 「ぎんのすけ殿のお母上の体力はすばらしい!わが父母とは若さがちがうのう・・・」

                         

さて、宿にもどって腹ごしらえでござる (注;こちらはニンゲン専用)

愛犬と楽しむ宿「しぶごえ御宿海岸」は、”食事も寝るのもず〜っと一緒!”

(拙者ラン吉、母とベッドイン初体験でござる・・・汗・・・)

                         

あたたかいおもてなしにはお名残りおしいが、いざ、出立でござる

帰路なかば立ちよったのは、ベジタブル・ガーデン@大多喜町

こちらのドッグランは、砂浜とちがって、やわらかい土と草のカーペット

ラン吉 「さすが、ぎんのすけ殿!スラロームなどお手のものでござるな!」

ラン吉 「拙者、かようなクネクネよりも、一直線まっしぐらじゃ~!」

ぎんのすけ殿 「われも行くぞよ〜〜!!」

遊んだあとはしばし休憩。うまそうなランチでござるな~(注;こちらもニンゲン専用)

                         

今日は、朝から砂丘をかけぬけ、昼は草原をはしり回れば、そろそろ、わが家をめざす頃か・・・

なれば、旅のおわりに、記念のパチリ! 

いつも若くて元気なぎんのすけ殿のお母上と、あちこちガタピシのわが飼い主

ワンコ抱っこで、うれしや楽し、にこにこカメラにおさまりました

                         

** ラン吉 納め口上 **

今回のワンコ旅も、企画から事前調査、スケジュール調整など、すべて、ぎんのすけ殿のお母上に頼りきりでござった

何から何までお世話になり、わが飼い主ともども、心より感謝いたしまする

ぎんのすけ殿、これからも、ともに元気であそんで参ろうぞ〜!

 

(写真提供:銀翁師匠−ぎんのすけ殿のお父上)

 


旅は同行2匹連れ その2 【しぶごえ御宿海岸と養老渓谷-1】

2013-04-22 12:51:32 | ラン♪

拙者、シェルティー・ラン吉でござる

ノーフォークテリア・ぎんのすけ殿にお供し、春の房総へと旅してまいった

東京湾をわたるアクアラインのサービスエリア「海ほたる」で待ちあわせ

ぎんのすけ殿 「あ~あ、旅の供は、またしてもラン吉であるか・・・」

ラン吉 「ぎんのすけ殿、落胆めさるな!拙者ラン吉、誠心誠意、お供いたして参りまする!」

                         

さて、最初の目的地は、房総半島のドまん中!「養老渓谷」でござる

養老温泉郷をぬけ、粟又(あわまた)の滝へと下りてまいる

養老川の流れは、浅くなったり深くなったり・・・

早くなったりおそくなったり・・・

いくつもの滝や湧き水をあつめて、渓谷はたかく広く、くだっていく

2013年4月12日(金曜)、養老渓谷の遊歩道は、われらのほかに人影もなし

                         

ラン吉 「ぎんのすけ殿~、滝行でござるか!お供いたしまするぞ~」

ぎんのすけ殿 「かような浅い水ではもの足りん!えいっ!」 ドボーン!

ラン吉 「よっ! 初泳ぎ 水もしたたる いい男!」

さあ、陸にあがるには、この川をわたらねばならぬ・・・

それ~~~~~~っ!

ぎんのすけ殿と、自然あふれる養老渓谷にて、「滝めぐりコース」の散策を満喫した

                         

さあ、今宵の宿にむけて出立すべきところ、さらに深き滝壺へとおりる御仁ひとり・・・

ぎんのすけ殿 「さすが、わが母じゃ!日ごろより鍛えた健脚ぶりをごらんあれ!」

ラン吉 「ぎんのすけ殿のお母上の行動力はすばらしい!わが父母とは若さがちがうのう・・・」

                         

この後、ワンコも泊まれる「しぶごえ御宿海岸」へとむかったのでござる

 

(写真提供:銀翁師匠-ぎんのすけ殿のお父上)

 


