オーディオ測定、オーディオ用測定器の解説

 測定器と、他は過去に学んだことへのコメント。

アナログテスター

2020年04月22日 | 測定器の種類別解説



内外の高級テスター 写真上左端から順に:TRIPLETT 630NA二台 630NS
下左端から:SIMPSON269 シマヅMT-200 横河3201

(テスターについて)


 テスターというのは、乾電池を一個内蔵するのが普通ですが、これは抵抗を測った時にメーターを振らす為のものです。DCV或いはACVを測るときは、電池が要りません。自身にメーターを振らすエネルギー源(つまり電源)を持たず、回路のエネルギーの一部を寸借してメーターを振らす、即ち回路を大なり小なりかき乱すのです。回路のエネルギー量が小さいと、場合によってはテスター内部で使うエネルギーのほうが多いということにもなりかねません。そこで、所謂高級型のテスター(横河の3201等)はDCVを測るときの内部抵抗が1V当たり100KΩ(10マイクロアンペアの感度というわけです)のものもあります。然しながら、内部抵抗が100KΩ/VDCといっても、0.3Vを測るときの内部抵抗は30KΩしかなく、それで困る場合も有ります。
 ディジタルテスターの内部抵抗はDCでは電圧レンジに関わらず10MΩ一定であるのが多いですが、AC電圧を測るときは周波数特性が悪いです。このことがネックになる場合も有り、修理作業ではアナログ式のほうが便利な場合も少なくないのでやはりアナログ式のテスターも併せて有ったほうが良いです。

 これまで弄ったテスターは内外の物多数ですが、超高内部抵抗のテスターを実際に使用してみると、テスターの内部抵抗は高けりゃ良いというものでもないと思うようになります。指針が使用者の感覚に快適に(ここが大事)反応するのはまぁ50KΩくらいまでかなぁ、という極めて感覚的ではあるものの、そんな感じが有るのです。

 ついでながら、さんざん他社のテスターを使ってきて、初めて横河のテスターを持った人は、リード棒の指にやや重い確実な感覚を快く感じるのではないでしょうか。こういうことが分ってしまうと、測定器はカタログのスペックだけでは分らない要素の大きいのを知るわけであります。私はそうしたことを繰り返し経験した結果、国産の測定器を使うことは殆ど無くなりました。

 現在、国産の横河3201は内部抵抗が100KΩ/VDCで高騰しても10000円止まり、せいぜい5~8000円くらいで落ち着くので、出品者の条件によっては購入したほうが良いです。

 テスターが動作するかどうかはACに突っ込むだけでも分かるので、こんな簡単な機器でも動作不明などと言う出品者からは買わないほうが良いです。

 

 

 

 海外の高級機について興味が有るかたはお問い合わせ下さい。



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測定器解説:オシロ

2014年09月11日 | 測定器の種類別解説



HP1200B型オシロ 500Khz/100マイクロV 超高感度差動


オッシロスコープ


 オッシロスコープは基本的に米国のテクトロニクス社(以下テクトロという)がリードして来ました。オシロの歴史はテクトロの歴史と豪語していましたが、あながち間違いでもありません。ヨーロッパではフィリップス等独特の考え方でテクトロと感覚が違うオシロを製造したところも有りましたが、国産のオシロはテクトロのコピーと言ってよく、それはどのメーカーも同じです。当然にコピーした物同士は似てしまうので、国産メーカーのオシロは帯域が同じならどれもほぼ同じ内容です。

 だったらテクトロが一番良いのかと言えば、だいたいそうだと言えます。初心者がテクトロを買うのが恐れ多いというのなら、国産ならどこでも良いといえるでしょう。ただし、マニュアルを入手したいのなら、岩通とキクスイが入手しやすく、この点他社は困難です。然し、マニュアルを入手する必要は実際には無く、世にある解説書を読むほうがずっと良いです。

 初心者には30Mhzの二現象くらいまでが手を伸ばす範囲となるでしょうが、痩せても涸れても一応二現象となると、性能チェックや手直しが必要な場合(そのような場合が多い)は発振器やミリバルとは比較にならないくらい手数が掛かり、その手間が落札価格に反映されることはあまり無いので、ノークレームノーリターンとして出品されることがどうしても多くなります。不具合が有る場合、発振器やミリバルほど簡単には直らない場合が多いので、動作品としてあるのを買うほうが良いでしょう。出品側として見ると手数が掛かる割りに高くならない機器です。


ディジタルオシロについて


 私が初めて買ったのはHPの54112D型で、100Mhz/400Mサンプリング/4CH/6ビット/64KWORDでした。その後より新しい機種を試しましたが、現在はすべて処分してしまい、手持ちはありません。

