月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

144.摂州住吉から播州北条住吉へ1(月刊「祭」2019.7月25号)

2019-07-28 21:43:29 | 民俗・信仰・文化-伝承・信仰-

●播州北条住吉神社の祭
播州北条住吉神社の祭は黒い反り屋根屋台、四月(旧暦三月三日)の祭、東西に分かれた龍王舞、鶏合わせ、神輿の巡行などがあげられます。屋台は別としてこれらの儀式はなぜ北条住吉神社で行われるようになったのでしょうか。

●住吉名勝図会から分かること
「北条住吉神社の祭ってなんでこんな特殊なことするんやろか?」と疑問を持ちながらも管理人は住吉の本社、住吉大社(住吉社)の祭を調べることはありませんでした。今回はたまたま見た寛政六年(1794)の「住吉名勝図会」から北条住吉神社の節句祭の元をたどります。






●三月三日 辰剋神供備進
・闘雞
絵には「闘雞」と書いて、「とりあわせ」とルビを振っています。この「とりあわせ」が北条にも伝わってきたものと思われます。本文を見ると、
「闘雞十番所司これを奉行す 雞ハ氏人よりこれを出す 闘雞終て勝負の舞あり」
とあり、闘雞と書いて、勝負の舞があるだけに、摂津住吉社のとりあわせは、雞同士が闘うものであったようです。

北条には読んだままの儀式として伝わってきました。

・陵王納曽利の舞と龍王舞(参考 東儀信太郎「神楽事典」(音楽之友社)平成元年)
その「勝負の舞」の曲目は、「陵王納曽利」でした。陵王は「左方」の曲で、納曽利はそれにたいする答舞で「右方」の曲です。陵王は眉目秀麗な王がその顔で敵に舐められないように、龍頭がついた面を被ったという伝説を、納曽利は雌雄の龍を表した舞だそうです。
陵王納曽利が共に龍を表すこと、左(東)方右(西)方に分かれることは、北条の龍王舞が東郷と西郷に分かれることに通じます。また、納曽利に関しては、それだけで二匹の龍ともいえ、龍王舞に二人(神なら柱?)の龍王がいる北条に通じているとも言えます。


143. 文身(入墨)(月刊「祭」2019.7月24号)

2019-07-28 14:09:36 | 民俗・信仰・文化-伝承・信仰-
●風紀?? ブラック校則の成れの果て?
管理人の小さい頃は祭といえば、入墨の見えたおにいさんやおっちゃんを目にすることがよくありました。ですが、昨今ではサポーターなどを巻いて隠すことが多くなりました。
神戸の須磨海岸などでは、タトゥー禁止となっています。
しかし、当たり前ですが、悪いのはお金をだまし取ったり、脅し取ったり、暴力を振るったりすることであり、入墨を入れることは悪いことではありません。とはいうものの、猛暑のオリンピックが近づく中でわ安易なタトゥー禁止をすると、海外のお客さんが困るということで、少しずつ規制は緩和されているそうです。
ブラック校則と夏スーツ強制問題と女性パンプス強制問題とタトゥー禁止問題の根は同じような気がします。若い人や中心にいない人が自己表現をしたり、合理的に振る舞うのを気にくわない人ほど、無駄な強制を望むように思えます。

少し話はそれましたが、日本の入墨文化を少し見ていくことにします。

●魏志倭人伝 (後漢書東夷伝倭人条)参考サイト
魏志倭人伝には倭の狗奴国の男子は入墨をしていたことが書かれています。
男子無大小 皆黥面文身 -中略- 斷髪文身 以避蛟龍之害 今 倭水人好沉没捕魚蛤 文身亦以厭大魚水禽 後稍以為飾 諸國文身各異 或左或右 或大或小 
訳はおおよそ下のような文となります。
「男子は長幼の区別なく顔と体に入墨をしている。-中略- 断髪と文身(入墨)をもって蛟龍の害を避ける。今倭人はよく水に潜って魚や貝をとるが、文身(入墨)は大魚水の生き物をはらうことができる。後に装飾となり地域によって左右、大小それぞれ異なる」
入墨をしていたのは男子で、水に潜って貝や魚をとる人だったようです。つまり、海人(あま)だったと思われます。そして、それは蛟や龍の害を避け、大魚や水禽を払うためのまじないであったようです。
少し前までの海女さんも、魔除け入墨をしていたというのをヤフコメでみました。また、セーマンドーマンの印を縫い付けた衣装を身につけるそうですが、これも元々は入墨だったかもしれません。

●海女の玉取りや水引きに残る倭人の風習

播州や淡路の屋台やだんじりの水引幕で海女の玉取りの図柄は好まれています。
海女の玉取りは、おおよそ下のような話になります。
竜宮の玉を藤原不比等と一夜の契りを交わした海女に取りに行かせる。そのかわりに、海女さんとの子を藤原氏の長者にすることを約束した。首尾よく玉をとったものの龍にきづかれ、海女は追われる。しかし、自らの腹を裂きそこに玉を隠して持ち帰り、海女は息絶える。その子はやがて藤原房前となり氏の長者となった
龍から逃げる海女は、魏志倭人伝の風習に通ずるものがあります。そして、水引幕の乳の部分にはセーマンドーマンの柄など魔除けの模様が好んで付けられます。龍や水の生き物避けの入墨は、龍から逃げる海女の水引と、乳の紋に引き継がれていると言えるでしょう。

↑加東市八阪神社東古瀬屋台水引幕(八岐大蛇退治)乳の五芒星(セーマン)

↑三木市大宮八幡宮明石町屋台水引幕(海女の玉取り)乳の九字(ドーマン)

●伝統を守るという視点から
伝統を守るという視点からだと、入墨について考えます。教育基本法に伝統とやらが書かれた昨今においては、男子はむしろ入墨を入れることで魏志倭人伝の時からの守れるということになってしまいます。少なくともけしからんものとして、排除するようなものではないことがわかります。健康を損なわないかぎり、また、無理やりでないかぎりは、入墨は排除すべきでも、風紀とやらで好ましくないものとは決して言えません。

しかし、管理人は痛そうなので入れるのは嫌です?あと、入墨にはなんらかの病気のリスクがあるとも聞いたことがありますが、真偽は分かりません。