「トチの思い出ものがたり 後編」 ポチの思い出ものがたりの番外編

2013-04-11 12:51:31 | ポチの思い出ものがたり

お父さんは、「トチ」をゆずった箱根の知人に電話をかけました

「実は、トチなんだが、今うちに来ている・・・

ああ大丈夫、元気だよ・・・ やせてるが、飯も食ったし、落ちついてるよ・・・

ところで、もし、トチを飼うのが大変なら、こちらでまた、引きとることができないわけじゃないが・・・

ああ、そうだな、わかったよ・・・ じゃあ、待ってるからな・・・

それまではこちらで面倒みるから、心配しなくていいから」

                    

K坊やは、トチは箱根がきらいで逃げてきたんじゃないかと心配でしたが、お父さんいわく

「箱根のうちでも、トチが無事にこっちに来ていることがわかって、本当に喜んで、ほっとしていた

家族みんなでかわいがって育ててきたのに、突然いなくなって、奥さんはショックで寝こんでしまったそうだ

2年も暮らせば情がうつって、トチのいない暮らしは考えられないから、是非かえしてほしいと言っている」

「でも、いなくなっても、ほうっておいたから、こんなにガリガリになって、うちまで来ちゃったんじゃないか」

「そうじゃないぞ。トチのチラシをつくってまいたり、人を何人もたのんで毎日さがしていたそうだ

それに、警察や保健所や猟友会にもすぐに連絡して、なにかあったら教えてくれるように頼んでいたらしい」

「保健所?猟友会?それってなあに?警察なら迷子だからわかるけど・・・」

「もしトチがノラ犬や野犬にまちがえられれば、狂犬病だといけないからって保健所がつかまえて、殺してしまったかもしれないんだ

山で狩りをする人たちも、もしかしたらトチを獲物とまちがえて、撃って殺してしまったかもしれない

それに、警察だって迷子の世話だけってわけじゃないんだ

車にひかれて交通事故にあう動物だって、たくさんいるからね」

「そんなあぶない目にあうかもしれないのに、わざわざここまで来たなんて・・・」

「保健所も猟友会も、車の事故も、みんなヒトの勝手だ。動物には、まったくめいわくな話だ

とにかく、トチを逃がしてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだったと言っていたよ

箱根からむかえが来るまでの間、トチを休ませて栄養をつけさせないといけないな」

この夜、はじめてK坊やは「トチ」とならんで、家のなかで寝ました

この時だけは、犬といっしょに寝ても、お父さんはとがめたりしませんでした

                    

翌日から、前にもまして、K坊やは「トチ」をかわいがりました

お父さんとお母さんは、仲良しどうしをひき離すのをかわいそうに思いながらも、「トチ」を箱根にかえすと決めていました

「K坊、トチはもう、うちの子じゃなくなっているのよ」

「今度の日曜日、箱根のおじちゃんがトチをむかえにくるから、そのつもりでいろよ」

                    

日曜日、箱根のおじちゃんが「トチ」をむかえにやって来ました

「このたびは誠に申し訳なかった、今後このようなことのないように十分に気をつけるよ」とあやまりました

そして、おじちゃんが「タロー」とよぶと、「トチ」はしっぽをブンブンふって突進していきます

おむかえに来てもらったことがわかるのか、大喜びではしゃいで甘えています

K坊やは、その時の「トチ」の姿をみて、はっきりとわかりました

「トチは、もう、うちのトチじゃないんだ。箱根のタローなんだ・・・」

                    

箱根のおじちゃんは、箱根でとった「トチ」の写真を見せてくれました

写真には、犬専用のひろい裏庭で、穴掘りしたり走りまわったりしている「トチ」がうつっていました

箱根の山歩きにつれて行ってもらっている写真もありました

K坊やは思いました

(トチはおじちゃんと家族のみんなに大切にされて、楽しく暮らしているんだな

おおきなトチにとっては、自由に歩くこともできない町中より、箱根にいるほうが幸せかもしれない・・・

そうだ、僕もトチを大切にしよう、僕がトチを幸せにしてやろう)

                    

夕方になり、いよいよ「トチ」をつれてかえる時になりました

「トチ」は、軽トラックの荷台の檻に乗せられました

K坊やは、荷台に乗った「トチ」にむかって叫びました

「トチ、お前、もう二度とここにはかえって来るな~

かえって来ようとすれば、途中の道は危険だらけで、いつ死んでしまってもおかしくない!