 アナログと比べるとディタルオシロは、輝線が太く、汚いです。然し、その多機能ぶりは圧倒的です。デジタルでは振幅を適当なサイズに表示する操作や、波形の水平サイズを適当に表示する操作は要りません。つまりXもYも自動なのです。テクトロの2445や2465などアナログオシロのディジタルリードアウトをも遥かに超えるもので、最初に使ったときはもはやアナログの時代ではないと思いました。

 ところが、私は生憎と毎日オシロを使う者ではなく、大多数の諸兄と同様、休日にしかオシロを扱いません。そうなるとディジタルオシロの多機能は却って負担になったのです。つまりこうです。こう使うのかフムフムそうかそうか、と何十分か掛けて一応理解するのですが、一週間か十日すると、忘れてしまってる部分があり、その都度使いこなしに時間を喰う、こうだったよなぁ、というようなことが有ります。それ以上間が空くともっと時間が掛かるというようなことがあり、これは仕事として毎日使うような人のものと思いました。今では、テクトロの2445や2465程度で十分と思います。

大古オシロの修理

 
 強制同期、管球式の松下のVP311A/B/C、VP517A、トリオのCO50、CO-3K、キクスイの555、556、557、OP-31C等を見掛けます。そのまま使えるモノはまず無いと言ってよいです。掃引の時間を決めるCは必ず全て交換、その他のCも交換したほうがよいです。
 
 トリオのCO50型2インチオシロはたとえ完動にしたとしてもハシゴ型と呼ばれる波形の歪が残ります。回路がシングルエンドであってプッシュプルではないためです。2インチの場合プッシュプルになってることは稀です。

 修理はハッキリ言って馬鹿馬鹿しいです。管球式は修理のコストが高くなりやすく、たとえ治ったとしても感度が悪く帯域もせまいです。レトロの感覚を楽しみたいというのでも無ければやめたほうが良いでしょう。部品取りの場合は古いもののほうがパーツが取れますが、限られた管種と電流容量の不明なトランス、それに鉄製のため転用の困難なシャーシと楽しみが少ないです。

シンクロスコープと岩通


 岩通が強制同期の古い型式のものとの違いを殊更強調するため、シンクロスコープなる言葉を流行らせ、一時期はオシロと言うとシンクロではないのですかと聞かれたり、トリガー掃引方式と態々断り書きが必要になったのは残念なことでした。他のメーカーも追随してしまったのですが、テクトロは一貫してオッシロスコープと呼称していました。中高年の技術者で今だにシンクロと呼ぶ人もいますが、次第にオシロに収斂しているようです。
 悪口を言いましたが、国産オシロメーカーではやはりトップメーカーです。個人的な感覚ですが古くなった機種同士では岩通のものが不良が少ないように感じます。このへんがキカイはカタログを見ても分からないと思う所以です。特にアジャストする場合、岩通が一番分りやすいです。マニュアルも出して呉れます。(最低3000円)。









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測定器解説:校正器

2014年06月12日 | 測定器の種類別解説

校正について

 中古測定器はその正確さが気になるものです。この問題については測定器(およびその取引)に不慣れな人ほど厳格に考える傾向があり、これに対し、ヴェテランはあまり気にしません。何故なら、だいたい測定器というのは、目視で異常が無く、DC的、AC的に異常が無ければ、問題になるほど狂ってるということは殆ど無いのです。ジャンク屋のオヤジは横河のメーターを揺さぶってみて、動いてるみたいよ!といいますが、ああやって動いてるメーターで大きく狂ってるのを見たことは記憶にありません。これはあまりに簡単な例ですが、もっと複雑な構成のものでも事情はそれほど変わりません。

 私の場合、或る交流電圧を発生させる測定器は少なくとも数台は有ります。それを測定する機器も常に数台は有ります。この場合、確率的にみれば或る範囲から離れた計器があれば、それが狂ってる可能性が高く、逆に或る範囲から離れた計器が正確で他が信用出来ない可能性は極端に少ないと言えるでしょう。

 このように出力側と入力側を複数にし、それが近似していれば正確であると予想します。粗っぽいですが、少なくともアマチュアのホームユースではこの発想で十分です。

 費用の話をすれば、定期校正などは個人では実現不可能です。試みにメーカーに問い合わせるのも良いでしょう。特にAC電流は目を剥く高額です。これだけで初級クラスの測定器が買えます。結局、これは資金量の問題なので、正確さについてどのような考えを持つのも自由ですが、自己が支出し得る資金に見合わない考えを持つのは無意味です。


