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ロースクール留学(していた)日記

米国ロースクールLLM卒業生の日常→アメリカ駐在員の日常

Agency

2013-09-03 18:56:14 | ロースクール・法務・法律・仕事ネタ関連
本日からクラスが始まりました。
もっとも、最初は履修科目の最終決定までの猶予期間ということで、授業に参加してみて、気に入らなければ履修科目を変更できるという制度になっています。大学側も参加してみてから履修科目を決定することを強くすすめています。

スケジュールも結構組み変わったりしているようです。実際、ほかの必須科目と重なって履修できそうになかったCorporationsの授業にも参加できることになりました。

アメリカのロースクールというといわゆるソクラテス方式が有名ですが、実際のところ、純粋なソクラテスメソッドよりも、レクチャー+ソクラテスメソッドの方式の方が多いんじゃないかなと推測しています。もちろん大学や科目によると思いますが。

ちなみにオリエンテーション中の模擬授業でソクラテスメソッドの体験をしましたが、やりかたはともかく、思考様式としてはそんなに真新しいものもないというか、結構、普段の仕事でもそれなりに自然と実施していることだなと感じました。
何がこの問題における"正義"あるいは"価値"か考えてみたり、法律や判例の射程範囲を考えてみたり、どの事実がルール適用の前提になるか考えてみたり、類似の事象と比べてルール適用における区別があるか考えたり、結論までの論理構造を考えてみたり。


結局、ロースクールは法律などに関する既存の問題や知識を学ぶというより、未知の問題が発生した場合にそれをいかに解決できるような人間にするかというところに重点が置かれているようですので、結局、仕事と同じような思考回路になるのかもしれません。
だからこそ、この機会は有意義だなと思いますし、発想の幅を広げるという意味で、世界中の人間を集めて議論させるというのは理に適っている気がします。


ところで、"いわゆる"コモンローの国に分類される国ということで、判例が重要になるわけですが、一言に判例といっても、判示の一言一句すべてが重要というわけではないです。
また、ロースクール生のサバイバルスキルとしても、判示内容のうち、先例性がある部分・ない部分の区別、結論に至る前提事実、および理由付けを効率的に理解することが重要です。
なにせ宿題が多いから。
1科目あたり1回50ページくらいですので、ただ流し読むだけならとてもしんどいというわけでもないのですが、結論だけでなく、思考プロセスが正しいかといったあたりも検証しておかなくてはならないので、時間がかかります。というか、ルールだけ知りたいなら大抵はrestatementだけで事足りる気がします。きっと。

話がずれましたが、Corporationsの授業ではAgencyが最初のテーマです。これは自分以外の誰かに仕事をさせるという点において代理人的なもののほうが会社より先に発展してきたからということのようです。

なかなかテキスト(判例)の議論の展開も面白いのですが、事例それ自体が生々しくて"面白い"のです(訴えようと思うくらいなので、それなりにひどいのがそろっているようです)。

ひとつの事例は、極めてざっくりというと、
・とある事業を運営している女性Aがある会計士事務所のB会計士に税金関連のアドバイスを依頼していた。
・その後、普通は会計士に頼まないような経理仕事もAはBに頼むようになった。
・ところが、Bはその立場を利用し、Aの夫であるC(浮気症)に対して、あるいは自己のため、不正の出金などの行為を繰り返した。
・Bは責任を認めた後、狩りに出ていって事故で死亡。Aは会計事務所を訴えた。
って感じです。

会計事務所はBの行為は会計事務所と関係のないものと主張する一方、はたしてその主張が通るのか、というところがひとつの論点になっています。日本の表見代理、無権代理とか、そんな感じの話です。
ちなみに、こちらの世界ではおおまかには次のような整理をしているらしいです。※内容の正確性は保証しません (笑

・Actual Authority:代理人が、自分に代理権があると思っている場合
- Express Actual Authority:本人が、代理人に、代理してもらうこと、してもらわないこと伝えている場合
- Implied Actual Authority:明確に伝えていないが、本人の目的を達成するためには、普通は代理人に認められるべきものの場合
・Apparent Authority:本人の表示行為により、第三者が、本人は代理人に代理権を与えていると思った場合
- Authority by Position:会社の役員とかの地位により、代理権があると思った場合
・Agency by Estoppel:本人の誤解を招くような非のある行為などにより第三者が誤解した場合
・Authority by Ratification:もともと代理権を与えていないが、本人が追認した場合
(Inherent Authority:本人・代理人関係自体に由来するもの。Apparent Authorityと区別されないことも。)