ひそかに気になっていたけれども、訴状が長すぎて読む気がしなかったのが、オラクルとオレゴン州のシステム開発をめぐる訴訟。
・参考:
オレゴン州によるプレスリリース(Complaintへのリンクあり)
少し時間を作って気合を入れて読んでみることにしました。
本件がどんなものか端的にパラ1が表しているように思いますので抜き出してみます。刺激的な感じです。
※下線は私が入れてます。
> Oracle America, Inc. ("Oracle")
fraudulently induced the State of Oregon (the "State") and the Oregon Health Insurance Exchange Corporation ("Cover Oregon")
to enter into contracts for the purchase of hundreds of million of dollars of Oracle products and services that failed to perform as promised. Oracle then repeatedly
breached those contracts by failing to deliver on its obligations, overcharging for poorly trained Oracle personnel to provide incompetent work, hiding from the State the true extent of Oracle's shoddy performance, continuing to promise what it could not deliver, and willfully refusing to honor its warranty to fix its errors without charge. Over the last three years, Oracle has presented the State and Cover Oregon with some $240,280,008 in false claims under those contracts. Oracle's conduct amounts to a pattern of racketeering activity that has cost the State and Cover Oregon hundreds of millions of dollars.
Accordingly, plaintiff Ellen Rosenblum, the Attorney General for the State of Oregon, along with the State and Cover Oregon, brings this lawsuit to recover losses to the State and Cover Oregon caused by Oracle's fraud, racketeering, false claims, and broken contracts.
以下、起こった事象のうち興味深い記載(オレゴン側の主張ー適当にまるめて以下訳しています)
・オラクルは"Oracle Solution"がオレゴン州の要望を満たすことができるかどうかについてウソをついた。例えば、
同商品がフレキシブルで、インテグレイテッドで、ほかのプログラムと簡単に連動して、ほとんどカスタマイズがいらなくて、すぐにセットアップできるといっていたがそうはならなかった。(パラ3)
・オラクルは同商品を購入する前の
プレゼン、デモ、Q&Aセッションで詐欺的な説明を行っていた。第三者の評価者も騙された。(パラ4)
・オレゴンは最初は独立したシステムインテグレーターを別途雇おうと思ったのにオラクルがSIerは仕事を遅らせるだけだと抵抗した。オラクルは自己のコンサルサービスをSIerの代わりとして使わせた。(パラ5)
・オラクルの情報統制のせいでオレゴン州は
ソフトウェア開発の進捗状況をオラクルからのレポートで判断するほかなかった(パラ6)
・オラクルは進捗の80%が完成しているといっていたのに、
納期遅延の段になって、開発範囲の減少などを訴えてきた。リリース日は遅らせられないので(注:オバマケアの為)仕方がないから
開発スコープの減少に同意したのに、それでも納期に遅延した。
納期遅延は明らかな状況にもかかわらず、オラクル側は納期までに完成すると言い続けた。(パラ7、8)
・オラクルは義務を果たしていないのにもかかわらず支払いだけは要求してきた。ちなみに
納期は延長しても毎回守られなかった。(パラ9)
・オラクルのせいで
オレゴン州側は余計な人員を雇って手動作業で保険等の申し込み手続きに
対応させられた(パラ9)
・オラクルはシステムが完成したといってきたが、
検査をしてみたらシステムは使える品質にないことが分かった。第三者評価をさせてみたら直すのにはtens of millionsのコストで1年以上かかるといわれるレベルだった。(パラ10)
・オラクルは
Warrantyを守らずシステムの修正を拒否した。支払いを要求したうえに、支払わないなら、プロジェクトから抜けると言い出した。(パラ11)
いかがでしょうか。一方当事者の主張ですので、オラクル側は違う意見を持っているかとは思いますが、日本のトラブル事例でも聞いたようなことが書いてあります。オラクルは自社商品に詳しいはずなんじゃないかと思われますが、それでもこんな事態になったのはなぜなんでしょうね。
勝手な推測:
オバマケアのような政争の的だったものなので、仕様がよくわからない段階ではあるけども、リリース日だけ決まってしまったのでとりあえず契約することになった。ところが仕様がなかなか見えない状態だったので、自社パッケージが使えると思っていたが使えなかった。州側の担当者もなにを作ればいいかわかっていなかった。いざ開発を進めてみたらあれやこれやと政治的な外的な要因で要求仕様と開発スコープが増大していったのでいつまでたっても終わらない感じになった。採算が取れないので撤退することにしたら訴えられた。
ってところでしょうか?気になります。
…ここまで書いたところで、OracleがOregonを訴えた
Complaintも見つけました。提供元はこちらのニュースサイトの
記事です。
私の読みも遠からずってとこのようです。
例えばこちら:
↓のくだりからも炎上プロジェクトにつき合わされたオラクル側の怨念が渦巻いて見えました…。
ところで、本件、オレゴン州側はホームである州裁判所で戦おうと思っていて、オラクル側はより中立的な連邦地裁で戦おうとしていましたが、州裁判所で戦うことになったようです。連邦裁判所に行くためにはsubject matter jurisdictionについてはFederal QuestionかComplete Diversity& $75,000が+必要ですが、FQ取得のために州による著作権法違反を持ち出すのは若干飛び道具な感じがしました。
・
Oracle America accuses Oregon of violating federal copyright law in health exchange fight
・
Oracle v. Oregon: State wins round one, but it's still early
おまけ:イギリスで発生した似たような
炎上プロジェクト(NHS National Programme case)
関連して、某F社に関する
ニュース。