白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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小林光一名誉棋聖対大西竜平二段

2016年11月04日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は、幽玄の間で中継された対局をご紹介します。
小林光一名誉棋聖(黒)対大西竜平二段戦です。



1図(実戦黒7~黒13)
小林名誉棋聖の黒1は比較的珍しい手で、黒Aの方が多く打たれています。
隙間が広く空いているので、白2と入りたくなりますが、黒としてはこれを誘って攻める作戦でしょう。





2図(実戦白14~白16)
白1、3は、プロの碁によく出て来る、サバキの手筋です。
この手の狙いは・・・。





3図(変化図)
もし黒1と受けてくれれば、白2、4を利かし、白6で悠々と治まってしまおうという事です。
こうなっては、黒の作戦失敗です。





4図(実戦黒17~白20)
という訳で、黒1で前図白2、4を拒否したのは、プロなら当然の反発です。
ここから難解な戦いに突入しました。
ただ、小林名誉棋聖は、こういう部分戦を徹底的に研究しておく事で知られています。





5図(実戦白56)
その後白△までの分かれとなりましたが、黒が良いでしょう。
黒は30目以上の確定地を得ましたが、白の得た物がはっきりしません。





6図(実戦黒85)
後に、黒1と上辺に手を付けたのもぴったりのタイミングで・・・。





7図(実戦黒103)
黒△までとなって、もう上辺の黒は攻められません。
黒優勢でしょう。





8図(実戦黒109)
その後、黒△と利かしに行ったのは、小林流でしょう。
いかにも割り切った打ち方です。





9図(変化図)
白1に黒2を利かし、下辺の黒を強化する目的だと思います。
白を固めて勿体無いように見えますが、これで十分という事でしょう。
黒4あたりで左辺の白地を制限すれば、確かに黒地が多そうです。





10図(実戦白110)
ところが、大西二段は白1と反撃!
これには、小林名誉棋聖も意表を衝かれたのではないでしょうか?
黒Aには白Bと出られ、黒△と打った意味が無くなるので・・・。





11図(実戦黒111~白116)
黒1と左辺を破ったのは気合であり、当然でしょう。
黒5まで、左辺の白地がボロボロになるので、白としてはリスクの高い打ち方です。
しかし白6とボウシして、下辺の黒をやっつけようというのです。
流石最年少新人王、度胸が半端ではありません。





12図(実戦白168)
その後白は、左辺と下辺の黒を絡みに持ち込む事に成功しました。
最後は白△で下辺の黒を仕留め、大西二段の中押し勝ちとなりました。


本局の大西二段は、大棋士を相手にしたにも関わらず、勢いで強引に押し切ってしまった印象でした。
トップに出るためには、実力だけでなく、精神的な強さも必要になります。
将来が非常に楽しみな棋士の一人です。