「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの現代陶芸入門講座(4)…加藤卓男の赤絵湯飲み

2008年02月22日 | 陶芸
 タンポポやオオバコは、冬になると、寒さを避けて、体の体温を維持するために、ロゼット葉という形態で、地面に張り付いたようにして、冬越しをします。


オオバコのロゼット葉が、春の日に照らされていました
 
 ローラーで踏みつけられたように、ぴったりと地面に着いていたロゼットも、少しずつ地面を離れ、春の太陽の暖かさを感じ始めているようでした。


 
 今回の、私のコレクションは、加藤卓男の赤絵湯飲みです。


加藤卓男の赤絵湯飲み

 加藤卓男は、1995年に「三彩」の技術保持者として、重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定され、2005年亡くなられた陶芸家です。

 彼は、陶芸家の中でも理論家肌の人でした。正倉院三彩の復元にとどまらず、ペルシャ陶器の研究を通して、技術的に途絶えていた「ラスター彩」の再現に成功しました。

 彼の作品では、ラスター彩の器が最も評価が高く、青釉と三彩についても、技術的に優れた作品を残しています。

 いつか、彼のラスターの作品や青釉の作品を、紹介したいと思います。

 ところで彼は、本来は日展系の作家でした。多少美術に関心のある方はご存じでしょうが、日展系の作家は、芸術院会員→文化功労者→文化勲章と「進級」していきます。

 日本工芸会系の作家は、人間国宝→まれに文化勲章と進みます。したがって、加藤卓男は、日展から日本工芸会に移籍し、人間国宝になりました。

 様々な分野に残る、こんな変な日本独特の因習は、芸術の分野こそまず率先して、よしにしたらどうかと思いますが、みなさんの考えはどうでしょうか。

 それらのしがらみを嫌って、若い作家には、そうした団体に所属しないで、活躍している人たちも多く出てきました。


 今回の作品が、赤絵の湯飲みですので、「赤絵」について少し整理しておきます。

 赤絵は、赤色を主調とする多彩の上絵付のことであり、釉薬の上に、赤・緑・青などの透明ガラス質の上絵具で文様を彩色した焼物です。

 赤以外は、透明なガラス状の上絵具で、少し盛り上げて彩色されています。赤色だけは、薄く不透明な上絵具を使用して、大胆に文様が描かれています。

 加藤卓男のこの湯飲みは、白磁の生地に、平行脈の草文を、赤を主体に、緑と薄いブルーを使って勢いよく描いたものです。

 また、白磁ではなく、土物の生地に、白泥の釉薬(一般的には、黄色味がかっている)を施し、その上に赤絵を描いた作品も見かけます。

 この様な土物の赤絵には、藤本能道の茶碗や湯飲みなどがあり、その達者な筆使いが魅力でした。

 赤絵の良さは、この作品に表れているように、大胆で勢いのある簡素な文様が、食器等にマッチしていることでしょう。 赤絵の食器は、年とともに摩耗して、薄くなってきますが、それも味わいの一つです。


 私は、実は以前この赤絵の食器が好きではありませんでした。しかし、ある時、食卓に置かれた赤絵の皿が、その場の雰囲気を大変艶やかに、明るくすることを発見し、赤絵の食器が好きになりました。

 赤絵の食器ばかりですと、落ち着かない印象を受けますが、食器の一部にちょっと赤絵の器を使うと、和んだ雰囲気を演出することができるでしょう。

 最近の赤絵の食器は、伝統の文様を離れ、現代的にアレンジした簡素な文様を使ったり、ワンポイントで赤絵を使用したりして、若者にも親しまれるような作品が多いように感じます。

 日常使う食器に、赤絵の食器を取り入れて、和んだ食卓を演出してみては如何でしょうか。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (S)
2008-02-24 10:00:31
匿名で失礼します。この湯呑は加藤卓男の幸兵窯の窯物(一般品)のように思います。
箱書きまたは高台の落款があれば参考にさせてください。  よろしくお願いいたします。
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ご返答 (マッキー)
2008-02-25 10:47:21
 ご指摘ありがとうございます。
 共箱の場合、その箱書きを背景にして、作品の写真を撮るべきか迷いましたが、作品を主体に鑑賞して欲しいので、この様にしています。
 私の収集作品は、現代陶芸の老舗、もしくは大手デパートで購入していまして、出所は明らかで、共箱で購入することがほとんどです。
 若い作家の場合、共箱にすると、その費用を請求されますので、その場合のみ箱無しで購入することもあります。
 この作品も、共箱ですので、窯物ではないと確信しています。
 確かに、多くの作家で、作家物と窯物がありますので、購入時には注意が必要だと思います。
 
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