校正器

 校正器というのは普通、直流と交流の電圧と電流、あとは抵抗くらいがメインです。抵抗は横河の標準抵抗器で間に合います。直流と交流の電圧校正は被校正測定器の入力抵抗が問題なので、これが10MΩと言った大きさが有れば、校正器の出力抵抗が1KΩでも誤差は約1/1000となります。然しながら、被校正計器の入力抵抗が低くなれば誤差を少なくする為には出力抵抗も低くならざるを得ず、従って校正器の出力抵抗は出来る限り低いことが求められます。また、電流を校正する電流発生器も低すぎる供給電圧では用を成さない為、結局、市販される標準電圧電流発生器には電力増幅器が別に必要になり、途方も無いコスト、重量となるわけです。

 結局、アマチュアのシャックに於いては校正電圧の発生器等は諦め、やや不便ながら、価格にして高くとも20万円くらいまでのディジボルを三年に一度校正に出すくらいで我慢するのですが、これで不足を覚えることはまず無いと考えられます。それ以上はアマチュアには荷が勝ち過ぎるでしょう。

具体的な製品紹介

横河 2793 ディケード抵抗箱
 0.001Ωー1KΩ
CLAROSTAT 240C 電力型ディケード抵抗箱
CLAROSTAT 250 電力型ディケード抵抗箱
HP/738BR VOLTMETER CALIBRATOR
 出力:DC及びAC(400Hz) 0.3mV-300V 1-3-10及び1.5-5-15ステップ
 出力抵抗最大で7.5KΩ
ESI/RV722 VOLTAGE DIVIDER
 入力抵抗;100KΩ 入力最大700V 7桁
GERTSCH/1011R RATIO TRANSFORMER
GERTSCH/RT-7 RATIO TRANSFORMER

以後書き足し予定有り

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測定器解説:歪率計

2014年03月15日 | 測定器の種類別解説
歪率計


 オシロ、発振器、ミリバルときて次に欲しいのがブリッジか歪率計でしょう。以前はかなり入れ込んでいろいろ買いましたが、最近は興味を失ったために、扱った歪率計を思い出すのは困難になりました。多分、機種にして30~50機種くらいだろうと思います。

 さて、この測定器はどうも高価というイメージが有ります。それはアマチュアが要りもしない高性能機を狙えば確かに高価です。しかし、簡単な構成のものでは1万円~3万円台くらいなのです。測定器に不慣れなうちはどうしても中古=信用出来ない、という心配が先立つために、いろいろ悩むのですが、新品はアマチュア向けのものでも10万円をラクに超えるのでこの際スッパリ諦めましょう。本当のことを言えば、このそれほど情報量が多いとは言えない測定器に大金を投じるべきでありません。こんなものに大金を投じるよりスペアナに投じたほうがよほど気が利いています。

 測定原理については、以前は或る周波数を取り除くフィルターアンプの方式が多かったのですが、低い歪を測るのに限界が有って、測定したい周波数の高調波が個別に測定出来るFFTタイプのものが多くなりました。幾つかのメーカーから出されている100万円をラクに超える高級品の多くがそうです。これらは今はまだ高価ですが、あと10年もしないうちに、買いやすくなるでしょう。
 シバソクの725シリーズは依然として高級機という感じですが、この機種ですら5万円を切るようになりました。(ただし、リース屋では10万円以上です)。

 よく見かけるのは、HP8903、HP339A、シバソク725シリーズ、松下の7702,7720A(及び目黒の同仕様型)、7722/7723、あまり見かけなくなったのがシバソク796、816、870等の古い連動型、などです。それぞれ長短が有り、その長短が分ると何台も欲しくなるのですが、まぁ一台あれば良いでしょう。

 

入力抵抗に注意!


 ところで、今諸兄が入手出来る歪率計は入力抵抗が100KΩのものが殆どです。アンプの出力段の歪を測る場合は、インピーダンスが相当低いので、これで構わないのですが、真空管アンプの場合に段間を計る場合は100KΩでは低くて不便な場合が生じます。古い歪率計(自動式でない場合も多い)なら1MΩのものが多いので、諸兄は自分がどういうアンプを主に作るかで考えたほうが良いです。だいたい、0.1%フルスケールのもの、つまり古いものは1MΩのものが多く、0.01%になると1MΩのものはありません。タマしかやらない人は0,1%フルスケールのもので構わない筈です。前述のように、歪率計は必ずしも有用な情報量に富んでるというわけではなく、タマの場合はそれほど高性能のものは要らないので、兎も角古いもので一台という考え方でよいでしょう。



