私は受験していませんが、カリフォルニア州の司法試験の結果が出たようです。これで主要な州の結果は出そろったんじゃないかと思います。全体の合格率が
48.6%ということで、昨年からは7%の合格率低下のようです。
以前からお伝えしているように今年は合格率が大幅に下がる州ばかりなのですが、この点についてABAジャーナルの
記事が出ていました。簡単にいうと、試験実施団体(NCBE)側が今年の合格率の低下は受験者が悪いという趣旨の手紙を各ロースクールの学長に送り付けて炎上したようです。
ところで、日本でもロースクール生の進路が社会問題化していますが、こちらのロースクール生はある意味もっと深刻で、奨学金の選択肢は日本よりも多いものの、卒業生は
1,500万円近くの借金をおって卒業することが普通ですので、就職先が決まらないことや合格ができないのは死活問題です(特に
一流のロースクールではない場合、仮に合格しても法律家として就職先がないというのは聞きなれた話です)。そして仮に就職できても、初年度年収が1600万円を越えるようないわゆるビッグローではないと中々すぐに返せる大きさの金額ではありません。
ではよく言われるようにアメリカは弁護士が余っているのでしょうか?
この点について2014年10月にABAの
記事が出ています。
つまるところ、(経済合理性を追求するとそうなると思いますが、)アメリカでも都市部に弁護士が集中しているということです。アメリカでも弁護士が不足しているエリアがあることを意外に思う方もいるんじゃないでしょうか。
視点を変えて、NYのプロボノ制度についても賛否両論があります。(個人的にも複雑な思いです)
NYのプロボノ制度は50時間のプロボノを義務付けるものですが、これはあくまでも新たにロースクールを卒業して受験する人にしか義務付けられていません。従って、すでにNYで働いている弁護士や他州資格をもとにWaiveInしてくるローヤーには適用されません。
NY側としては、
・毎年1万人以上受ける受験者が50時間プロボノをやれば、50時間×1万人だけ普段リーガルサービスを受けられない人を助けることができる。
・受験者側が座学では得られない経験や知識を得られる。
といったことをこの制度の意義としているようです。
確かにそういう面はあるのだと思います。
しかしながら、反対派の見解も説得力があります。
・1500万円超の借金を負った人たちに、50時間のただ働きを強制することになる。
・加えて、プロボノ要件は50時間と言っても、50時間ぴったりで終わる仕事なんてそうそうない。
・大きな事務所であればプロボノに人員を割く余裕があるが、小さな個人事務所ではなかなかそうはいかない。
・強制されるプロボノはプロボノと言えるのか。サービスをする側のモチベーションが低いおそれ。
・専門家ではない学生にプロボノを受けてもいいサービスが得られるとは思えない。
上記に個人的な経験をさらに加えるとすると、
・非弁行為を避けるためにはすでに誰かがやっているプロボノに参加するしかない。つまり既に弁護士が一人でやっているプロボノを学生が入って二人でやっているだけなので50時間×1万人にはならない。
・時間の長さを要件としているので、だらだら仕事をやる方が早く要件を満たすことができるという負のインセンティブが働く。
といった問題点があるように感じています。
個人的にはプロボノ活動を通じて、この機会がなければ知ることのなかった社会問題を知ることができましたし、非常にいい人生経験になったとは思います。なにより、困っている人を助けることができたのは良かったです。
しかしながら、せっかく実施したプロボノが(監督者側の問題で)NYのアドミッション要件を満たさなかったがために、0から50時間をやりなおす羽目になったなど、不愉快な思いをさせられたのも事実です。
あくまでも初年度ですので、これからこの制度もいろいろと改善されていくことになるとは思いますが、今後に期待します。