皆様こんばんは。
本日は昨日の名人戦の裏で行われていた対局をご紹介します。
第42期名人戦最終予選、余正麒七段(黒)と清成哲也九段の対局です。
来期の名人挑戦を目指す戦いですね。
大熱戦となりましたので、皆様にもご紹介しましょう。
なお、総譜は幽玄の間でご覧頂けます。
1図(実戦白8)
白△はあまり見慣れない手かもしれませんが、古くからある手です。
1960年の橋本昌二九段と梶原武雄九段の対局にも出現しました。
その碁は、次に黒Aとじっくり打った所で、なんと封じ手!
有名な「今日の蛤は重い」の1局ですね。
その話は、中山典之七段の「実録囲碁講談」等に収録されています。
本局も確か、殆ど配置は同じ筈です。
2図(実戦黒9~黒17)
ところが実戦は余七段、黒1から強引に白を押さえ付けていきました。
現代の棋士は、序盤から厳しい手を打っていく傾向があります。
白も2と強く対応したので、必然的に戦いが始まりました。
3図(実戦白30)
その後、白1と黒に食い付いていったのも凄い手です。
この手では白Aとでも打っておけば無難ですが、守るだけでは不満とみたのでしょう。
ベテランの清成九段も、非常に気合が入っている事が感じ取れます。
4図(実戦黒31~黒39)
黒3、5に石が来て、中の白が弱くなっています。
しかし、白8と当てて黒の眼を奪い、あくまで黒に食い付いていきました。
5図(実戦白40~白48)
白3~7は、所謂「車の後押し」で、悪手の見本とされます。
あえてそれを打ったのは、白9に先行するためです。
右辺の黒4子を狙っています。
6図(実戦黒49~白54)
黒1と守りましたが、白2、4を打っておいて、さらに白6と追及しました。
黒AやBと手を入れてください、という手です。
7図(実戦黒55~黒61)
が、目一杯の打ち方を好む余七段は、ただ生きるだけの手は打ちません。
黒1、3と逆に白に迫りました!
黒7までと進み、白Aなら黒Bと生きる手が、白への攻めにもなります。
それでは白は何をやっているのか分からないので・・・。
8図(実戦白62~白66)
勢い、白1と黒の眼を取りに行きました!
黒も2と反発して、白5子との攻め合いに発展しました。
序盤早々、大変な事になったものです。
9図(実戦黒85)
その後、こんな形になりました。
右辺は黒Aと当てれば、白Bと取ってコウになります。
しかし、黒には大きなコウ立てが見当たりません。
そこで、黒△とコウ立て作りにいきました。
10図(変化図)
白1と受ければ、そこで黒2を決行しようという事です。
右辺を取られても、黒4、6と連打すれば黒良しです。
外側が真っ黒ですし、左上の形も白がバラバラです。
11図(実戦白108~白110)
その後、実戦もやはりコウになりました。
白は右辺の黒を取っても、コウ立てでどこかに連打されては、勝てそうもない状況になっています。
そこで、逆にコウを譲り、白1、3と切っていきました!
黒がコウに勝った事で、中の白は黒Aと打たれると眼が無くなります。
しかし、その前に要の黒△、〇、✖から連なる一団のいずれかを取ってしまおうというのです。
白、決死の勝負手です!
12図(実戦白126)
その後、白△と打った場面です。
中の黒が危なくなっていますし、下辺の黒もはっきり生きている訳ではありません。
そして中央の白も、Aと打てば生きられます。
白にチャンスが来たように見えましたが・・・。
13図(実戦黒127~黒131)
ここで何と、黒1~5と反撃!
しかし、中の黒は大丈夫なのでしょうか?
14図(実戦白132~黒141)
白1、3で、中の黒6子は取られました。
しかし黒10まで、被害を中の6子だけに限定しては、あっという間に黒の勝ちが決まりました。
黒はコウに勝ったので、既に大きな利益を挙げているのです。
鮮やかな捨て石作戦で、白投了となりました。
15図(投了後)
投了後、白1から追及しても、うまくいきません。
攻め合いの関係で白7に手を入れなければならず、黒8に回られてしまいます。
その後白9と切っても上手く行かない事は、勿論両者読み切りです。
次代を担う若手と百戦錬磨のベテランの、物凄い力比べの一局でした。
勝った余七段、次はこの碁に勝った平田智也七段と、名人リーグ入りをかけて戦います。
どんな戦いになるのか、楽しみに待ちたいと思います。
本日は昨日の名人戦の裏で行われていた対局をご紹介します。
第42期名人戦最終予選、余正麒七段(黒)と清成哲也九段の対局です。
来期の名人挑戦を目指す戦いですね。
大熱戦となりましたので、皆様にもご紹介しましょう。
なお、総譜は幽玄の間でご覧頂けます。
1図(実戦白8)
白△はあまり見慣れない手かもしれませんが、古くからある手です。
1960年の橋本昌二九段と梶原武雄九段の対局にも出現しました。
その碁は、次に黒Aとじっくり打った所で、なんと封じ手!
