シェルティー ラン吉

拙者シェルティーラン吉でござる ラン吉のランは「団らん」のラン 一度しかない今日もろもろをラン吉ママがしたためまする

「仮称 メイちゃんの保護ストーリー 5」 ポチの思い出ものがたり-番外編- 2

2014-05-29 00:58:44 | ポチの思い出ものがたり

そんなこんなの「メイちゃん」の保護騒動は、近所や犬なかまの間でも、ちょっとした事件として知られました

N子さんの人生にとっても、大きなできごとの一つでした

「メイちゃん」がアパートの廊下で閉じこめられていたキャリーは、N子さんにはなかなか捨てることはできませんでした

「ひょっとして、メイちゃんは新しい飼い主になつかずに、戻ってくるかもしれない・・・

そうなったら、このキャリーでお迎えに行かなくちゃいけないわね・・・

いつか、そんな時がくるかもしれない、きてほしい・・・」

N子さんは、あわい期待をこめて、そのキャリーを大切に保管していました

 

でも、一月たっても二月たっても、スナックのママさんからも、あたらしい飼い主からも、N子さんにはなんの連絡もありませんでした

N子さんは、ついに「メイちゃん」との再会をあきらめて、そのキャリーを粗大ごみに出しました

時がすぎればまるで何事もなかったかのように、N子さんにも、犬散歩のなかまたちにも、また元のとおりの生活がもどりました

 

そんなことがあって半年ほどたった時、あの「メイちゃん」を新しい飼い主に引きあわせてくれたスナックのママさんと、N子さんは、ばったり町で会いました

スナックのママさんは、N子さんにむかい、一気に話しはじめました

「N子さん、あの時はごめんなさいね

あなたとメイちゃんを、あんなふうに、無理にひき離すようなことになってしまって、申し訳なかったわ

わたしも心のそこから、本当に苦しかった

でもね、あれは、メイちゃんの幸せを優先したことだったのよ

 

メイちゃんは、人なつこいから、新しい飼い主にはじめて抱かれた時からすっかり甘えていたわ

はじめて会ったのに、こんなに甘えてくるよって、新しい飼い主さんはとてもよろこんでいた

でももし、その場にあなたがいたら、どうだったかしら・・・

たとえ一週間でも一緒にいたら、メイちゃんは、新しい飼い主よりもあなたを選ぶに決まっていた

あなたの足元に走りよって、くんくんと甘える犬の姿をみたら、新しい飼い主さんはどう思ったかしら・・・

この犬は新しい自分たちのもとに来るよりも、N子さんの家のほうがいいのかな??

新しい飼い主さんに、もしもそんな迷いがあったら、メイちゃんへの接し方にも迷いがでる

そんな中途半端に迷った接し方は、メイちゃんの幸せにはつながらないわ

メイちゃんは、あなたがあの場所にいなかったからこそ、新しい飼い主さんのもとにすんなりと甘えることができたのよ

あなたにはつらい別れ方になってしまったけれど、メイちゃんと新しい飼い主には、幸せな出会いだったはず

けっして、あなたがメイちゃんに未練をのこさないように、という気持ちからではなかったの」

 

ママさんの話によれば、メイちゃんは、新しい飼い主のもとで、それはそれは大切に育てられているということです

「仮称 メイちゃん」は、新しく正式な名前をもらって、今は「アンズちゃん」と呼ばれているそうです

 

「アンズちゃん」になった「仮称 メイちゃん」、今のくらしはどうでしょう

どんなに暮らしがかわっても、放置されて苦しんでいた時にむかえに来てくれたN子さんのやさしさと愛情をわすれてはいないはず

ひょっとして、こんなふうに思っているかもしれませんね・・・

 

「捨て犬だったわたしを抱きしめ、愛情いっぱいに家族としてむかえてくれた、神様のようなN子さん

わたしを受け入れてくれて、ありがとう、ありがとう、ほんとうにありがとう

なのに、わたしのせいで、あなたには色々とつらい思いまでさせてしまったのね

ごめんなさい、ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい

N子さんに会いたい、会いたい、今でも会いたくてしかたないの

でも、たとえ会えなくても、N子さんがわたしを愛してくれた一週間のご恩はけっして忘れるものではありませんよ!!!」

 

** ラン吉ママの独白 **

この捨て犬の放置事件は、まさに、我が家の目の前でおこったことでした

もし、「アンズちゃん」がN子さんに会う時があったら、きっとメチャメチャ甘えちゃうでしょうね

そんな時には、今の飼い主さん、「アンズちゃん」をゆるしてあげてくださいね

 

このお話はこれでおしまいです

おつきあいくださったみなさま、どうもありがとうございました

犬猫をはじめ、不幸に生きる動物たちが、すこしでも減ることを願ってやみません

 