オークションで見かける歪率計



東亜電波 低周波特性測定器
 これは完動を謳ってない限り、もしくはノークレームノーリターンを掲げられたら買えない測定器です。理由は、組み立てがメンテナンスを殆ど考慮していないように見受けられるからです。問題なく動作するものはまず有りません。ボリューム一個替えるのですら、よほど気の長い人でなければいっそのことバラしたくなります。ツマミを外すのでさえ困難かも知れません。だいたい、メンテナンスしにくい測定器はバラスのも一苦労です。このメーカーのものに限りませんが、国産の測定器で修理しやすいものは少ないです。中でもここの歪率計は腹立たしいほど修理の厄介な機械です。

 まず、ロックペイントを塗ってあるものはシンナーでふやかしてからナットを取り外すのですが、まったく余計なことをしてくれると感じます。これは国産は大抵そうなので、規格での指定仕様だったのかも知れません。


シバソク796D/796E、816、
 当今ではさほど低い歪といえなくなってしまった発振器を内蔵した歪率計です。発振周波数と、フィルターアンプの周波数がずれてしまってるものが少なくなく、そういう機械を掴んでしまったらイヤになると請け合いです。測定器を持たない人が修理するのはらくではないと思います。ずれてしまってる機械が多いので普通は発振器を別に求めるようになりがちです。


シバソク870
 796を使いやすくした感じで、レンジが自動です。796と同じ瑕疵がある場合が少なく有りません。


HP333A/334A型
 HP334Aという自動式歪率計をたまに見かけます。0.1%フルスケール、入力抵抗1MΩなので、タマアンプ製作には好適です。歪を測れる上限周波数が600Khzという変わり種です。あまりに古く、今となっては動作するものがあるかが疑問です。


HP339A
 0.01%フルスケールで、一見後から出た8903A/Bのほうが良さそうですが、歪の測定最小電圧が30mVというスグレモノです。発振器の歪もこちらのほうが少し低くなっています。CALの機能が自動でないのが苦しいところです。これも完動品は少なくなってると思われます。


松下VP770A
 入力抵抗1MΩ、0.1%フルスケールです。この機種はバリコンのベアリングがほぼ駄目になってるのですが、歪の多いタマのアンプにはこれでも不自由しないでしょう。一般的に言って、松下の測定器はケミコンの多用が目立ちます。


松下VP7701A
 あまり出てきません。入力抵抗1MΩ、0.1%フルスケールです。CALと%レンジが自動で非常に便利です。HP334Aをかなり使いやすくした感じです。


松下VP7702A/B/C
 1V入力以上で0.01%フルスケールです。1V未満の入力なら0.03%になります。入力電圧と歪率が同時に見られ、両方ともアナログメーターなので、アマチュアが使うには非常に便利です。だいたい、歪率計のメーターはアナログ式のほうが便利です。アマチュアが家庭で使うのだったらこれより高級なものは要らないと思います。高くてもせいぜい3万円くらいで落着するようです。


松下VP776A
 滅多に見なくなりました。0.3%ですが、最小入力50mVとかなり小さく、フィルターの幅の広いのが長所です。大変使いやすいのですが今となっては古すぎて動作するのか、、、、NCNRではちょっと、、、、、、。


高級機


 このクラスになると相当構成が複雑になるので、多少の瑕疵の可能性が出て来ます。安心して買うのなら返品不可を謳わない出品者、もしくはリース屋からということになるでしょう。
シバソク725シリーズ
 ファンもなく、家庭で使いよいです。


松下VP7720A
 発振器付きで使い良いですが、メーターが粘る欠陥に出遭います。その都度叩けば良いので、これくらいは我慢しますか。


松下VP7722A/7723A/7724A
 すこぶる高性能ですが、ファンがうるさく家庭用には向きません。


HP8903A/B
 すこぶる高性能です。



自動でない歪率計


 歪率計は或る周波数を抜き去るフィルターアンプですが、フィルターアンプには温度特性が有ります。また、信号源は通常CR発振器ですが、この周波数が必ずしも安定ではないので、双方の不安定が相俟って、フィルターアンプの操作は厄介です。特に0.1%未満を測ろうとすると、二つのダイヤルから手を離せません。ハッキリ言うと実用性が無いと言っても過言ではないほどです。この何とも面倒くさい操作が、オシロを用いてリサージュ法を使うと別に自動で無くても良いかも、と思えるくらい速やかに出来ます。やりかたはアンプ出力をX入力にし、歪率計のモニター出力をY入力とする方法で、これは逆でも構いません。要するにリサージュを描かせるのです。出て来る波形が水平または垂直になるよう操作すれば良いのです。
この方法でたまに出回るNFの管球式歪率計やシバソク、東亜電波等の自動でないものも快適に使えます。

