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ロースクール留学(していた)日記

米国ロースクールLLM卒業生の日常→アメリカ駐在員の日常

ステーキ

2013-09-04 21:55:26 | アメリカ生活関連
午後10時。突然、食後のくつろぎの時間、リビングルームに緊張が走る。

どこからともなく甲高いビープ音が一瞬鳴って、そして静まる。どうやら等間隔に音を発しているようだ。
1、2、3、4、…20。20秒きっかりで警戒音が室内に響く。

そういえば、飼っていたデグーもこんな警戒音を出していたなぁと思いながら、耳を、そっと音源のほうに、神経を集中させる。
ピッ、ピッと鳴る高音に、はじめは気にも留めなかった音が、なにかこれからはじまるトラブルを予兆する何かに聞こえてくる。

バタバタバタ。廊下で誰かが移動する音が、足音が聞こえる。
そういえば、さっきから同じような足音がいくつも重なっていた気がする。緊急車両のサイレンの音も聞こえたかもしれない。

座っていたソファを立ち、玄関のドアを開け、廊下を見る。いくつも並んだアパートのドア。その時、どこかの部屋からジリリリリと電子音が聞こえた。

ドアを閉め、部屋に戻ると、またビープ音。

どうやらリビングの煙探知機からこの音は出ているようだ。


あ。


もしかして。

ーーーーー

アパートに転居して、生活を始めてすぐに気づいたのが、換気扇の位置、性能の違和感。
日本であれば、グリル台や風呂場には優秀な換気扇がついているものだが、こちらの家の換気扇は性能も設置場所も、不十分。
なぜグリルの上に設置しない、なぜ浴槽の上に設置しない、なぜもっと回らないのかと思ったものだった。
ほかのアパートに入居した日本人の友人も同じことを言っていたので、少なくとも、ここだけが特殊な環境ということではなさそうだ。

入居時の契約書を思い返してみると、消火器の設置は借主側の努力義務だった。自分はわざわざアマゾンで購入したが、ほかの人も律儀に準備しているのだろうか。

テナント保険のオプションにも、火災報知機が鳴った場合の補償条項があったっけ。加入していたか思い出せないが。

ーーーーー

リビングの椅子をビープ音を発するこの機械の下に持っていき、椅子に上って、顔を近づけてみると、ライトが点滅している。


荷物をまとめよう。パスポート、そしてノートパソコンを持って、携帯も忘れずに。
とりあえず、下に逃げよう。エレベーターが動かない場合は、非常口から降りるしかない。

下に降りると、いつもと変わらないロビーで、アパートの管理人がいつもと同じように、退屈そうに受付に座っていた。

「部屋で20秒ごとにビープ音が聞こえるんです。何か起こっていませんか?」

ーーーーー


今日の夕食はステーキだった。スーパーで買った厚切りのステーキ、2枚で8ドルのお手頃価格。
ステーキが焼きあがるにつれ、室内に煙が充填し始めたので、これでこんなに煙が出ていたら、
もしかしたら火災報知機がなっちゃうかもねなんて、笑いながら、そして煙を団扇であおぎながら、食事の準備をしていた。


ーーーーー
「・・切れです。」

「えっ?」

私は耳を疑った。

管理人は不思議そうな表情をしながらもう一度言った。

「電池切れです。」
「20秒ごとに鳴るビープ音は、警報機の電池が切れていることの警告音なんです。」
「メンテナンス業者を呼びますので、部屋番号、電話番号を教えてください。それじゃあ。」

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いま、私の前にはメンテナンス業者がいる。夜中にごめんなさい。