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「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの現代陶芸入門講座(32)…前田正博の色絵金銀彩の陶芸

2011年09月18日 | 陶芸

 

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今日の焼物は、独特の絵金銀彩磁器芸ファンを魅了する田正博り上げます。

白い磁器の表面をキャンバスに見立て、そこに自由奔放に描いた色絵金銀彩の絵付は、下の画像のように現代美術絵画のようです。

鉄釉陶器で人間国宝になった黒宗麿のチョーク画の陶器想させます。

しかし、陶器の表面を扇面に見立て、そこにチョイ書き風の趣の絵を描いた石黒宗麿に対して、前田正博の絵は相当手の込んだ作品に仕上げられています。

フリーハンドで描いた面白さがあり、幾何学模様も手書きで描き、金銀彩も加えて、現代的な感性を感じる作品となっています。



かつての陶磁器にはなかったティエールは魅力です。

白い磁器の表面に洋絵具で絵付し、それを焼成する行程を繰り返し、独特の肌合いを持った前田正博の焼物が完成します。

しかし実際器として使った場合、磁器の表面に塗られた顔料の安定性は保証できるのか、ちょっと不安にもなります。 


色絵金銀彩酒器 ぐい呑み 1994年
 


色絵金銀彩酒器 ぐい呑み 1994年

上の二つのぐい飲みは、日本橋三越で購入したものですが、色合いから夫婦酒盃として使うことができるでしょう。

磁器の表面に塗られた顔料の安定性について、私には苦々しい経験があります。

芸術院会員でもあった河井誓徳の磁器でできた食籠を三越本店で購入し、それを実際に使用しました。

使った後、その器を洗っているうちに、金彩が器から浮き上がってきたというとんでもない経験が、私にはあります

金銀彩の顔料を、マジックかフェルトペンか何かで、焼成した後の磁器の器の上に塗ったのかと考えてしまうほどで、けっこうな価格のその作品は、棚の奥にしまったまま今はどのような状態になっているか、見る気にもなりません。

話はだいぶずれてしまいましたが、金銀彩は、最後に焼き付けるのだから、良い方に解釈すれば、焼成し忘れたのかもしれません。


色絵金銀彩香炉 1993年

前田正博の師である本能道釉描加彩いう技法を用いた色絵磁器の第一人者でした。

私は藤本能道の陶箱・陶器の茶碗・版画・書画額などかなりの数点を所有していました。

箱や偏壺能道にとって具象画色絵磁器の絵付けにはもってこいの対象でした。

そうした師の作風とは全く異なり、前田正博の作品は、色絵磁器といっても、いわば抽象画またはさまざまな文様の絵付けであり、の形状は全く自由り、その器の全面にこれでもかと彼の世界が絵が描かれます。

そういった意味で、器の形状とその表面に描かれる色絵の世界のコラボレーションを、作家も鑑賞者も楽しむことができます。

象嵌による多彩な文様と器の形状で陶芸ファンを魅了した加守田章二・和太守卑良と、そういった点で前田正博は一脈通じるものがあります。


色絵金銀彩筒 1991年

 第五十六回の日本伝統工芸展において、日本工芸会総裁賞を受賞した「色絵銀彩角鉢は、落ち着いた伝統的な形状と色彩が特色です。

その作風は、今後の彼の方向性を示すものなのか、又は日本工芸会での評価確立のためなのかは、私には分かりません。

しかしこの受賞後、その評価も当然に加味されて、今年2011年前田正博は日本陶磁協会賞を受賞し、現代陶芸に確固たる足跡を残すこととなりました。

伝統回帰の作風は、彼の作品のもう一つの側面を表しているとともに、日本工芸会の有力会員として、次なる目標は「色絵磁器の人間国宝」ということになるのでしょうか。


色絵金銀彩輪花鉢 1992年
 

色絵磁器の世界に、新風を巻き起こした前田正博は、個性的で現代的な感覚の作品群を世に送り出し、最近は陶芸家としては珍しく東京・六本木に工房を構えて活動しています。

確かに現代陶芸は、気釜やガス釜を使用すれば、登り窯と違って都心でも作陶できるのも事実です。

東京六本木で作られる前田正博の現代陶芸は、酒場のライティングに染まることなく、後世に残る陶芸作品を生み出し続けることができるか、今後も期待していきたいと思います。

 
 

前田正博 略歴

1948年 京都府久美浜町に生まれる
1973年 日本陶芸展入選
1975年 東京藝術大学大学院工芸科陶芸専攻終了
日本伝統工芸展入選
1983年 今日の日本陶芸展(スミソニアン博物館/ワシントン)
ヴィクトリア&アルバート美術館/ロンドン)
1988年 日本伝統工芸展日本工芸会奨励賞受賞
1998年 伝統工芸新作展奨励賞受賞
2005年 第一回菊池ビエンナーレ展優秀賞受賞
東京・六本木に工房を移転、六本木磁器クラブ開催
第56回日本伝統工芸展 日本工芸会総裁賞受賞
2010年 第17回MOA岡田茂吉賞展 MOA美術館賞受賞
2011年 日本陶磁協会賞受賞
日本工芸会正会員

 


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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
炎の世界 (ゆっこ)
2011-09-19 15:14:08
いいですね~陶器の世界
あの灼熱地獄を耐えて かもしだす 落ち着き

もう入れませんが 実家の近くには『大堀相馬焼き』の窯元群がありました。
土&火&自然に対抗するかのマチェル・人の知恵と工夫
もうオペラです。総合芸術

癒されたいときに、私は猫か陶器をなでる・・
スーッと落ち着いてくるのが不思議

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Unknown (マッキー)
2011-09-19 16:18:55
「ゆっこ」とは、戸波鉱泉の若女将だったのですね。
ブログに添付する写真は、ご自分で撮っていらっしゃるのでしょうか。
コンパクトでしょうか、本格的一眼レフでしょうか。
いずれにしろ、写りの効果を考えながら、工夫しているようですね。

大堀相馬焼窯元のお近くの出身でしたか。
従事していた方も、避難生活を余儀なくされているのでしょうね。

私も、相馬焼の酒杯を持っていますが、できるだけ早い復興を念じています。
返信する
恐れ入ります (ゆっこ)
2011-09-20 15:37:45
さすがですね。お持ちでしたか。大堀焼

tonamikousenでコメントしてたら、営業目的コメ禁止という方がいまして真意でないので変えました

写真担当は夫で、普通の?一眼レフみたいです。4万円って言ってました。おねだりされてますが、レンズ買い替え禁止令発令中です
なのでパソコンで写りを工夫してるみたいです。そんなことまでわかっちゃうんですね。すごいです!

都会はいいですね。展示会がいっぱいあって。
うらやましいです。ぜひ いろいろ紹介して下さい!

追伸 大堀焼きの皆さんは 着々と復興計画立ててるみたいです。避難先で始めるのかな
返信する
Unknown (マッキー)
2011-09-20 21:44:48
tonamikousenで、全然問題ないと思いますよ。

愛知県日進市の花火大会の件でもそうですが、福島県産の花火の打ち上げ花火の風評被害なども、一部のクレイマーを気にしたことによって起きた出来事でした。

ゆっこさんのブログの写真は、季節の風物詩とも言えますので、ぜひその解説をよろしく。

ブログの応援に、行って帰っておきました。
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