白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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太閤碁

2017年11月05日 22時45分53秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は久しぶりに、幽玄の間での棋士とDeepZenGoの対局をご紹介します。
連日対局を続けているDeepZenGoですが、いつの間にか互先以外の対局も可能になっていたようですね。
今回ご紹介するのは、六浦雄太七段がコミ無しの黒を持った1局です。



1図(テーマ図)
初手天元から、黒△まで・・・。
これは黒番のマネ碁、通称太閤碁ですね!
初手で碁盤の中で唯一対称点の無い天元を占め、後は相手の手を真似(対称の位置に打つ)していけば、最後は天元の石の分だけ勝てるだろうという打ち方です。
ただし、盤面で有利であってもコミを出すと負けるので、黒番ではコミ無し碁限定の作戦ですね。

対人では嫌われる作戦ですが、DeepZenGo相手なので遠慮無く用いました(笑)。
これで勝とうというわけではなく、DeepZenGoがどう対処するのかを見ようという実験でしょう。

太閤碁という名前は、豊臣秀吉が本因坊算砂(後の初代名人)に対して、置石無しでマネ碁を打って困らせたという逸話が由来と言われています。
もちろん、これは後世の創作でしょうが・・・。
ただ、織田信長や徳川家康などの囲碁愛好家の中で、秀吉ならやってもおかしくないとも思えますね(笑)。

さて、白としてはどこかでマネ碁を打開しなければいけませんが、その方法は色々とあります。
共通しているのは、天元の石の価値をゼロもしくはマイナスにすることですね。
そして、DeepZenGoの選んだマネ碁対策は・・・。





2図(実戦)
白1のツケ!
直接天元の石に働きかけていきました。
これはヒカルの碁の作中でも用いられたもので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
こうやられれば、黒は早々にマネを止めざるを得ません。

互先でのマネ碁でも、DeepZenGoはかなり早い段階でマネ碁を打開しました。
やはりマネ碁回避のためのプログラムが組み込まれているのでしょうね。
この手はマネ碁を止められると損になりそうな気もしますが、大した問題ではないということでしょうか。





3図(変化図1)
もし黒が真似を続けると、このようなことになります。
黒5までとなると、黒△が何の役にも立たない手になってしまいました。

この後は普通に打っていても、もはや白の負けはありません。
ですが、さらなる後続手段もあります。





4図(変化図2)
白1以下、さらに中央での着手を続けてみます。
白11まで進むと・・・あれれ?





5図(変化図3)
あっ・・・。

ヒカルの碁とは手順や形が違ったかもしれませんが、大体こんな感じで嵌ります。
これで取られたら、作中の対局相手のように茫然とするしかないでしょう(笑)。