 昔から有りましたな。何とかとハサミは使いよう、という、、、、、、、。 



 

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測定器解説:LCR測定器

2012年04月01日 | 測定器の種類別解説
LCRブリッジ

 オシロ、発振器、ミリバルの次に欲しくなるのがブリッジです。この機器は万能ブリッジと呼ばれたり、ユニヴァーサルブリッジと呼ばれたりして、一見オールマイティにも見えますが、実際は極大、極少のインピーダンスを測るのには向きません。即ち低抵抗はケルビンブリッジ(わが国ではダブルブリッジと呼ぶ習慣か?)やミリオームメーターが向き、高抵抗は高抵抗計、高周波に使うLはQメーターの領域で、1000マイクロを超える大容量ケミコンは専用の測定器のほうが向くと言った具合です。ディジタル式のほうが圧倒的に便利ですが、安くはなく、トラぶったときは手に余り、またいろいろアナログのほうが良いケースが有るので、オシロ、発振器、ミリバルの次に絶対確保しておきたい測定器です。
 分解能を言えば、桁数の多いのが良いようにも思えますが、実際には米国ジェネラルラジオ社の古い古い型のようなワンダイアルで不足を覚えることは稀です。だいたいLやCの値の正確な値が必要とされるケースは多くは無いのです。
 一般的に言うと、業務用(かつての)のものは太いターミナルが何本も出ていて、外部入力、外部アンプの接続が容易です。この点がローコストのものの不満な点であります。 

ディジタルLCRメーター

 LCRブリッジを単にディジタルにしたものではなく、若干異なる測定原理で構成されています。

具体的製品紹介


横河BVZ103
 古典的な風貌で大変に貫禄が有り、ブリッジの王様の感じがあります。初心者には向きません。動かなくても高額になります。

横河BVZ13
 後述のYHP4255Aと同じものです。

YHP4255A
 かなり古典的な風貌で学生実験に好適と言った観があります。初心者には向かず、二台目、三台目のブリッジです。

YHP4260A
 名器と言われた機器です。分解能は3桁ですが、実際はこれで十分で不足を感じることはありません。非常に便利な機器です。DまたはQを与えるかなり大型のポテンショメータ(平たく言えばヴォリューム)が切れてるものが少なくなく、同じものへの交換は事実上不可能なので、ノークレームノーリターンと謳う相手からはなかなか買いきれません。

YHP4265A
 手提げ型の使いやすい機器です。棚において使うには向きません。

YHP4262A
 ディジタル式で文句なしに使いやすいです。価格は高騰しやすく、なにぶんにも古いのでトラブったときは面倒です。

デリカM6他同社のミニブリッジ
 M6はワンタッチでトランスの巻数比が測れます。小型軽量が大きなメリットですが、小型軽量であるが故の不便もあります。最初に持つブリッジとして良く、大変信頼出来るメーカーです。


ヒースキット
 能動素子は電池管ですが、入手には困りません。キットなので内部は安っぽいですが、それでも無いのとくらべたら大違いです。すべて測定器は無いのと比べれば大違いなのです。


以後書き足し予定有り

 
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測定器解説:発振器

2012年04月01日 | 測定器の種類別解説

信号発生器概論

 発信器と書く人がいますが、通常は発振器です。国内メーカーの殆どは現在は製造をやめています。さて、この発振器ですが、入門者が入手に苦慮する機器です。普通に考えれば発振器が無いというのは、測定器入手の第一歩がまだ出来ていない本当に初歩の段階なので、オークションで買う場合は不安が一杯です。何よりも ノークレームノーリターン と謳われると恐い感じがするのです。実際には何か欠陥を抱えている割合は5割以上は無いし、複雑な故障などは殆ど無いのですが、測定器 というだけで構えてしまいます。実際に中を開けてみればすぐ分りますが、10万円以下の価格帯のものではこうまで安く作ったかと思うほどのコスト重視の組み立てです。あまり構える必要は有りません。

 この機種の主要なスペックは、出力の平坦性、帯域、歪率、表示周波数の正確さ 方形波の有無等です。ローコストのものでは出力の平坦性が大事なので、元の価格が3万円くらいのものは出力周波数が1Mhzまでとし、振幅制御にサーミスタを使うので歪は特に低い周波数で悪くなり、100Hzでどのメーカーのものも0.1%くらいです。歪率測定の信号源としての性能は最初から度外視しています。これより上のクラスで元の価格が10万円未満のものは振幅制御がFETに替わる場合が多く、100Hzの歪が若干良くなり、だいたい0.05%近くです。回路がどのメーカーも殆ど似ていますのでメーカーによる性能差は殆ど有りません。つまりメーカーを選ぶ必要はありません。方形波はローコスト品では例外なく出力します。
 出力周波数が広くなると、方形波の出力は無くなり、歪も悪くなりますが、業務用の機種になるため、出力の平坦性は大変優れたものになります。出力メーターの指針の幅ほども変動しないというものが少なくありません。
尚、帯域の広さと歪率の両立は出来ません。帯域が広くなれば歪は必ず悪くなります。