だったら、もうかえって来るな~!

箱根で元気に生きていろ~!

会えなくてもいいから、元気でいろ~!

みんなにかわいがってもらって、幸せに、元気で、生きていろ~~」

                    

軽トラが動き出すと、荷台に乗った「トチ」が声をあげました

「ウォーン、ウォーン」と、まるで、K坊やの叫びに応えているようです

「トチ~、かえって来るな~!」

「ウォーン、ウォーン」

「トチ~、箱根で元気に暮らせよ~!」

「ウォーン、ウォーン」

お母さんは「トチが悲しんで泣いているわ」と涙をこらえています

が、お父さんは「なに、車に乗ってすこし興奮して吠えているだけだ」と平静をよそおいました

「トチ」を乗せた軽トラが、町の角をまがると、やがて「トチ」の声も遠ざかっていきました

こうして、K坊やと「トチ」は、お別れしました

その後、K坊やと「トチ」は二度と再び、会うことはありませんでした

「トチ」はK坊やに会いたい気持ちをおさえて、K坊やの言いつけを守りつづけたのでした

                    

その後、箱根からは、毎年決まった時期に「トチ」の元気そうな写真が送られてきました

そして、年月がたつにつれて「トチ」が老いていく姿が写真からもわかるようになりました

ある年突然に、「トチ」が亡くなったという知らせといっしょに、生前の「トチ」の写真が送られてきました

それを最後に、箱根から写真が送られてくることはなくなりました

                    

K坊やのお父さんは、無類の犬好きでしたので、「トチ」のあとにもいろいろな犬を飼いました

親戚にも犬を飼っている人がおおく、すっかり中年になったKさんは、今までに何十頭という犬に接してきました

どの犬もみんなおとなしく人なつこい子ばかりなので、Kさんも他の人たちとおなじようにかわいがろうとしますが、どの子も、けっしてKさんにはなつきません

それどころか、Kさんにはうなったり、時にはかんだりする子もいました

 

もしかしたら、この世でK坊やと遊びたりなかった「トチ」が、天国でやきもちをやいて、Kさんと他の犬が仲よくならないように、おまじないをかけているのかもしれませんね

 

<おしまい>

 

トチの思い出ものがたり 前編はこちらから → 前編

トチの思い出ものがたり 中編はこちらから → 中編

 

 


「トチの思い出ものがたり 中編」 ポチの思い出ものがたりの番外編

2013-04-09 12:36:14 | ポチの思い出ものがたり

そうざい屋の店主は、声をふるわせながら、K坊やに言いました

「おい、K坊、あれ、お前んちにいた犬じゃないか、ちょっと呼んでみろ」

K坊やは、なにを言われているのか、ピンときません

「ほら、でかい犬がいたろ、なんていったかな、えーと、ほら、トチとかいってたろ」

K坊やは「トチ」という名前をきき、あらためておおきな犬をみて、一瞬のうちに記憶がよみがえりました

でも、目の前にいる犬はあまりにもガリガリで汚れていて、それが「トチ」だとはにわかに信じられません

ましてや、K坊やの住んでいる町と箱根とは、同じ神奈川県内でも、100キロも離れていると聞かされていました

K坊やは、半信半疑でおそるおそる近づいていきます

「おいお前、トチなのか?おいお前、トチか?トチ?トチ?」

その犬は呼びかけられると、なんと、しっぽをブンブンとふりながらK坊やにかけよってくるではありませんか

そして、K坊やに飛びついて、クンクンと体をすりよせてきます

K坊やの顔といわず首といわず頭といわず、ペロペロ、ペロペロとなめまくります

「わぁ~!トチだぁ~!トチ~!トチ~~!!」

K坊やは、大声で泣きながら「トチ」を抱きしめ、全身をバチバチとたたきまくります

「トチ、こんなにガリガリにやせちゃって、こんなにボロボロによごれちゃって~

どうしちゃったんだよ~、トチ、トチ~」

                    

