皆様こんばんは。
まずはお知らせです。
明日11/29(火)は、有楽町囲碁センターにて、午前11時から指導碁を行います。
ご都合の合う方は、ぜひお越しください。
さて、本日は第18回農心杯第8戦が行われました。
6連勝中の范廷鈺九段を止めるべく、村川大介八段が出場しましたが、残念ながら敗退しました。
十分に勝つチャンスのある内容だったと思いましたが・・・。
それでは、振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、柳時熏九段の解説付きで中継されました。
1図(実戦白4~黒9)
范九段の黒番です。
村川八段、近年では珍しい、目外しを採用しました。
黒6の後、白Aと伸びるのが、何十年も前からある定石で・・・。
2図(変化図)
白1と伸びれば、黒8までとなります。
黒は隅を確保し、白は勢力を築く分かれです。
しかし、村川八段は、こう打つつもりはありませんでした。
3図(実戦白10)
実戦は、白1のハネ出し!
この手には、黒Aの切りから中央に頭を出す手順があり、長年白が良くないと思われてきました。
しかし、最近研究されているようです。
黒Aには白BかCで、隅の黒の根拠を脅かす狙いです。
村川八段、この大事な一戦のために準備してきたのでしょう。
4図(実戦黒11~白20)
実戦は黒が前図黒Aからの進行を嫌い、白10までの分かれとなりました。
この分かれは白の勢力が大きく、なかなかのものかと思いました。
但し黒1の存在が問題で、この石が役に立つか、立ち枯れになるかが大きなポイントになります。
5図(実戦黒21~黒33)
その後、右上で戦いが始まりました。
黒13の後、白が上辺の黒にどうやってプレッシャーをかけるか、悩ましい場面ですが・・・。
6図(実戦白34~白36)
白の選択は、黒に最も厳しく迫る、白1、3!
村川八段、気合が入っています!
7図(実戦黒37~黒41)
黒は引き籠って生きるようではつらいので、黒1、3と反撃したのは当然です。
黒5の後、黒Aと右上の白を閉じ込められてはいけないので、何か頭を出す必要があります。
皆様なら、どう打ちますか?
8図(変化図その1)
白1、3なら形が綺麗で、所謂筋の良い打ち方です。
但し、黒Aから強引に分断して来る可能性があります。
9図(変化図その2)
それともう一つ、黒2、4と中央にはみ出される可能性もあります。
黒6となると、もう上辺の黒へは攻めが利きません。
村川八段、前図と本図、どちらかを嫌ったのでしょう。
10図(実戦白42~白48)
それにしても、実戦の白1、3とは!
ピンと来ない方が多いと思いますが、プロの感覚ではこの白1、3は、物凄く筋の悪い打ち方なのです。
白7まで、黒の両側からへばり付いていく打ち方は、左右どちらを大事にしたいか分からない、所謂兄弟喧嘩の状況を招いてしまうのです。
しかし、村川八段は、そんな事は承知の上です。
黒にAと繋ぐ暇を与えまい、という事でしょう。
村川八段の意気込みが伺える、必死の打ち方です。
11図(実戦黒49~黒53)
案の定、黒3、5の強襲が来ました!
AとBの2つの切断を狙う、両ノゾキです。
白はどちらを繋ぐべきでしょうか?
12図(変化図)
上辺の方が大きいと、つい白1と繋ぎたくなりますが、これはいけません。
黒2と出られ、白は進退自由になります。
白3には黒4の強手が成立し、分断されてしまいます。
黒△と白△の交換が、絶妙に効いていますね。
13図(実戦白54~白62)
という訳で、実戦の白1が正解です!
右上の白3子が分断されてしまいますが、白9まで、右辺で攻勢に立ちました。
こうなると、白△が黒のダメを詰める、絶好の一手になっています。
また、右上の白もいずれAに回れば、ただでは取られません。
白、苦しい状況から上手く切り返しました。
14図(実戦黒63~黒71)
黒も、白の右辺進出を、黙って眺めてはいませんでした。
黒7、9が強烈な反撃!
どちらかが潰れかねない、危険な状況になりましたが・・・。
15図(実戦黒95)
黒△までお互いに脱出、見事に分かれました!
幽玄の間解説の柳九段も指摘していましたが、ここで白Aなら黒7子の動き方が難しく、白優勢だったのではないでしょうか?
16図(実戦白96~黒97)
実戦はここで白1と打ちましたが、これは村川八段らしからぬ、中途半端な手だった気がします。
黒2がぴったりで、白は打つ手に困りました。
17図(実戦白98~黒105)
白1、3と打ち、黒4と突き出させたのは非常手段です。
白7まで、なんとか中央の黒を取る事はできましたが、とうとう黒△が活躍する事になってしまいました。
黒8まで、白4子を持っていかれてては大損害です。
とはいえ、まだまだ勝負はこれからと思っていたのですが、この後右上白3子の動き出しにも失敗し、負けを早めてしまいました。
後半から村川八段にしては考えられないような内容でしたが、プレッシャーが原因でしょうか・・・。
無念の敗退で、日本チームは井山裕太六冠を残すのみとなりました。
明日の第2ラウンド最終戦は、范九段と、韓国チーム最後の砦、朴廷桓九段が対局します。
どちらが勝つにしても、優勝の行方は第3ラウンドに持ち越しとなります。
第3ラウンドは2月21日(火)に開幕し、井山六冠が登場します。
残りのメンバー相手に5連勝というのは、個人での世界戦優勝より難易度が高いです。
しかし、なんとか踏ん張って欲しいですね。
井山六冠の奮闘に期待しましょう!