「仮称 メイちゃんの保護ストーリー 4」 ポチの思い出ものがたり-番外編- 2

2014-05-15 00:16:55 | ポチの思い出ものがたり

「仮称 メイちゃん」は、N子さん家族のもとで、まるでわが孫のようにたっぷりの愛情をうけて、安心して暮らしはじめました

ところが、一週間ほどした時のことです

おしゅうとめさんが、N子さんに言いました

「わたしは90歳をすぎて、命ももうそんなに長くはない

体もあちこちつらいし、天国にいる夫から早くお迎えが来ないかなとおもうこともある

なので、老いて死にむかう犬が目のまえにいるのは、つらくて耐えられない・・・

犬の面倒をみてあげることもできそうにないし・・・

この犬をひきとってうちで飼うのは、やめてもらえないかしら・・・

前のシロちゃんが死んだ時のことも頭にうかんで、はなれないの・・・」

 

このように言われては、家庭内の平和を最優先にしてきたN子さんは、いくらかわいい保護犬のためとはいえ、自分のわがままを貫くことはできません

夫は「メイちゃん」をほんとうの家族としてむかえようと何度も提案しましたが、高齢のおしゅうとめさんの心はかたくなでした

こうなっては、はやく新しい飼い主をみつけて、「メイちゃん」のおうちを確保しなくてはなりません

N子さんは、一日に何回も犬をつれて散歩にでかけては

「この子は、今うちで保護している捨て犬です、どなたか飼ってくださる人はいませんか」

すれちがう人みんなに声をかけて、新しい飼い主さんをさがしました

 

すると、この話をききつけた近所のスナックのママさんが、さっそく新しい飼い主候補さんを紹介してくれました

スナックの常連さんが最近飼い犬を亡くしてさみしくて、新しい飼い犬をほしがっているというのです

ママさんのお店にその人が来ているというので、N子さんはさっそく「メイちゃん」をつれて行くことになりました

が、その時、スナックのママさんはキッパリ

「お店の中には入らないでちょうだい、メイちゃんは預かっていくわね」

と言って、メイちゃんを抱くと、すたすたとお店にはいり、戸をしめようとします

「あの、もしも、その人とうまくいかなかったら、うちでも飼えるので、この子をかえしてください!

キャリーも預かっていますから、いつでも迎えにいきますから!」

N子さんは、スナックの店中にむかって、そう叫ぶのが精いっぱいでした

目のまえでメイちゃんを連れていかれ、お店の戸もしめられてしまい、あまりに急なことで一体なにがおこったのか・・・

N子さんは、心の準備もなく、お別れのキスもできないまま、メイちゃんとひき離されてしまい、ただただ茫然としてしまいました

いくら、あたらしいおうちがメイちゃんに必要だったとはいえ、こんなにも無情な別れがあるでしょうか・・・

 

自宅のまえのアパートから保護して一週間ほど、N子さんはひたすら、メイちゃんに愛情をそそいできました

かつての飼い犬「シロちゃん」にそっくりの子が、突然ふってわいたかのように目のまえに現れたのです

N子さんにとっては、この一週間におこったことが、まるで奇跡のようでした

アパートの廊下に放置され狂ったようにほえていた声が、実は、小さな白犬の悲痛のさけびだったとわかった時・・・

はじめてその犬を抱き上げた時の、甘えた声とぬくもりに流した涙・・・

人なつこく、抱っこをせがむまなざし、その無条件の愛くるしさといったら・・・

N子さんは、短い間でしたが、心のそこからメイちゃんをいつくしんできました

それが、突然メイちゃんが手元からいなくなり、N子さんは夜通し泣きました

 

翌朝、目のはれあがったN子さんをみて、おしゅうとめさんも泣きました

「あなたにつらい思いをさせようとしたわけじゃないのよ・・・

でも、あなたをこんなに悲しませてしまって・・・

ごめんなさいね、ごめんなさい・・・」

N子さんとおしゅうとめさんは、かわす言葉もなく、ひたすら一緒に泣きつづけました

 

N子さんの家から、もう「メイちゃん」はいなくなってしまったのです・・・

 


「仮称 メイちゃんの保護ストーリー 3」 ポチの思い出ものがたり-番外編- 2

2014-05-06 23:54:32 | ポチの思い出ものがたり

N子さんが急いで家にもどると、夫もおしゅうとめさんも、そろって玄関にでて待っていました

ふたりとも、家の前でおこったただならぬでき事を心から心配していたのです

N子さんは、アパートの女性からきいたことと、その犬の愛らしい様子を、ありのままに話しました

N子さんの夫は、かつて大切に育てた「シロちゃん」の面影をなつかしみ、一も二もなく、その犬を引きとることに賛成しました

かくして、そのかわいそうな放置犬は、何ごともなかったかのように、すんなりとN子さん家族のもとで暮らすことになったのです

 

