私がオーディオ以外の機器にのめり込む切っ掛けとなった機械。他に米国ナショナル社のFRR59Aも忘れられない。585Aは真空管で85Mhzの帯域を実現したもので、これが何で困難なのかと言えば、DCから85Mhzまでを増幅しなければならないからだ。本機は分布増幅器と呼ぶもので広帯域を実現しているが、ここだけで真空管(双三極管)を15本使っている。そのコンストラクションの見事さは真空管オシロの王者と呼ぶに相応しかった。国産の高級オシロに多大の影響を与えたが、本家はやはり素晴らしい。
また、特筆すべきは美しく細い輝線だった。テクトロのオシロの歴史で輝線が最も太かったのは465Bだろうが、この機種の輝線の美しさは対極を成すものだった。
真空管を約八十本使用するわけだから当然故障も多い。そこで当時のテクトロに有った思想は、オシロはサービス性に優れたものでなければならないということで、その為にはときとして性能をも犠牲にするという考え方だったらしい。
米国には当時の思い入れを持つコレクターが少なからず健在で、そういうホームページもある。
確かに思い入れの強さは私とてさほど劣るつもりは無いが、機械と言うのはやはり動いてナンボのものと思う。独特の熟練を要する使いにくさがかえって気持ちをそそるが、なんと言っても過去のものである。
OLD SOLDIERS NEVER DIE,THEY JUST FADE AWAY.
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