ニュートン算の解法指導の最終回は、ニュートンが実際に出題した『ニュートン算』を解いてみましょう。
是非、前回までのニュートン算の解法指導を参考に、皆さんもチャレンジしてみて下さい。
ニュートンは、母校ケンブリッジ大学で、1673年から1683年まで学部学生に代数を講義しました。
今回取り上げる問題は、その時の講義録『普遍算術』に載っている問題で、いわば私たちが『ニュートン算』と呼ぶようになった問題です。
初めニュートンは、問題条件を文字として一般解を求めさせる下記の問題を出題しました。
「a頭の牛がb量の牧草地をc時間で食べ尽くし、d頭の牛がe量の牧草地をf時間で食べ尽くした。牧草は一定の速さで成長すると、何頭の牛がg量地の牧草をh時間で食べ尽くすか。」
その解は、(gbdfh-ecagh-bdcgf+ecfga)/(befh-bceh)となり、難解な問題でした。
そこでニュートンは、以下のような文字を数値に改めた、比較的解き易い例題を出題しました。
【問題】
「もし12頭の牛が(3と1/3)エーカーの牧草を4週間で食べ尽くし、21頭の牛が10エーカーの牧草を9週間で食べ尽くすとすると、何頭の牛が24エーカーの牧草を18週間で食べ尽くすか。」
【ヒント】
この問題の解法を、ニュートン自らがケンブリッジ大学生用に解説していますが、そのニュートンの難解な解説を理解できた人は、かなり数学的素養がある方と言えます。
日頃小中高校生を指導している私としては、このニュートン出題の『ニュートン算』を、小学生(受験生)でも解ける方法で伝授します。
この種のニュートン算は、「牧草と牛の問題」として中学入試にも出題され、前回のブログでお話したように、まず牛1頭が1週間で食べる草の量を①と置いて解いていきます。
ただ、今まで3回解説してきたニュートン算と、今回の問題との一番の相違点は、2つの条件の牧場の面積が、(3と1/3)エーカーと10エーカーと異なっていることです。
これでは、生えてくる草の量は計算できませんし、牧場に生えている草の量も計算できません。
そこで、工夫して牧場の面積をそろえ、「牛の数」と「牧草を食べつくす期間」との関係を考える問題に変換する必要があります。
(3と1/3)エーカー=10/3エーカーですので、その3倍の広さがちょうど10エーカーになっていることに注目すると、「12頭の牛が(3と1/3)エーカーの牧草を4週間で食べ尽くし」という条件を、「36頭の牛が10エーカーの牧草を、4週間で食べ尽くし」という条件に変換できます。
この条件をいつものように、マッキー直伝の模式図に整理してみましょう。
【問題・解答】
上の模式図から、36頭の牛が4週間で食べる牧草の量は、36×4=144(丸で囲む)。
また、21頭の牛が9週間で食べる牧草の量は、21×9=189(以下、丸で囲むは省略)
牧草を食べ尽くすまでの、牧草の量の差は、どうしてできたのか?…ここが一番のポイント!
理由は、食べ尽くすまでの期間の差の(9-4=)5週間で生えてくる牧草の量が、差となって表れています。
したがって、1週間で10エーカーの牧場に「生えてくる牧草の量」は、
(189-144)÷(9-4)=⑨となります。
すなわち、この10エーカーの牧場に牛9頭を飼っておくと、生えてくる牧草の量と牛が食べる牧草の量が等しいので、牧草は減りも増えもしない均衡した状態になります。
この数値を利用して、10エーカーの牧場に「生えている牧草の量」を計算することができます。
144-9×4(4週間で生えた牧草の量)=108
または、189-9×9(9週間で生えた牧草の量)=108
よって、18週間で10エーカーの牧場に生えている草を食べ尽くすために必要な牛の頭数は、108÷18=6(頭)。…牧草が生えてこないとしたときの数値
ただし、生えてくる牧草を食べる牛9頭が必要ですので、6+9=15(頭)。…これが10エーカーの牧草を18週間で食べ尽くすのに必要な牛の頭数です。
ニュートンの条件は、10エーカーではなく「24エーカーの牧草を18週間で食べ尽くす」という条件ですので、牧場の広さが24÷10=2.4倍ですので、求める牛の頭数も上で求めた牛の頭数を2.4倍することにより求めることができます。
よって、ニュートンが出題したこの『ニュートン算』の答えは、15×2.4=36(頭)。
ニュートン算に興味ある方は、以下の入試問題指導法ブログも参考にご覧下さい。
マッキーの算数指導法『特殊算』…『ニュートン算…その1・中学入試問題《桐朋中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『ニュートン算…その2・中学入試問題《城北埼玉中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『ニュートン算…その3・中学入試問題《渋谷教育学園渋谷中学校》』