N子さんは、その犬がやってきた季節の五月にちなんで、仮の名前として「メイちゃん」となづけました

「仮称 メイちゃん」は、虐待されて人間不信におちいった犬とはまったくちがう、それはそれは人なつこい子でした

「メイちゃん」は、N子さんがはじめてアパートの部屋で抱きあげた時とおなじように、当りまえのように、だれにでも抱っこをせがむ甘えん坊だったのです

N子さんの家では、夫もおしゅうとめさんも、この犬をかこんで、なごやかな時をすごしていました

 

が、本当の名前ではない、犬に仮の名前をつけたN子さんが思うには・・・

「この犬にも、今までの飼い主がいるのは間違いない」

「もしかしたら、飼い主が犬を返してほしいと言ってくるかもしれない・・・」

「でも、元の飼い主がこの犬を捨てたのだとしたら、そんな飼い主にこの子は返せない」

「でも、ひょっとして、この子がだれかに盗まれでもして、飼い主がさがしているなら、やはり返してあげなきゃいけない」

「いえいえ、まるでシロちゃんの生まれ変わりのようなこの子は、だれにも渡さない、わたしが育てる」

「あー、だめだめ、自分の都合で決めちゃだめ、この子にとっての幸せが一番なんだから・・・」

 

N子さんは様々な思いをいだきながらも、「仮称メイちゃん」をつれて、毎日近所の公園を散歩しました

そして、「この犬を知りませんか、この犬の飼い主を知りませんか」と、すれちがう犬散歩の人みんなに尋ねました

犬散歩のなかまたちはこの犬を写メして、友だちに転送したりして、情報をあつめようとしました

N子さんのしらないうちに、公園の犬なかまの間には、この保護犬の話がまたたくまに広がっていました

 

でも、この犬や飼い主を見たことがあるという人は、ひとりも現れませんでした

「メイちゃん」は、保護当時、首輪はつけていましたが、鑑札など連絡先につながる物はつけていませんでした

また、N子さんは「メイちゃん」を動物病院でみてもらいましたが、その結果、年齢は7歳くらいで、ながいこと手入れされていなかったことがわかりました

「それではやはり、この子は放置虐待された、ふびんな捨て犬ではないか」ということになり、この子にとっての幸せを願って、N子さんは堂々とこの犬を飼う決心をあらたにしたのでした

 

が、そんな時・・・

 


「仮称 メイちゃんの保護ストーリー 2」 ポチの思い出ものがたり-番外編- 2

2014-05-01 12:21:17 | ポチの思い出ものがたり

N子さんがそっと様子をみていると、アパートの奥からおまわりさんがでてきて、無言でパトカーに乗ると、しずかに走りさっていきました

アパートの廊下をのぞくと、犬の乗せられていたキャリーはなくなっています

N子さんは、まる半日もほえていた犬のことが気になってたまりません

普段からそのアパートの人とはおつきあいがありませんが、おもいきって部屋をノックしてみました

中からでてきたのは、若い女性でした

部屋の中には、あのキャリーがおいてあるのが見えます

N子さんはおもいきって、犬のことをたずねました

すると、その女性が言うのには

「わたしはこの犬のことはまったく知らないんです

部屋の前におかれていたのにも、身に覚えはまったくありません

仕事から帰ったらこの犬のキャリーがドアの前にあったので、どうしていいか分からずに110番したんです

この犬の捜索願いか、盗難届けでもでているかと思ったんですけど、そういうものはでていないそうです

かわいそうにね、この子、捨てられちゃったのかもしれない・・・

でも、このまま犬をおまわりさんに手渡せば、保健所におくられて殺されてしまうとおまわりさんに言われまして、そんなひどいことはできませんでした

実家では犬を飼っていて、わたしも犬は好きなのですが、このアパートはペット禁止なので私には飼えません

今晩一晩はわたしが保護することで、おまわりさんには引きとってもらいましたけど、だれかかわいがってくれる人はいないかしら」

 

N子さんが部屋のなかをみると、「シロちゃん」にそっくりな犬は、部屋の中からこちらの様子をうかがっています

狭いキャリーから解放されて部屋にいれてもらったその犬は、大声で狂ったようにほえていた時とはちがって、愛らしいまなざしでN子さんをみつめました

N子さんが、いとおしさから思わず「おいで」と呼ぶと、その犬は、差しだしたN子さんの手の中にとびこんできました

そしてN子さんが腕のなかにだきあげると、その子はクーンとはなをならして、N子さんにあまえてきたのです

N子さんは、あの「シロちゃん」が天国から帰ってきたと確信し、涙があふれてとまりません

「この子をひきとって育てるのは自分以外にはいない」と心にかたく誓いました

「あすの朝、この子を迎えにきます」と話して、アパートの女性とおたがいの電話番号をかわし、警察にもそのように連絡しておいてもらうことにしました

家族のだれにも相談しないで、N子さんはその犬を引きとる約束をしてしまいましたが・・・