白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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5年前の真実

2016年04月26日 23時59分59秒 | 対局
皆様こんばんは。
本日は私の対局を題材にします。



私の白番です。
黒は盤面で少ししか勝てず、コミがかりでの白勝ちがはっきりしている状況です。
黒1にAと取っていれば味が良かったですし、黒3にはBと打っていれば大丈夫でした。
秒読みに入っていたこともあるでしょうが、勝利目前で気が緩んでいたのでしょう。




黒1と打たれて飛び上がりました。
白2と打つのは黒3があります。
一見白4で大丈夫のようですが・・・。





黒1でAとBの切りを両睨みにする手があります。
ここで白2で両方の切りを凌げそうですが、黒にはうまい手があります。





またもや出ました、3本下がりです!
以前から当ブログをご覧の皆様は閃かれたでしょうか。
AとBが見合いになり、白潰れです。




やむなく白1と被害を最小限に抑えようとしましたが、話はまだ終わりません。
黒4の切りが入ったことで新たな問題が生じました。





今度は黒1のハネがうまい手です。
Aの切りがあるので白2と打つしかありませんが・・・。




シボリが決まり、コウに持ち込まれてしまいました。
普通ならこれで終わりですが、白にコウ材が多いためひょっとしたら逆転には至っていないかもしれません。
この後も色々あって結果は白の半目勝ち、運が良かったと思っていました。
しかし・・・




この対局は5年前に行われました。
今冷静になって眺めてみると、黒1と三々にツケる手がありました。
白2と打つしかありませんが、黒3が先手です。
そして黒5以下の基本死活で黒生きとなります。
白地の中でただで生きてしまってはもちろん大戦果、黒の大差勝ちです。

私が勝利目前で油断したように、黒も私のミスを見て喜び過ぎてしまったのでしょう。
最善の手を探すべき所を、目の前に見えている手に飛びついてしまいました。
碁に勝つには技術だけでなく精神面も重要です。
それを再認識させられるテーマでした。