まずはお知らせです。
明日11/29(火)は、有楽町囲碁センターにて、午前11時から指導碁を行います。
ご都合の合う方は、ぜひお越しください。
さて、本日は第18回農心杯第8戦が行われました。
6連勝中の范廷鈺九段を止めるべく、村川大介八段が出場しましたが、残念ながら敗退しました。
十分に勝つチャンスのある内容だったと思いましたが・・・。
それでは、振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、柳時熏九段の解説付きで中継されました。
1図(実戦白4~黒9)
范九段の黒番です。
村川八段、近年では珍しい、目外しを採用しました。
黒6の後、白Aと伸びるのが、何十年も前からある定石で・・・。
2図(変化図)
白1と伸びれば、黒8までとなります。
黒は隅を確保し、白は勢力を築く分かれです。
しかし、村川八段は、こう打つつもりはありませんでした。
3図(実戦白10)
実戦は、白1のハネ出し!
この手には、黒Aの切りから中央に頭を出す手順があり、長年白が良くないと思われてきました。
しかし、最近研究されているようです。
黒Aには白BかCで、隅の黒の根拠を脅かす狙いです。
村川八段、この大事な一戦のために準備してきたのでしょう。
4図(実戦黒11~白20)
実戦は黒が前図黒Aからの進行を嫌い、白10までの分かれとなりました。
この分かれは白の勢力が大きく、なかなかのものかと思いました。
但し黒1の存在が問題で、この石が役に立つか、立ち枯れになるかが大きなポイントになります。
5図(実戦黒21~黒33)
その後、右上で戦いが始まりました。
黒13の後、白が上辺の黒にどうやってプレッシャーをかけるか、悩ましい場面ですが・・・。
6図(実戦白34~白36)
白の選択は、黒に最も厳しく迫る、白1、3!
村川八段、気合が入っています!
7図(実戦黒37~黒41)
黒は引き籠って生きるようではつらいので、黒1、3と反撃したのは当然です。
黒5の後、黒Aと右上の白を閉じ込められてはいけないので、何か頭を出す必要があります。
皆様なら、どう打ちますか?
8図(変化図その1)
白1、3なら形が綺麗で、所謂筋の良い打ち方です。
但し、黒Aから強引に分断して来る可能性があります。
9図(変化図その2)
それともう一つ、黒2、4と中央にはみ出される可能性もあります。
黒6となると、もう上辺の黒へは攻めが利きません。
村川八段、前図と本図、どちらかを嫌ったのでしょう。
10図(実戦白42~白48)
それにしても、実戦の白1、3とは!
ピンと来ない方が多いと思いますが、プロの感覚ではこの白1、3は、物凄く筋の悪い打ち方なのです。
白7まで、黒の両側からへばり付いていく打ち方は、左右どちらを大事にしたいか分からない、所謂兄弟喧嘩の状況を招いてしまうのです。
しかし、村川八段は、そんな事は承知の上です。
黒にAと繋ぐ暇を与えまい、という事でしょう。
村川八段の意気込みが伺える、必死の打ち方です。
11図(実戦黒49~黒53)
案の定、黒3、5の強襲が来ました!
AとBの2つの切断を狙う、両ノゾキです。
白はどちらを繋ぐべきでしょうか?
12図(変化図)
上辺の方が大きいと、つい白1と繋ぎたくなりますが、これはいけません。
黒2と出られ、白は進退自由になります。
白3には黒4の強手が成立し、分断されてしまいます。
黒△と白△の交換が、絶妙に効いていますね。
13図(実戦白54~白62)
という訳で、実戦の白1が正解です!
右上の白3子が分断されてしまいますが、白9まで、右辺で攻勢に立ちました。
こうなると、白△が黒のダメを詰める、絶好の一手になっています。
また、右上の白もいずれAに回れば、ただでは取られません。
白、苦しい状況から上手く切り返しました。
14図(実戦黒63~黒71)
黒も、白の右辺進出を、黙って眺めてはいませんでした。
黒7、9が強烈な反撃!
どちらかが潰れかねない、危険な状況になりましたが・・・。
15図(実戦黒95)
黒△までお互いに脱出、見事に分かれました!
幽玄の間解説の柳九段も指摘していましたが、ここで白Aなら黒7子の動き方が難しく、白優勢だったのではないでしょうか?
16図(実戦白96~黒97)
実戦はここで白1と打ちましたが、これは村川八段らしからぬ、中途半端な手だった気がします。
黒2がぴったりで、白は打つ手に困りました。
17図(実戦白98~黒105)
白1、3と打ち、黒4と突き出させたのは非常手段です。
白7まで、なんとか中央の黒を取る事はできましたが、とうとう黒△が活躍する事になってしまいました。
黒8まで、白4子を持っていかれてては大損害です。
とはいえ、まだまだ勝負はこれからと思っていたのですが、この後右上白3子の動き出しにも失敗し、負けを早めてしまいました。
後半から村川八段にしては考えられないような内容でしたが、プレッシャーが原因でしょうか・・・。
無念の敗退で、日本チームは井山裕太六冠を残すのみとなりました。
明日の第2ラウンド最終戦は、范九段と、韓国チーム最後の砦、朴廷桓九段が対局します。
どちらが勝つにしても、優勝の行方は第3ラウンドに持ち越しとなります。
第3ラウンドは2月21日(火)に開幕し、井山六冠が登場します。
残りのメンバー相手に5連勝というのは、個人での世界戦優勝より難易度が高いです。
しかし、なんとか踏ん張って欲しいですね。
井山六冠の奮闘に期待しましょう!