 低歪のものは出力周波数が100Khz内外までで出力の平坦性は大変優れている場合が普通です。歪は殆どのもので0.01%は下回り、周波数が低くなっても歪は増えません。尚、方形波は通常出力しません。これまでの記述で分るように方形波出力のあるものはローコスト品です。 

 オークションでよく出るのはキクスイ、ケンウッド、リーダーの三機種で元の価格はいずれも3万円くらい。性能差は殆どありません。価格は高騰しても1万円までくらいで、程度が悪ければその半分くらいの場合もあります。

 尚、キクスイのORC11、松下VP7201は全く同じ仕様で帯域が500Khzまで、歪が0.01%をかなり下回り、新品時の価格が8万円くらいでした。多くはないものの出回っていて、歪率測定用の信号源にもなり得るもので良い発振器です。


方形波について

 初心者は方形波が必要との思い込みが大変強いですが、CR発振方式で方形波が付くのは10万円までのローコスト品で、それ以上の価格のもので方形波が付くのはまず無いので、拘らないほうがよいです。

 方形波応答試験はアンプの入り口に方形波を入力し、アンプから出力された方形波の形(オーヴァーシュートやリンギングの幅や高さ)を見て、方形波周波数の何倍かの周波数でどういう現象が有るかを見るのですが、そのナニカが有る周波数や量を正確に知りたければ正弦波を入れてやればよいだけの話です。

 ところで、分る人はここまでの説明で理解するのですが、理解しない人は長々聞いた後で、はぁ?そうですかぁ??との不同意を秘めた相槌を打つことが多かったので、説明は随分前にやめました。本にはこう書いてあった、技術雑誌のライターが必要と言っていたということのようです。無駄な努力というのは有るものなので、こういうことではあまり汗をかきたくないです。

ファンクションジェネレーター

 CR発振方式とは別にファンクションジェネレーターと呼ばれるものもあり、現在はこちらが主流です。これは、方形波を作ったあと、それから三角波を作り更に整形して正弦波を作るものですが、低いほうは制限が無く、上のほうも50Mhzまでも出力出来るようなものがあります。最初に持つ信号発生器はこの方式のもので良いでしょう。正弦波、方形波、三角波の三種を出力し、掃引が出来るものもあります。歪は低くないですが、歪率を測らないのなら気にする必要はありません。また、将来歪率計を入手した時の為に低歪を求める必要もありません。何故なら歪率計には低歪の発振器が内蔵されてる場合が少なくなく、たとえそうでなくても、歪率を測るくらいのレヴェルになったときは低歪の発振器、広帯域の発振器の二種を入手するようになるからです。




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測定器解説:電圧計各種

2012年04月01日 | 測定器の種類別解説


ミリバル/交流電圧計(平坦型)

 交流電圧及び直流電圧に重畳する交流電圧を測定する機器で最小は特殊なものでは10マイクロVから最大は1000Vくらいまでですが、普通は1mV-300V 或いは 300マイクロV-100Vのレンジを持つのが普通です。これより広いレンジが必要となるケースは殆どありません。高感度であるほど良いようにも思えますが、周波数選択性の無い普通の交流電圧計は高感度レンジになるに従ってノイズも拾ってしまうので、あまり意味が無いのです。また周波数特性も上限は高級品でも10Mhzまでが普通です。しかし、数百Khz以上を測る場合は、それなりの知識が必要となるので、初心者は広帯域、高感度を求める必要はありません。普通に1mV-300V、帯域も10Hz-500Khz程度で十分でこれ以上の性能のものが必要になるケースはあまりありません。

 キクスイの164D、164E、1633A、1653A等の出品がよく見かけられ、これらは古くても性能は安定し、調整箇所が少なく、価格も高くて6000円くらいまでのようです。キクスイ以外でも性能は似たりよったりです。トラブルはレンジスウィッチの接触不良がよく見かけます。それ以外はあまりありません。 


交流電圧計(選択型)