そうざい屋の店主は、K坊やの家や近所の店にむかって、おおきな声で人をよびました

「おーい、K坊んとこの犬が帰ってきたぞ~!みんな来てみろ!トチだ~、トチだぞ~!」

騒ぎを聞きつけて、近所から大勢の人たちが集まってきました

K坊やの家からも、お母さんが出てきました

「トチ」はお母さんに気づくと、まるで狂ったように、お母さんに突進してじゃれつきます

お母さんは、あまりにはげしく「トチ」がよろこび動くので、ハグすることもできないくらい

2年まえにK坊やからひき離されたあの「トチ」が、遠くから自分だけでかえって来たことは、だれの目にも明らかでした

                    

「トチ」をやっかい者あつかいにした人たちも、「トチ」が遠くからかえって来たことを知りました

「この犬、箱根から戻って来たらしいよ、2年もたってからだってさ・・・」

「忠犬ハチ公とおなじ、秋田犬だってね・・・」

「よほど、K坊が好きだったんでしょうよ・・・」

K坊やのお母さんは、涙でグショグショになりながら、泥だらけの「トチ」に頬ずりしています

「トチ」がK坊やとお母さんに再会した姿を目のあたりにして、もらい泣きしている人もいました

                     

親しいご近所さんが近づいてきて、そっとお母さんの肩にふれて言いました

「奥さん、トチを家のなかに入れてあげなよ。このままずっと外においとくこともできないでしょう、犬小屋もないことだし」

お母さんは、はっと我に返りました

「ああ、ありがとね。ほんと、そうだわね」

そして、集まっていた人たちに頭をさげて言いました

「みなさん、ご迷惑をおかけしています・・・

トチなんですけど、こんなふうに、ここにかえって来てしまって・・・

ご覧のとおり、とても弱っているので、このまま放っていくわけにもいきません・・・

ほんとは、ここにいちゃいけない子なんだけど・・・

すいません、ゆるしてやって・・・、トチのこと・・・」

周囲にあつまっていた人たちは、なにも言わずに、去っていきました

                     

2年ぶりにかえって来た「トチ」は、泥まみれでガリガリで、あまりにもみすぼらしい姿でした

犬小屋はすでに取りこわされているので、「トチ」を家にいれてやらざるを得ません

外につないでおいて、また脱走でもされたら、それこそ一大事です

きれい好きのお母さんは、汚れた「トチ」の体を雑巾でふき始めました

K坊やは、そんなお母さんがもどかしくてたまりません

「母さん、そんなことより、はやく何か食べさせてやってよ」

「ああ、そうだわね。まず、お水を飲ませなきゃね」

お母さんがハチミツを少しとかした水を「トチ」の鼻先におくと、「トチ」は待ってましたとばかりに、ペチャペチャとおおきな音をたてて飲みました。

「何かご飯もつくってあげなくちゃね」

                     

「トチ」はお母さんからはおじやを作ってもらい、K坊やからは給食ののこりのパンをもらいました

一口ずつもらってパンを食べ、だんだん「トチ」のお腹もふくれてきました

そして、最後の一口を食べ終わると、K坊やの手についたジャムをきれいになめて、ゆっくりふせをしました

K坊やが「トチ」の背中をしずかにさすってやると、「トチ」はその場にゴロンとよこになり、やがてウトウトし始めました

ガリガリにやせて、肋骨のうきでた胴の腹がふくれて、おおきく息をしながら全身が波うつようです

やっとここにたどり着いてK坊やたちに会い、やさしく受けいれられ食べ物をもらって、心から安心したのでしょう

そんな「トチ」をみて、K坊やの胸ははりさけそうでした

                     

「僕はトチのことを忘れていた。でも、トチはしっかり、うちの場所まで覚えていた

そしてとおい所から、ひとりで歩いてここにかえって来たんだ

道を人にたずねることもできず、ましてや地図をよむこともできないのに・・・

僕や母さん父さんに会いたくて、ひたすら知らない道をかえって来た・・・」

K坊やは、そんな「トチ」がいとおしくてかわいくて、けなげに思えてならないのでした

畳のうえは泥だけになっていましたが、そのまま寝かせておくことにしました

                     