有名な「今日の蛤は重い」の1局ですね。
その話は、中山典之七段の「実録囲碁講談」等に収録されています。
本局も確か、殆ど配置は同じ筈です。
2図(実戦黒9~黒17)
ところが実戦は余七段、黒1から強引に白を押さえ付けていきました。
現代の棋士は、序盤から厳しい手を打っていく傾向があります。
白も2と強く対応したので、必然的に戦いが始まりました。
3図(実戦白30)
その後、白1と黒に食い付いていったのも凄い手です。
この手では白Aとでも打っておけば無難ですが、守るだけでは不満とみたのでしょう。
ベテランの清成九段も、非常に気合が入っている事が感じ取れます。
4図(実戦黒31~黒39)
黒3、5に石が来て、中の白が弱くなっています。
しかし、白8と当てて黒の眼を奪い、あくまで黒に食い付いていきました。
5図(実戦白40~白48)
白3~7は、所謂「車の後押し」で、悪手の見本とされます。
あえてそれを打ったのは、白9に先行するためです。
右辺の黒4子を狙っています。
6図(実戦黒49~白54)
黒1と守りましたが、白2、4を打っておいて、さらに白6と追及しました。
黒AやBと手を入れてください、という手です。
7図(実戦黒55~黒61)
が、目一杯の打ち方を好む余七段は、ただ生きるだけの手は打ちません。
黒1、3と逆に白に迫りました!
黒7までと進み、白Aなら黒Bと生きる手が、白への攻めにもなります。
それでは白は何をやっているのか分からないので・・・。
8図(実戦白62~白66)
勢い、白1と黒の眼を取りに行きました!
黒も2と反発して、白5子との攻め合いに発展しました。
序盤早々、大変な事になったものです。
9図(実戦黒85)
その後、こんな形になりました。
右辺は黒Aと当てれば、白Bと取ってコウになります。
しかし、黒には大きなコウ立てが見当たりません。
そこで、黒△とコウ立て作りにいきました。
10図(変化図)
白1と受ければ、そこで黒2を決行しようという事です。
右辺を取られても、黒4、6と連打すれば黒良しです。
外側が真っ黒ですし、左上の形も白がバラバラです。
11図(実戦白108~白110)
その後、実戦もやはりコウになりました。
白は右辺の黒を取っても、コウ立てでどこかに連打されては、勝てそうもない状況になっています。
そこで、逆にコウを譲り、白1、3と切っていきました!
黒がコウに勝った事で、中の白は黒Aと打たれると眼が無くなります。
しかし、その前に要の黒△、〇、✖から連なる一団のいずれかを取ってしまおうというのです。
白、決死の勝負手です!
12図(実戦白126)
その後、白△と打った場面です。
中の黒が危なくなっていますし、下辺の黒もはっきり生きている訳ではありません。
そして中央の白も、Aと打てば生きられます。
白にチャンスが来たように見えましたが・・・。
13図(実戦黒127~黒131)
ここで何と、黒1~5と反撃!
しかし、中の黒は大丈夫なのでしょうか?
14図(実戦白132~黒141)
白1、3で、中の黒6子は取られました。
しかし黒10まで、被害を中の6子だけに限定しては、あっという間に黒の勝ちが決まりました。
黒はコウに勝ったので、既に大きな利益を挙げているのです。
鮮やかな捨て石作戦で、白投了となりました。
15図(投了後)
投了後、白1から追及しても、うまくいきません。
攻め合いの関係で白7に手を入れなければならず、黒8に回られてしまいます。
その後白9と切っても上手く行かない事は、勿論両者読み切りです。
次代を担う若手と百戦錬磨のベテランの、物凄い力比べの一局でした。
勝った余七段、次はこの碁に勝った平田智也七段と、名人リーグ入りをかけて戦います。
どんな戦いになるのか、楽しみに待ちたいと思います。