オークションは少数の恒常的大量出品者と圧倒的多数の出品を殆どやらない入札者とで成り立っている。
数ある出品者の中にはオークションで儲けようとする人も少なくない。
そういう人が大勢いてくれないとマーケットは成り立たないのでそれ自体は歓迎したい。
オークションを仕事として始めて間もない人が或る日こんなことを言ってきた。
「落札者が受け取ってから 良いものを安く買えて喜んでいます という声を聞くと嬉しいよね」
?????
そう思うのは分かる。だがその考え方で出品し続けられるのか?となると必ずしもそうではない。
この辺りは論理的に考えれば良い。買い手が良いものを安く買える、ということは多くの場合、売り手が利益を削って売るということに他ならない。例外もあるがだいたいがそうだ。
この人は出品すると全量落札された。
それは結構なのだが、そうなると仕入れなければならない。仕入れたものはどこかが傷んでいたり、故障しているので彼の知識と技術で治す。
それでまたもや「良心的な価格で」出品する。
知識と技術を安売りしているのだ。
こうなると彼の店は品物が無いのが普通になる。
「出さなきゃ、出さなきゃ」
彼は精神的に追い込まれる状態になる。
やや気になったので以前は何をしていたかを聞いたら製造業にいたという。製造業の世界にいて営業に関わらなかった人はこうなりやすい。良いものを作るということしか頭にない。
それだけでは不足なのだ。事業は継続するためには利益が必要だ。だれでも分かる理屈だが、製品の製造に没頭してしまう。
多くの継続できている出品者はすぐには売れそうもない価格で大量出品している。たった独りで1000個も出す人もいる。
全く売れない場合は手間が掛かるだけだから頃合いを見て値下げすれば良い。
そのようにやったほうがいいですよ、と一回だけ勧めた。私は一回しか言わない。そうでないと「しつこい」「余計なお世話」となる。
人とは「自分には自分のやり方がある」と頑なに頑なに考えるイキモノなのだ。
半年後には彼はオークションを辞めた。良いものを安くというだけでは、甘い考えでは続かないのがオークションなのだ。
確かに商売で出品をつづけるなら、商品の継続的仕入れのルートの確立が必要ですね。それと割り切った考え。私は入札もしますが、自作のアンプを年に2~3台程度出品しています。幸い全て落札されて、故障で帰ってきたこともないのです。落札で嫌な思いもしますが、クレームにしません。その程度の金額でもめることが嫌だからです。