K坊やのお母さんは、お父さんの職場に電話をかけました

「トチがかえって来てしまったのよ・・・仕方ないから家にいれてるわ

今はご飯食べてねむってるけど、ガリガリにやせてる・・・

箱根で何があったかわからないけど、面倒みてやらないと・・・」

「トチ」のことを聞いて、お父さんはいつもより早く仕事からかえってきました

「トチ」はお父さんに気づいて目がさめると、ガバッと飛びおき、やはりしっぽを大きくふってかけより、じゃれつきました

お父さんは、うれしくてはしゃぐ「トチ」に、飛びつかれるまま、立ちすくしていました

そして「トチ」がはしゃぎ終わるとそっと「トチ」をハグして、「トチ、よく無事で生きてかえってきたな」とささやきました

                     

「トチ」のことをすっかり思いだしたK坊やは、

「ねえ父さん、トチはやっぱりここが好きだったんだよね?

だから戻ってきたんだよね?トチはやっぱりここで暮らすほうがいいんじゃないの?」と聞いてみました

「K坊、トチがもどって来たのは、箱根よりもここが好きだとはかぎらないんだよ

犬はね、前にいた場所にもどる習性があるんだ

何かのきっかけで、こんなことになったけど、まず箱根のようすも聞いてみないといけないな」

お父さんは、「トチ」をゆずった箱根の知人に電話しました

<後編につづく>

トチの思い出ものがたり 前編はこちらから → 前編

トチの思い出ものがたり 後編はこちらから → 後編

 


たけのこ! シーズン到来

2013-04-08 00:33:36 | ママのご飯

  今年も、タケノコの季節となりました  

房総半島、館山からの茹でたてタケノコ、初物です 

そして、三浦半島は横須賀でとれた、新わかめ 

わが家では、濃いめにとったおだしで、炊きあわせました 

掘りたての茹でたて、やわらかタケノコなら・・・

わさび醤油であっさり、お刺身でいただくのもよし 

焼いて塩ふり、あつあつで酒のあてにいただくのもよし 

季節がくれる、自然の恵みに感謝ですね 

  ごちそう様でございました  

 


「トチの思い出ものがたり 前編」 ポチの思い出ものがたりの番外編

2013-04-04 12:48:29 | ポチの思い出ものがたり

Kさんの子どものころのおもいで話 「トチの思い出ものがたり」

主人公は、K坊やです

                    

昭和40年代頃のお話です

商店街の一角、K坊やの家には、おおきな秋田犬がいました

その名も「トチ」といい、K坊やとはいつもラブラブ、大の仲よしでした

K坊やのお父さんは犬が大好き

なので、K坊やの家には、いつも犬がいました

K坊やが小学校にあがる前に飼われていたのが、この「トチ」でした

                    

K坊やが幼稚園からかえって真っ先にむかうのは、秋田犬「トチ」の小屋

庭におかれたおおきな犬小屋にはいり、K坊やと「トチ」はハグしてじゃれ合います

「トチ」は、立派でおおきくて、そして、おだやかでお利口な秋田犬

おもさは40キロもあろうかという「トチ」なので、背たけもあります

そんな「トチ」の背中にまたがって、K坊やは「トチ」のおしりをバチバチとたたきます

でも「トチ」は嫌がるどころか喜んで、K坊やを背中にのせて歩きまわります

遊びつかれたK坊やが犬小屋のなかでうたた寝すれば、「トチ」も寄りそって寝そべります

そんなK坊やと「トチ」をみて、お父さんは「こまったものだ、犬なんかと寝て・・・」とつぶやいていました

                    

ある日のこと、K坊やは、幼稚園から帰ろうとしてわが目をうたがいました

幼稚園の門のところに、なんと、あの「トチ」が自分を待っているのです

これは、家の犬小屋からぬけ出してきたにちがいない!