 平坦型では高感度レンジになるにノイズも拾ってしまいましたが、選択型は限定的なバンド幅で測定するので相当高感度に出来ます。構成はスーパーヘテロダインの受信機と同じです。早い話がこれにディスプレーを付けたのがスペアナというワケです。測定電圧も1マイクロVくらいは何でもありません。ただ、構成上上限周波数が高い場合は下限周波数が高くなります。選択電圧計、選択レヴェル計、セレモ、ウェーブアナライザー等がこれに当たりますが、気持ちとしてはディスプレーが付いていたほうが良いのであまり人気はありません。国内では電電公社のファミリー企業、アンリツやアンドウが作りました。

差動電圧計

 機器自身の中に電圧源を持ち、被測定電圧と比較して分圧比を出し、結果的に被測定電圧を示すものでHPやフルークが製造しました。

DCミリバル/高感度直流電圧電流計

 直流電圧を電子的に切り刻んで交流に替え、交流電圧増幅器とするものです。チョッパー型と呼ばれます。併せて微小電流を測定出来るのが普通です。抵抗も測れてエレクトロメーターと呼ばれることが有ります。

高周波電圧計

 高周波電圧を一旦整流したあと、チョッパーで切り刻んで交流に替え、交流電圧増幅器とするものです。有名なHPの410CのAC電圧測定部がこれです。








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測定器解説:スペアナ

2012年04月01日 | 測定器の種類別解説


スペクトラムアナライザー(以後スペアナという)

 初心者には敷居の高い測定器です。内容はスーパーヘテロダイン受信機と非常に構成が似ていて、内部に局発が有り、入って来る周波数と混合して、という毎度おなじみのスーパーラジオと似た構成です。言って見れば受信する周波数を連続的に変える(掃引する)ラジオのようなものです。また、低周波スペアナは受信する周波数と同期して変化する発振器(トラッキングジェネレーターと言い、以後TRGと記す)が付属するのが普通なので、これにより増幅器の入出力特性が分るというスグレモノになります。これを使いこなせるようになる為には広範囲の知識が要りますが、習得すると、大変なメリットが有ります。おまけに、オーディオ用のスペアナは使いこなせる段階まで来る人は少ないために、非常に価格が安く、オシロ、発振器2種(広帯域型と、低歪型)、電圧計、ブリッジ、歪率計と揃え終わったら是非検討すべきです。使い慣れると、オシロと同じくらい使用頻度が増える機器です。

 
FFT

 スペアナは前述のように大変便利な測定器ですが、周波数が低くなるほど測定時間が長くなるという欠点がありました。例えば1Hzのバンド幅を持つヒューレットパッカード社の3580Aはそのバンド幅で測定すると掃引に大変な時間が掛かるのです。そこで、周波数分析をディジタル的に処理するフーリエ分析器は従来型スペアナなら長時間掛かる測定をごく短時間で終えてしまう何とも有りがたい機器です。ただ、上限周波数に限界が有り、結局、100KhzまではFFTで、それ以上はスペアナでとなる場合が多いです。

べらぼうに安く出品される重量級低周波スペアナ

 低周波スペアナはハムには人気がさほど無く、オーディオをやる人はスペアナを使いこなせるレヴェルまで来る人が少ないという事情からひどく安くなる傾向が有ります。勿論問題は有って、本格的な機器はかなりの重量になるというネックは有るのですが、場所に余裕の有る人は検討したらどうでしょうか。

HPの3585A、アンリツのMS420シリーズ、タケダのTR4171などがそういう機械です。   

 




スペアナについて

 ラジオ技術社の スペアナのすべて は名著であろうと思いますが(入手は殆ど困難)、そのなかに、この測定器がこれほど人気が出るとは誰も予測しなかった という意味の記述が出てきます。ここで私の事を言えば、スペアナというのは、ファンダメンタルとハーモニックスをCRTの管面に表示するのが主な測定器の筈だが、それが見えたからといって、何なの? という受け取り方でした。ただ、経験豊富なOM達はまず例外なく所有し、その人たちの間では スペアナも持っていないんじゃぁ、、、、といった雰囲気が有ったのも事実です。かくてはならじと私も持つようになったのですが、その有用性(とりわけトラッキングジェネレーターがついたもの)は入手前の予想をはるかに上回るものでした。随分前から、測定器は買う前の検討時間の長さと買った後の満足感の間には何の関係も無い、 ということに気づいておりましたが、それはスペアナの場合にも成り立つ経験法則でありました。