―― K坊やの予感はあたっていました

「トチ」は、その後も、たびたび幼稚園にK坊やを迎えに来るようになりました

犬小屋のかべをやぶり、鍵をこわし、手綱をくいちぎって、犬小屋をぬけ出し、K坊やに会いに幼稚園へ行くのです

「トチ」は大好きなK坊やが家にかえってくるのが、待ちきれなかったのでした

                     

でも、「トチ」がK坊やのかよう幼稚園に行くには、駅前につづく商店街を通らなければなりません

商店街のうらには、住宅街がひろがっています

そんな中を、おおきな秋田犬が闊歩していきます、しかも、飼い主なしに・・・

商店街のひとも、住宅街のひとも、そんな「トチ」にまゆをひそめました

「こんな大きな犬が、人通りのおおい道を勝手にあるくなんて、こわくてたまらない」

「犬が幼稚園や店や家のまわりをうろつくなんて、絶対にやめてほしい」

「子どもや家族が、この犬にかまれたりしたら、一体どうしてくれるんだ」

                    

「トチ」はだれのこともかんだり吠えたりしなかったのに、周囲からは白い目でみられました

当時は、飼い犬といえば、雑種のちいさな犬が主流だった時代

血統書つきの大型犬は、ちょっと目だった存在でした

「トチ」は、犬小屋や綱をがんじょうにしても、なんども小屋をぬけてしまいました

そして、とうとう幼稚園の保護者会でも「トチ」のことが問題になりました

「子どもたちの安全と、犬と、どちらが大事なんだ」

「おおきな体で、体力をもてあますから、逃げだすんじゃないか」

「おおきな犬には、町中でなく、ひろい土地のある田舎ぐらしがにあうだろう」

と話がすすみ、おおきな秋田犬「トチ」に、まるで町から出ていけといわんばかり

商店街の人たちからの苦情もふえて、K坊やのお父さんは「トチ」を手ばなすことを決めました

箱根にすんでいる知人が「トチ」をもらいうけ、大切に育てると約束してくれました

                    

K坊やは、その話をきくとショックのあまり大声で泣きわめきました

「トチがいったいどんなわるいことをしたっていうの?」

「トチは何もわるいことなんてしてやしない。ただ、町中では飼えないんだよ」

「どうして箱根の人んちになんかあげちゃうんだ?もういっしょに遊べなくなっちゃうじゃないか!」

「そうだよ、もういっしょには遊べない。でもトチはひろい場所でおもいきり遊べるよ、そのほうがしあわせなんだからね」

「でも、トチと遊べないなんていやだ、ぼくはちっとも楽しくないよ!」

「 自分さえ楽しければ、トチやほかの人がしあわせでなくてもいいのかね?」

K坊やは、しぶしぶ納得せざるをえませんでした

                    

数日後、K坊やが幼稚園から家にかえると、もう犬小屋に「トチ」の姿はありませんでした

K坊やがだれもいない犬小屋にはいると、かすかに「トチ」のにおいがしました

K坊やは「トチ」が大好き、「トチ」もまた、K坊やが大好き

大好きな者どおし、ただ、たのしくいっしょに遊びたかっただけなのに・・・

そんな一途な思いが、ぎゃくに、大好きな者どおしを離ればなれにしてしまいました

しばらくして犬小屋が取りこわされると、「トチ」のおもかげはどんどん遠のいていきました

                    

時がたち、K坊やは幼稚園から小学校にあがりました

小学生になったK坊やは、毎日の生活がワクワクの連続です

勉強はたいくつでしたが、放課後ともだちと自由に遊べるのは、なによりおもしろく楽しかったのです

あんなに大好きだった秋田犬の「トチ」でしたが、思いだすこともなくなっていました

                    

そして、「トチ」がいなくなって2年がすぎたある日、K坊やが学校から家にかえってきた時のこと

家が近づくにつれて、玄関のまえにおおきな犬が一匹、立ちすくんでいるのがみえました

その犬はからだがよごれて泥だらけ、しかも、ガリガリにやせています

「あんなおおきなノラ犬がいたんじゃ、こわくて家に入れやしない」

K坊やは、近所のお店にむかって声をかけました

「おじさん、ちょっと来てよ。こわい犬がいてさ、ぼく家に入れないんだよ」

そうざい屋の店主が出てきました

そして、その犬を見るなり、がたがたと震えだしました

「おい、K坊、あれは、あの犬は・・・」と、その声も震えています

 < 中編につづく >

 「トチの思い出ものがたり」 中編はこちら → 中編

 