 こうした経験を何度も積むと、買う前によくよく(くよくよ?)考えたり、持ち主に細かく聞いたりということはやらなくなるものであります。で、私の場合も買う前の検討を省略し、まず入手してみるというふうになったのですが、そうなると私宛に売りたい相手が次々に現れるようになり、所有欲と、資金力の狭間で苦慮するようになりました。ただ、幸いにも当今はオークションがあり、要らないものの処分が以前とは比較にならないほど容易になりました。現実にも買ってばかりでは資金と空間の両面で行き詰るので、まず、検討はそこそこで切り上げ買ってみる、要らなくなったらオークションで売れば良い、とまぁ、軽忽とも言えるほど気軽に考えれば良いのです。そうでなければレヴェルアップは不可能です。これまで多くの人との出逢いがありましたが、慎重に検討 というタイプの人は向上はまず困難というのが実感であります。









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測定器解説、さまざまな測定器

2012年04月01日 | 測定器の種類別解説


チューブチェッカー

 大別するとTV7Dのようなタイプ即ち専用のマニュアルによって独自の測定法に拠るもの、言うなれば簡便型と普通の真空管マニュアルによって各電極に電圧を印加するタイプがある。後者のほうが所望の動作状態に近づけられるので便利だが大型になりやすい。TV7タイプはいろいろな人によってその短所も指摘されたが、何と言っても小型軽量なので使いやすいという点では最右翼か?

位相計

 低周波用はシバソク、アンドウ、メグロ、WILTRON等から出ました。近頃のオシロではカーソルによって位相の測れるものが有りますが、専用の測定器はそれはそれで便利です。

ロックインアンプ

 メーカーの極端に少ない分野です。米国ではPAR、国内ではNFだけです。


定電流電源



高周波電流計



自動電圧安定器



工業用電力増幅器





以後書き足し予定有り
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測定器関連書籍

2012年03月03日 | 測定器の種類別解説


測定器関連書籍

 オーディオ測定の本は少なくなってしまった。アンプ製作の単行本でも測定について触れてるものは少ない。時勢なので嘆いても仕方が無い。
 こういう本の品揃えが一番豊富なのは、神田神保町の明倫館だ。古い古い本が意外に高価だが、結構競争相手がいるので、買わないで帰ると次に行ったときはまず無くなっている。店頭で長く読んでもいられないので、取りあえずは買って帰る。気に入らなかったときオークションで売ろうとするとかなり安くなるが、そこらへんは貯め込むよりはマシと考える。 
 以下の本の大部分が入手困難だが、出品されたら入札を推奨する。下記以外にも読んでいるが格別の記憶は無い。

 それぞれの著に関する記述は至って簡略だが、本というのは読む人の、知識、興味の方面、問題意識等によって益する度合いが全く違うので、名著と言われてるものでも、人によっては平凡な本と受け取られる場合が多いからだ。とにかくいろいろ読んでみて、詰まらないと思ったら売却を考えるのが良い。

オーディオ用測定器と測定技術 加銅鉄平著 誠文堂新光社
 読んでないので書評を書く立場にないが、類書が少ないので取り上げざるを得ない。現在、測定について書かれたごく僅かな本の中の一冊。測定の重要性を語る人も今では加銅氏だけか!

テスターからはじめるオーディオアンプ測定法 加銅鉄平著 誠文堂新光社
 同上。


オーディオ用測定器 中林忠志著 誠文堂新光社
 真空管による自作測定器の本、作る気が無くても参考になる。一冊目をボロボロにし、二冊目を買った。かなりの好著。


オシロスコープの設計と取り扱い 藤巻安次著 誠文堂新光社
 真空管オシロの測定技術の本。かなりの好著。


シンクロスコープ入門 藤巻安次著 誠文堂新光社
 真空管オシロの解説本。好著。


オーディオ回路とその測定 島田公明著 日本放送出版協会
 位相に関する記述が長大で数学や物理が嫌いな人には向かない。以前この本を薦めた相手から退屈で良い本ではないとこきおろされた。でも良い本だ。まぁまぁ手に入る。


オーディオ測定調整マニュアル 山川正光著 オーム社
 平易な好著だが入手困難。


スペクトラムアナライザーの全て 上村銑十郎著 ラジオ技術社
 入手は困難。名著。


波形観測 ソニー・テクトロニクス編 ラジオ技術社
 テクトロニクスの技術者が書いた本。たまにヤフオクに出る。名著。


パワーアンプの設計と製作 武末数馬著 ラジオ技術社
 第19章 試験及び特性測定 アンプ製作の本で測定に触れたものは少ないが、こういう本としては珍しく詳しい記載が有る。入手はかなりの出費を覚悟しなければならない。すこぶる付きの名著。
アンプの本はこれと浅野氏の本が双璧と思う。浅野氏が60歳代で亡くなられたのは残念でならない。




書き足し予定有り
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