ポチの思い出ものがたり 25

2013-04-02 12:44:14 | ポチの思い出ものがたり

かつて少年だったSは、今の飼い犬たちの幸せそうな暮らしぶりをみるにつけ、昔の二匹のポチが不憫でなりません

戦争が終わってもヒトさえ満足に食べられなかった時代、ノラ犬たちは、毎日生きのびるのに必死でした

そまつな残飯でももらえれば、その家の縁の下にもぐりこんで、次の残飯がもらえるのを待ちました

そして、少しでもかわいがってもらえれば、まるでその家の子になったように甘えます

半ノラの初代ポチは、まさにそんなイヌでした・・・

* * * *

ヒトに飼われていたものか、ヒトから逃げてきたものか、

はたまた、ヒトにすてられたのか、氏も素性もわからない

いったい全体、どうやって、生きてきたのか生きのびたのか、

だあれも知らない、名無しイヌ

* * * *

放し飼いだった初代ポチは、S少年のお父さんが朝、お勤め先の工場に自転車でいくのにならんで走っていったばかりでなく、夕方には、工場の門の前までお迎えにもいきました

また、家族みんなが銭湯にいくのにくっついて歩き、一家が風呂からでてくるまで、銭湯の前でじっと待っていました

そんな初代ポチでしたが、ある日忽然とすがたを消し、二度と戻ってくることはありませんでした

 

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かたや2代目ポチは、知り合いからもらい受け、予防注射も登録もされた、れっきとした飼い犬でした

庭に犬小屋もつくってもらい、毎日こどもたちと楽しく遊んでいました

家からはなれて冒険などできない、臆病な性格でした

そんな2代目ポチでしたが、ある日なんの前触れもなく急変し、あっけなく亡くなりました

 

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すっかりオジサン&オバサンになったS少年&姉たちのこころの中には、こどもの頃二匹のポチにかけたたくさんの愛情と、たのしい思い出が残っています

姉たちもやがて結婚し、それぞれ家庭を築きましたが、ハスキーを19才まで育てたり、聴導犬さながらのシーズーとくらしたりしてきました

 

そして今、Sオジサンは、ちょっぴりビビリな犬、シェルティーのラン吉とくらしています

「ラン吉、お前、ひょっとして、ポチの生まれ変わりか?

臆病なところ、ポチとそっくりだものなあ・・・

それにしても、今のわんちゃん達は、みんな幸せだよなあ・・・

毎日おいしい物をいろいろともらって、体もきれいにしてもらって・・・

昔の犬たちは、今からおもえば本当にかわいそうだったよ・・・」

そんな言葉が、ついつい口をついてでてきました

 

ラン吉ママ(Sオジサンのつれあい)が、それを聞きとって物語にしました

多少の食いちがい等は、ご容赦おねがいいたします

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* * 最後に、ラン吉ママより * *

 

現代でも、けしてしあわせとはいえないペットがいます

遺棄、虐待、悪徳なブリーダー、多頭飼い崩壊, etc...

ペットが健康でしあわせに生きる権利をふみにじる、残酷で気の毒な話はあとをたちません

 

ペットと飼い主との関係は、この世にひとつしかない絆のはず

ペットは家族、、ヒトのわが子とおなじです 

親がわが子に願うのは、健やかにしあわせに生きてほしい、ただそれだけ

ましてや、自分より先に亡くなるわがペットであれば、一緒に生きていられる間に、惜しみなく、ただ愛情をそそぐだけ

 

「なにも特別なことなんて、できなくっていいからね・・・

一緒にいられるだけでしあわせだから、見かえりなんていらないよ

ただ、一日でも長く元気でいて、見あげて尻尾をふってくれるだけでいいんだよ」

 

ヒトもペットも愛し愛され、今を大切によりしあわせに、みんなが生きていかれますように・・・

 

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ながい連載となりました「ポチの思い出ものがたり」でしたが、最後までお読みくださったみなさまには心よりお礼申しあげます。

どうもありがとうございました。

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次回は、番外編「トチの思い出ものがたり」です

Kさんが子どもの頃に飼っていた秋田犬「トチ」の思い出話をご紹介します

ペットの数だけ、思い出ものがたりがありますね

(番外編があるのは、連載もののお約束・・・

どうか、おつき合いいただきますよう・・・)